巨獣?とのバトル
投下した大型貫通爆弾は巨獣の背中へと突き刺さり、大爆発を引き起こした。
爆発は地面にまで突き抜けて、その胴体を真っ二つにしている。
そんな爆発に巨獣の背後にいた教国軍が巻き込まれたようだが、まあそれはこちらが配慮することではないな。
いや、魔族側の被害が少なければ、配慮してもよかったのだが、蹂躙された村々などを見てきた後だと、ちょっと許容範囲を超えちゃったかなぁ……って。
結局、他国に侵略しにきた者達が、反撃を受けて被害を被ったという、当たり前のことが起こった──ただそれだけだ。
そもそも他者を攻撃しておいて、自分達だけ無事で済むと思うのは、考えが甘すぎるんだよ。
だから俺も、反撃があった場合のことは、考えている。
「──!
クロムスタさん、来ました!!」
「了解」
巨獣は真っ二つになっても、まだ死んでいない。
上半身はいまだに動き回り、しかもその巨大な角が発光し始めた。
これが昔見た映画なら、撃ち出された光線によって、ステルス戦略爆撃機がぶった切られるところだな。
だからこそ俺は、こういう事態に備えてクロムスタと事前に打ち合わせをしていた。
その手筈通り、俺の合図によってクロムスタの転移魔法が発動し、ステルス戦略爆撃機ごと転移して撃ち出された光線を回避する。
とはいえ、光線を何発も撃ち込まれたら、回避しきれなくなるだろう。
転移魔法もそんなに連続して使えるようなものじゃないようだし、そもそもこの機体は標的としては大きすぎる。
そんな訳で──、
「緊急脱出!!」
俺達は脱出装置によって、座席ごと空中へと射出された。
その瞬間、ステルス戦略爆撃機は俺の「空間収納」へと仕舞い込む。
これで巨獣は標的を見失うだろう。
ただ、パラシュートを開いて悠長に降下していたら、再び標的になる。
なのでクロムスタの転移魔法で、地上まで運んでもらった。
そして俺は右腕の義手を起動させ、白銀の鎧を纏う。
俺の全力をもって、巨獣へと追撃することにしよう。
……って、大型貫通爆弾で倒しきれていれば、楽だったんだけどなぁ……。
「ミサイル、発射!!」
俺の鎧はナノマシンと「変換」によって、自由に装備を変更することができる。
その能力で両腕にミサイルポッドを形成して、20発ほどを巨獣へと撃ち込んだ。
連続して発生する爆発の中、巨獣は悲鳴を上げてもだえ苦しむ。
効果はあるようだし、もうちょっと撃ち込んでおけば、倒せるだろうか。
そう思っていたその時──、
「エルネスタ様、角がっ!!」
「なっ!?」
クロムスタの声で視線を巨獣の角へと向けると、100m近いそれが縦に割れ始めた。
そしてその中から、何か人型のものが現れる。
それは人間の全身から皮をはぎ取って、筋肉がむき出しになっているかのような姿だった。
ただ、人間には有り得ない額の角や、大きな牙もある。
鬼にイメージは近い……か?
だけど身長は、50mを優に超えている。
まさに巨人……って、そっちが本体なの!?
というか、教国ってなんなんだ……?
こんな神の使途のイメージとはかけ離れた化け物ばかり送り込んできて、奴らが信仰している神は本当に神聖な存在なのか?
いよいよ邪神味が増してきたんですが。
「ガアァァァァァァ!!」
「……っ!!」
巨獣改め、巨人は咆哮を上げる。
それに伴い、何か嫌な感じで周囲が満たされた。
これは膨大な魔力……!!
なんかヤバイ……っ!!。
「クロムスタさんは、転移でこの場から離れて!」
「はっ!」
クロムスタが消えた瞬間、地面が変形して、針山のように無数の刺がそそり立つ。
刺とはいっても、太さ2m以上、長さは10m以上あった。
それが半径で1km近い範囲まで広がり、生き残っていた教国軍も巻き込む。
見境なしかよ!!
俺は倒れていた巨獣の残骸の上に逃れたから無傷だが、教国軍は駄目だろうな……。
って、巨人の視線がこちらを向いている。
巨人からすれば小さな俺を、敵として認識しているのか!?
うお、角が光っている。
またビームを撃つつもりか!
「させませんよ!!」
俺は巨人の足元へと駆け寄る。
直接攻撃が届く距離まで近づいたら、右腕の装甲を巨大なドリルへと変形させ、激しく回転させたそれを巨人のくるぶしへと突き入れた。
「ギィィィィィ!?」
これによって巨人の片足は使い物にならなくなり、バランスを崩して倒れ込む。
それも自らが生み出した無数の針の上に……だ。
おお……見事に突き刺さっている。
防御力は大したことがないようだな。
これならとどめを刺すのは、それほど難しくない……と思っていたのだが──、
「また割れる!?」
巨人の頭部が縦に割れ、中から何かが出てこようとしていた。
マトリョーシカかよ!?
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