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休みは無い

 戦いは終わった。


 アルク達に話を聞くと、俺とアンシーが封じられている間に、カトリ教国の聖人とかいうヤバイ奴と戦っていたらしい。

 そいつはなんとか撃破することができたのだから大金星だが、その後にあの巨人が現れたのだとか。


 本来なら人間には対抗することができないような強敵だったようだが、非生物ならなんでも「変換」することができる俺の敵ではなかったね。

 骨の集合体とか、俺にとっては大量の資材みたいなものだし。


 ……が、敵を倒したとしても、まだ後片付けは残っている。

 村には倒したゾンビ達の身体(からだ)も、まだ残っているし……。


 それらは俺の「変換」で、すぐに片付けることはできる。

 そして無人の村だけが残る。

 だが、それでいいのだろうか?


 放っておけば、野盗や魔物などが勝手に住み着くかもしれないし、だからと言ってこんな参事が起こった場所では、移住者を(つの)って復興という話にもならない。

 無くしてしまった方がいいのは、確かだろうな。


 だけどそれは、この村の人間が決めることだ。


「アルクさん、リーリアさん。

 村の方はどうしますか?

 私ならば、全てを消すこともできますが……。

 このまま墓標の代わりとして、残すのかどうか、村の出身者である2人で決めてください」


「……」


 2人はしばし無言で……それでいて話し合うかのように、視線を交わしていた。

 そして──、


「アルク……任せるわ」


 リーリアはアルクに判断を任せた。

 初めて会った頃から、アルクの意見に合わせる傾向にあったよね、君。

 まあ、それが良いとも悪いとも言わないが。

 この国の女性は、男性を立てる傾向にあるからな。


 女だてらに公爵をやったり戦場に立ったりと、男そっちのけで活躍している俺が異端なのだ。

 いや、女じゃないな。

 俺の中身は男、男のはずだ……。


 で、アルクはどうする。


「本音を言えば村を残したいけど、俺達では管理できないし、このまま荒れさせるのも忍びない。

 ならばいっそ、全部片づけてしまった方がいいのかもしれない」


「そうですか。

 ではそのように……」


 俺は「変換」で村の人工物とゾンビとなった者達の遺体を、長さ5m程もある大きな剣へと変えて、それを村があった場所の中心に突き立てた。

 剣身には、「カプサタ村跡地」と刻み、せめてここに村があった証明として残す。

 石材を使って作っているから、何事も無ければ半永久的に残るだろう。


 その剣を見上けた後、アルクとリーリアは剣に向かって深々と頭を下げた。

 きっと色々な想いがあるのだろう。

 俺も頭を下げておこう。


 巻き込んでゴメンナサイ。

 この落とし前は、必ず教国につけさせる……!


 ……ってことで、領に戻って、教国への対応を考えないとな……。

 それに国王へ使者を送って、国内で教国の工作員が動いているって警告しないと。

 やることが多すぎる……。




 で、領に戻ると──、


「ええぇ……!」


「いきなりで申し訳ありませんが、支援を要請します」


 俺の居城と言える空母には、魔族のクロムスタがいた。

 どうやら緊急事態が生じたようだが、遠征から帰還したばかりなのに一服する暇も無いのかよ!!


「……何事ですか?」


「教国の軍勢が、我が国の砦を突破しました。

 奴らは、いくつもの町を焼き払い、我らが魔王城に迫りつつあります」


 砦を突破した?

 俺が兵器を供与しているのに?

 殺傷能力が低い物が多いとはいえ、普通の軍勢が対抗できるようなものではないはずだが……。


 いや──、


「何か常識外れた強さの魔物が現れましたか?」


 あの白い巨人のような存在ならば、いかに魔族でも追い詰められるかもしれない。


「ええ、巨大な(けもの)が現れ、砦を打ち崩し、村々を踏み潰しました。

 あれにはさすがに魔王様でも勝てないでしょう」


「巨大な……とは、あの地竜よりもですか?」


 以前、俺がレールガンで倒した奴だ。


「ええ、あの何倍も大きい」


 ……となると、海で戦ったアカエイに匹敵する感じかな。

 あいつ、大和の主砲にも耐えたんだよなぁ……。

 それと同等の存在だとすると、大和以上の戦力を使わなければ、勝てない相手だと考えた方がいいかもしれない。


「分かりました。

 私が対処しましょう。

 その代わり、報酬ははずんでもらいますよ?」


「はい、このままでは国が亡びかねない事態なので、大抵の要求は通ると思います」


 いや、そんな逼迫(ひっふく)したしたところから搾り取るほど、俺は鬼じゃないけどね。

 出張料プラス何か……程度で済ませるわ。


「それでは準備を……」


「あ、アンシーは、ここで待機。

 何か嫌な予感がしますので。

 魔族領へは、私とクロムスタさんだけで行きます」


「……はい、分かりました。

 お気をつけて」


 出発の準備に入ろうとしたアンシーを、俺は止めた。

 カプサタ村への攻撃と同時に、魔族領にも攻撃があったということは、他の場所への攻撃もあり得ると考えた方がいい。


 当然、この領都アネストにも。

 アンシーには、いざという時に対応してもらう。


 その結果、俺はアンシーの力を借りられないから、万全の準備を整えて出発しないとな……。

 丁度あの白い巨人から作った戦闘機があるから、それを材料にして、アレ(・・)を作ろう。

 それを使えば、空路で遠く離れた魔族領まで短時間で到着できるのと同時に、大規模な攻撃もできる──。


 そう、ステルス戦略爆撃機である。

 魔獣ごときは、空爆でさっさと片づけてみせるわ!

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