骸の神
私はクレア。
美しくて偉大な姉様の、平凡な昧よ。
姉様の仕事を手伝っていると、その凄さをいつも痛感させられる……。
現在はアルクさん達の故郷へ来ていたのだけど、危険があるかもしれないというので、村の外で待機していた。
アリサとミミもいるけど、特にやることも無くて退屈だわ。
「あれ?」
村の方から、爆発音が聞こえたような……。
だけどここから村の様子は、よく見えないのよね……。
「何事……?」
「ちょっと騒がしいね。
ミミ、分かる?」
何か問題が起こったらしいが、私やアリサの視力では何が起こっているのかちょっと分からない。
でもミミの装備なら、状況が把握できるだろう。
彼女が持つライフルのスコープなら、1km近く先まで見えるはず……。
「戦闘が発生しているようです。
通常なら敗北するとは思えませんが、お嬢様とメイド長の姿が見えません」
「「えっ!?」」
姉様達に何かあったってこと!?
あの姉様とアンシーが誰かに負けるとは思えないけど、どういう状況なの!?
「いかがなさいますか?」
「ん……では、可能な範囲で援護射撃をして!」
「かしこまりました!」
まずは今起こっている戦闘を終わらせないと、現状把握もできないしね……。
しかし、ミミはすぐには撃たない。
無駄弾を撃たないというか、最も効果的なタイミングを狙っているようね。
彼女の腕は間違いないから、そこは任せる。
そしてついにミミが撃った瞬間──、
「あ、アルクさんが敵を斬りました。
これで終わり……はへ?」
ミミが茫然として、スコープから目を離したんだけど……。
その視線が、見上げるように上をむいて……。
「「え……?」」
私とアリサも、その視線を追うように見上げたけど、そこには信じられないほど大きな巨人が出現していた。
ただ、巨人とはいっても、なにやらその姿は姉様が作ってくれたプリンのように揺らめいている。
色も真っ白で、人型なのにあまり人間のようには見えない。
そもそもサイズが、この世の物とは思えないほど巨大だ。
「あんな生き物って有り得るの!?」
「いえ……どうやらあれは、骨のようなものの集合体のようです……よ?」
そんなミミの報告で、私は理解した。
あれは巨人なのではなく、無数の骨が寄り集まって、人のような形に見せているだけなのだ。
以前海で見たことがあるけど、無数の魚が群れを作り、一匹の巨大な生物のようになっている状態と似たようなものだと思う。
だからあれだけ巨大なのに、自重で潰れることもないのだろう。
たぶん見た目よりもあれは、内部がスカスカで重量も軽いんじゃ……。
仮に潰れても、他の骨がその箇所を再構築して補っている──。
……ということは?
「あれは……ちょっとやそっとの攻撃を受けても、すぐに再生する……?」
もしかして姉様やアンシーくらいの火力が無いと、倒せない……!?
いえ、だからと言って、このまま指をくわえて見てはいられない。
アルクさん達に何かあったら、姉様に顔向けできないし。
「アリサ、援護に向かいますよ!
ミミはここで待機して、援護射撃を!」
「う、うん!」
「はい!」
私達も戦闘に参加することにした。
ただ、あの巨人に対して、ミミのライフルでは効果が薄そうだ。
だから彼女による支援効果は、あまり期待できないと思う……。
でも、私達の魔法なら、多少は効くかもしれない。
そして私達が戦いの場にかけつけると、そこではアルクさんやドンガトさんが巨人の足を切りつけ、リーリアさんとエカリナさんが魔法攻撃を撃ち込んでいたけど、やっぱり効果はあまり無いようだった。
一応、アルクさんの攻撃で、足首を両断してはいるけど、すぐに元に戻る。
一方の巨人は、微妙に形を変えながら、アルクさん達を踏みつぶそうとしている……だけではなく──、
「うおっ!?」
骨の集合体が触手のようなものを形成して、遠距離攻撃も仕掛けてくる。
「こ、これ以上は、近づかない方が良さそうね……」
「うん、ここから攻撃しよう!」
私達の魔法なら、少し離れた場所からでも届く。
しかも私達の魔法は──、
「「魔力融合!!」」
一緒に付与魔法を扱っていた関係で、1つの魔法を2人で発動することが可能のだ。
それは2人分の魔力を増幅して乗せることで、威力を高めることができる。
それに──、
「「ホーリーライトっ!!」」
アリサは回復魔法を中心とした、光属性の魔法を使うことができた。
光属性魔法は、アンデッド系の魔物に強い効果を示す。
あの巨人も、アンデッド系だよね……?
実際、私達が放った攻撃の光は、巨人の頭を吹き飛ばした。
これなら何発か打ち込めば──、
「……頭が生えてきたっ!!」
「ひえっ……!」
無駄そう……。
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