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魔族領へ

 これから魔族領を襲撃したという、巨大な魔獣を倒しに行く。

 ただ、国内にカトリ教国の工作員が入り込んでいる可能性もあり、そのことへの対処も必要だ。

 少なくとも王都の国王へ、一報を入れる必要はあるだろう。


「そういうことなら、私が行こう」


 と、ミーティアが手を挙げた。

 元王女だから、国王と会うのなら適任か。

 というか基本的に国との話し合いは、全て彼女に任せているし。

 なお、それ以外の時は、ぐうたらと遊び惚けいることが多い。

 王女という堅苦しい立場から解放されたことへの、反動なのだろうな……。


 しかしどうやって王都へ運ぶかな。

 一応ミーティアにも自動車の運転は教えているのだが、車では時間がかかる。

 ヘリは操縦できる者を領内で育成しているけど、万が一の事故が怖い。


 ……そういえば、クロムスタが転移魔法を使えたな。


「ここから転移魔法で彼女を、王都まで送れますか?」


「遠いのでちょっと難しいですね」


「では、魔族領に向かう途中で王都の近くを通りますので、空中から……というのは?」


「それなら可能ですね」


 じゃあそうしよう。

 王都には一応ヘリポートは作らせたのだが、滑走路は無いから、これから使うステルス戦略爆撃機では着陸できないからな。

 転移魔法無しでは、パラシュートを装着させて空中に放り出すくらいしか、降ろしようがない。


 で、そのステルス戦略爆撃機は、サイズや重量的に、原子力空母の短い滑走路から飛び立つことは難しかった。

 まあ、未来技術を加えて、カタパルトから射出するという手もあるが、この差し迫った状況で実証実験もせずに試すつもりは無い。

 失敗したら、海へドボンだし。


 ちょっと面倒臭いが、陸地の方に戻って、迎賓館の隣に作った滑走路を使おう。

 って、こういう時こそ、クロムスタの転移魔法を活用すべきだな。


「あ、そうだ。

 今度クロムスタさんの転移魔法を、私の妹達に教えてあげてください。

 それが報酬の1つということで」


 転移魔法の利便性は魅力だからな。

 難しい術ではあるようだが、クレアとアリサなら習得は可能だろう。


「それは構いませんが……。

 他の報酬を要求してもいいですからね?」


 ともあれ、滑走路へ転移した俺は、ステルス戦略爆撃機を「変換」で作りだす。

 ブーメランみたいな形状の機体をした、例のあれだ。

 そして出発の準備をしていると──、


「旦那様!」


 嫁の1人であるセリエルが、迎賓館から出てきた。

 彼女は俺と婚姻関係を結んで以来、俺のことを「お姉様」から「旦那様」へと呼び方を改めた。

 まあ今の俺を、「旦那」と呼ぶのが適切なのかは分からないが、妻である彼女としては、他に名前か愛称くらいでしか呼びようが無いのも事実だ。


 いや、別に名前か愛称でも良かったのだが、セリエル的には、俺に付き従う貞淑な妻の立ち位置がお望みらしく、そういうことになった。

 結果的に俺としても、一番嫁っぽいな……と感じているのは、セリエルだったりする。

 勿論、序列の1位はアンシーなのだが、彼女と俺の関係は、主従でもあるからな。


 ちなみにアリサは年下の幼馴染で、ミーティアはなんか同居している同僚のお姉さんという感覚に近い。

 まあ、キスとか、していることはしているが。


 そんな訳で、対外的には嫁達の中で最も、公爵夫人として活動していることが多いセリエルであった。


「どうかお気をつけて……」


 クロムスタから事情を聞いているらしく、何も言わずに送り出してくれるセリエル。

 連れていけ──とは言わない。

 ステルス戦略爆撃機の加速度に耐えられないのは、本人も自覚しているようだ。

 とにかく乗り物全般が駄目だからなぁ……。


「ここも何があるか分かりません。

 後のことは頼みましたよ」


 と、俺はセリエルにキスをする。

 最大戦力のアンシーを残していくとは言え、いざという時の住民の避難などの現場指揮官として頼れるのは、セリエルだからな。

 空母にいるクレアだと、どうしても指示が遅れるんだよな……。

 一応無線機はあるんだけど、俺の能力では空母や自動車など、乗り物の付属物としてしか作れないから、建物の中ではあまり使えない。


 だから迎賓館とか拠点からの指示は難しく、現場の指揮官の判断が重要になる。


「ええ、どうぞお任せを、旦那様!」


 よし、準備も整ったし、行くか。

 で、ステルス戦略爆撃機の乗員は2名なので、俺とクロムスタで枠は埋まってしまう。

 だが、仮眠スペースなどの簡易的な生活スペースもあるので、ミーティアが乗っても問題は無いだろう。


 お? 黒猫型獣人の静代さんも来た。

 見送りしてくれるの?

 え? 乗りたい?


「では、ミーティアの護衛を頼みたいので、王都までは一緒に行きましょうか?」


「うん!」


 そんな訳で、4人での出発ということになった。

 ……って静代さん?

 俺の膝に座るのはやめようか?

 左の義手でステルス戦略爆撃機のシステムに接続して操縦するから、操縦の邪魔というほどではないけど、さすがに狭いからさ。


「それでは発進!!」


 こうして俺達が乗ったテルス戦略爆撃機は、亜音速で魔族領へと向けて飛び立ったのだった。

 腰を痛めちまった……。

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