地の神
アングリーが地面の中に潜ってしまった。
地神とやらの能力なのだろう。
……って、なんだそれ?
カトリ教国の神か?
教国って一神教のイメージがあったし、実際に公式ではそうだと聞いている。
しかし前にギリリココという聖人が召喚したのは死神とかいったらしいので、神が複数いるらしいな。
主神に従属する天使みたいな存在だから、一神教的にもセーフって感じなのだろうか?
それはさておき、地面に潜ってしまった相手に対しては、俺の攻撃はよっぽど強力な物じゃないと届かない。
そもそもどこにいるのか、分からないだよなぁ。
まあ、相手が攻撃してくれれば、ある程度の位置は特定できるかもしれないが、地中のどの深さにいるのかまでは分からないだろうね……。
「来たっ!!」
俺の足元から、地面が槍のように伸びて襲い掛かってくる。
だが、当たらない。
義足で強化されている俺の身体能力と、反応速度──そしてそれらと連動して動く鎧の性能を舐めるなよ!
だが、攻撃は連続して続く。
地中で視界が利かないはずなのに、俺の位置をどうやって特定しているんだ?
いや、振動か。
俺の鎧が出す駆動音を聞きつけて、位置を特定しているな?
それならば──と、俺は空中に飛び上がる。
じっとして動かないという手もあるが、俺の心音まで察知されていたとしたら無駄だし、こちらから攻撃もできないので、なんの解決にもならないからな。
まあ、少々ジェット音がうるさいが、これだけ大きな音だと、逆に場所を特定しにくいだろう。
そんな予想通り、俺を追うように巨大な岩の腕が地面から生え、さ迷うように動き回った。
その腕の中に、アングリーは潜んでいるのかな?
あるいは別の場所か?
それは、すぐに分かることだ。
岩なら、俺にとっての材料だからな。
そう、「変換」してしまえばいい。
そうすれば岩の腕は消える。
中にアングリーがいれば、剥き出しになるだろうが……いないな。
奴はまだ地中か。
ならば「変換」で上空に作り出した大型貫通爆弾を落とす。
その数10発。
今「変換」した岩の腕と、巨獣や巨人の死骸も材料に使い、今用意できる限界の数をそろえた。
これを広範囲にばらまくように落とせば、地中にいるアングリーもどれかの爆発には巻き込まれ、さすがにダメージを受けるだろう。
連続して生じる大爆発──。
地面には大きな穴が空いている。
だが、そこから先の動きが無い。
アングリーは死んだか、それとも地中からそのまま逃げたか?
逃げられるのはまずいな……。
あいつの能力なら、地中からあらゆる都市に侵入できる。
そしてそこで地震でも起こされたら、何万人もの犠牲者がでかねない。
だから、逃げられるのは本当にまずい。
──いや、逃げてはいない。
地面が盛り上がり、それは巨大な岩の巨人となる。
巨人の巨大な手がこちらに伸びてきたが、それは「変換」の材料にしかならないぞ。
「いっ!?」
しかし巨人が「変換」で消える直前、アングリーが中から姿を現し、巨人の体表を蹴って、こちらへと一直線に跳んでくる。
その巨人は、空中にいる俺へと近付く為の、足場だったのか。
そしてアングリーは全身をハリネズミのような岩のトゲで覆い、俺へと高速で突っ込んでくる。
さすがにあのトゲは、一瞬で「変換」する暇は無いな。
そもそもトゲだけを消しても、アングリー自身は消えないし。
どのみちタイミング的に、この攻撃の回避は難しい。
ここは真正面から、叩き落す……のは、地面にまた潜られたら困るから、正面から受け止める……!!
「ふんっ!!」
俺は鎧の装甲を厚く変化させる。
結果として鎧は、身長3mから5mほどにまで巨大化した。
これならば突っ込んでくるアングリーを、右手1本で受け止められる。
だが、無傷でとはいかない。
「この程度で、止まるかよぉ!!」
アングリーが纏った岩のトゲが、鎧の腕を破壊しながら伸びてくる。
ついには鎧の胴体にも突き刺さるが、俺の本体には……脇腹をちょっと抉っているが、まあすぐに治る。
むしろアングリーは、これで身動きがとれなくなった。
ここで「変換」!
「なっ、なんだぁ!?」
アングリーが纏っていた岩のトゲを、プラスチック爆薬へと変えた。
粘土状に変形するから、身体にこびりついたそれは簡単に振り払うことはできないだろう。
「あなたは絶対にここで倒します!」
俺は無事な鎧の左腕を変形させ、そこから砲弾を──ただし着弾しても爆発しないタイプの弾をアングリーへと撃ち込む。
「ガァァァァァァァァァァっ!?」
砲弾はアングリーの腹へと直撃した。
普通の人間なら貫通するところだが、さすがの防御力というか、そうはならない。
ただ、砲弾の勢いまでは殺しきれず、そのまま砲弾ごと遠くへと吹き飛んでいく。
そして十分に距離が離れたところで──、
「起爆!」
アングリーの全身を包むプラスチック爆薬を、俺は遠隔操作で爆発させる。
プラスチック爆薬の量は1t近くはあったはずだから、小型核に迫る爆発になるはずだ。
事実その爆発はすさまじく、離れていた俺でさえも爆風で吹き飛ばされた。
それだけにこの爆発の中心にいたアングリーは、さすがに倒せていると思うが……。
なにやら私の昔の作品が、アクセスランキングに入っているらしく、ありがたい話です。勿論、本作もランクインしたことがあります。読んでくれた人に感謝。