尋問の時間です
俺は両手首と両足首を縛られた状態で、何処かへと運ばれた。
相変わらず頭には袋を被せられているので、何処に運ばれているのかは分からない。
ただ、かすかに感じる外の音や、肌に風の流れを感じなくなったことから、屋内に運び込まれたことだけは察することができた。
「あぐっ!?」
俺の身体は、乱暴に床へと投げだされた。
か弱い女子のボディだぞ!?
骨とかが折れたらどうしてくれる!!
それから頭に被せられていた袋を、ようやく取られた訳なのだが──。
「あ?
こいつ女か?」
やべっ!?
袋と一緒に、被っていた帽子が外れた。
その結果、中に仕舞われていた長い髪が露出してしまう。
これで俺にとっての状況は、更に不利になってしまった……。
そう、性的な扱いを受ける可能性が、爆上がりしてしまったぞ、チクショウ!!
これは一刻も早く、ここから逃げ出すことを考えなければ……。
だが、そう簡単にはいかないだろう。
周囲にはいくつもの箱が、積み重ねられていた。
どうやら倉庫のようだ。
ただ、俺は動物か何かを運ぶ為の、檻の中に入れられている。
完全に売られる感じじゃん
実際──、
「へぇ……なかなかの美形じゃないか。
売れるんじゃね、これ?」
俺を攫った男の1人が、そう言った。
やっぱり売られるんか、俺
しかし──、
「おい、それは後の話だろ」
別の男が、そんなことを言う。
つまり俺には別の使い道があると?
だけど用済みになったら、やっぱり売られる感じ?
ここは俺に売る以外の価値がある……と、アピールした方がいいかもなぁ……。
まあそれは、連中の話を聞いてからだ。
「よう、お嬢ちゃん。
聞かれたことに対して、正直に答えな」
「な、なんですか……?」
「お前が売っていた物は、何処から仕入れた?」
なるほど。
こいつらの目的は、俺が作った物を独占販売して、儲けようということか。
どうやら俺自身が作っているとは、思ってもいないようだ。
しかしそれはマズイ……。
こいつらは俺が製造者の代理で、販売していると思っている。
実際には俺が全部作っているが、それに気付いていないから、俺の価値にも気付いていない。
だから最悪の場合、あっさりと俺のことを始末しかねないのだ。
ここは俺の価値を、猛アピールしないと……
「あれらを作ったのは私です」
今は男言葉は封印しよう。
女なのに、男のように振る舞うおかしな奴と思われたら、発言の説得力まで無くなるからな……。
しかし──、
「ああん?
嘘を言うんじゃねぇぞ。
お前みたいなガキが、あんな高品質な物を作れるものか!!」
男の1人が、苛立ったように怒鳴る。
ひいっ!!
ここで信用されないと、拷問コースだぞ!?
「ほ、本当ですっ!
私には、そういうスキルがあるんです」
「……スキルか。
じゃあ、そのスキルとやらを、ここで見せてみろよ」
「その……ここではちょっと……。
鍛冶場や道具がなければ……」
「……本当だろうな?」
「ほ、本当です」
嘘です。
単なる時間稼ぎだ。
「……ちょっと待ってろ」
よし、信じた
俺の言葉通り、鍛冶場まで用意してくれるのかは分からない。
もしかしたら、上司に指示を仰ぐだけなのかもしれない。
それでも男達は、俺1人を残して、倉庫から出ていった。
手足を縛られ、檻に閉じ込められている俺が逃げられるとは思っていないのか、見張りすらいない。
くくく……。
これならば、脱出は難しくはない。
まずはこの手足を縛っている縄を──変換。
鞭でいいかな。
これで自由に動ける。
次に俺を閉じ込めている檻を変換──。
適当に剣でもいいか。
これで倉庫からも出ることができる。
ただ、外にはあの男達がいるだろう。
戦って勝たなければならない。
できれば無力化……最悪の場合は、殺さなくては……。
その為には、手持ちの材料だけでは心許ない。
そこで俺は、暗い倉庫内を見渡した。
積み重ねられた箱。
その中には何かしらの道具や資材が、入っているようだ。
これだけ材料があれば、さほど魔力を使わずに、強力な武具が作れるだろう。
それならば色々と作って、戦いに備えようじゃないか!
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