王様へ報告しよう
今回はちょっと短いです。
俺はオスプレイに乗って移動し、マルドー辺境伯軍に合流した。
到着した現場では、カトリ教国軍が壊滅状態に陥っており、もはや継戦能力は無いであろうことが一目で分かる。
多少は生き残りもいるが、無傷の者は皆無で、いずれは息絶える。
敵とはいえ、見殺しにするのは気持ちのいいものではないが、生かすかどうかを決めるのは、実際に追い詰められていた辺境伯軍の者達だ。
情報を引き出す為に、多少は捕虜をとるかもしれないが、全員を救わなければならない理由も、余裕も無い。
辺境伯軍も酷く疲弊しているからだ。
「再度の助太刀、衷心より感謝申し上げる」
辺境伯は俺の顔を見るなり、深々と頭を下げる。
俺に助けられるのは2度目だから、恐縮しているなぁ。
その気持ちも分かるから、安易に頭を上げてとも言えない。
それよりも──、
「いえ……私の武装が模倣された結果、大変な被害を生じさせてしまったようで……。
申し訳ありません」
謝罪はするが、俺は頭を下げない。
公爵が侯爵相当の地位を持つ辺境伯に頭を下げると、いらぬ問題を生じさせかねないからな。
俺が良くても、他の貴族が階級社会を蔑ろにしたと騒ぎかねない。
だが、責任は感じているので、やれることはやらせてもらう。
「怪我人を中心に、領都まで空を飛んで運ぼうと思うのですが、いかがでしょうか?」
「おお……それはありがたい」
そんな訳で、輸送用ヘリに怪我人を乗せて、この場と領都の間をピストン輸送だ。
数千人もいる領軍全員を運ぶのは無理なので、特に危険な状態の者達だけを運ぶ。
そして領都で食料や薬を用意してもらい、残った兵達に届けることにしよう。
これで急場は凌げる。
その後、砦に戻って防衛陣地を再建するか、それとも全員を陸路で領都まで引き上げさせるのか……は、辺境伯の判断に任せる。
それよりも……一段落してからまずやらなければならないのは、この事態を国王に報告し、今後の国としての対応をどうするのか──それを決めることだ。
「これから王都へ向かおうと思いますが、辺境伯はどうなさいますか?」
「ああ、俺も同行させてもらおう」
うん、当事者がいた方が説明は楽になるからありがたい。
で、王都まではオスプレイですぐだし、ミーティアを介して王城にヘリポートを作らせておいたので直接乗り込む。
「エルネスタ!
……辺境伯を伴ってとは、何かあったのか?」
到着すると、ミーティアと静代さんが出迎えてくれた。
ヘリは俺しか使わないから、俺が迎えに来たと思ったのだろう。
が、辺境伯領の砦を教国軍が突破したという事実は、彼女達もまだ把握していなかったようで、辺境伯の顔を見て驚いていた。
辺境伯も早馬を出しているらしいが、さすがに馬ではヘリのスピードには勝てないから、追い越してしまったようだ。
「国境の砦が陥落しました。
今後の対応について相談したいので、国王陛下に謁見を……!」
「なんだと!?
分った、そのように取り計らおう」
王様に会うのは久しぶりだなぁ。
一応義父なのに、なんか避けられているんだよなぁ……。
まあ、近くに王座を脅かしかねない武力を持つ者がいるのは、恐ろしいのかもしれないが……。
だが、今回ばかりは、しっかりと話を聞いてもらうぞ。
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