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島のごとき者

 俺達は魔物を倒す為、大戦艦ヤマト(に似せて作った船)へと乗り込んで大海原へと出航した。


 とはいっても、魔物は地元の漁師達が遭遇したくらいだから、そんなに沖合には出現しないと思われる。

 彼らが使っている小さな漁船──しかもエンジンが無い帆船では、波が高い外海に出るのは危険が大きいから、陸地からはそれほど離れていない場所で漁をしていたという。


 だから魔物は、案外近くに出現するということになる。

 現時点ではまだ見えないが……。


「この辺に出現したのですか?」


 俺は漁師達に確認する。


「あ……ああ、この海域でよく目撃されている」


 場所は町がある入江から死角になっているので、魔物が潜むのにはちょうどいいところなのかもしれない。

 じゃあここで待ち伏せするか。

 まずは、こう……っと。


 俺はヤマトの周囲……とは言っても、2kmほど離れた海中に、「遠隔変換」で機雷を設置した。

 ヤマトを囲むように100個ほどだ。


「この海域は、そこまで深くはないのですね?」


「そうだな……網が海底に届く」


 それならば島と見紛(みまが)うほどの巨大な魔物が、真下から襲い掛かってくることは考えにくい。

 海面付近の機雷に接触して、爆発に巻き込まれてくれるのが、一番手っ取り早いが……。


 だが、そう簡単には話は進まなかった。

 そもそも魔物が出現しない。


 なかなか出てこないので、俺は甲板で釣りをしながら時間を潰した。

 ……今のところ、釣果(ちょうか)はゼロだが。

 魔物の所為で魚が減っているらしいから、仕方がないか……。


「ははは、またかかったぞ!」


 一方ミーティアは、そこそこ大きいのを10匹以上釣り上げていた。

 なんでだよ……。


 でも、王女の身分では、今まで釣りなんてしたことも無いのだろう。

 きっと新鮮な体験なのだろうし、楽しそうでなにより。


 波も穏やかで、のどかのどか。


 で、3時間ほど経過した頃──。


『お嬢様、来ました。

 左舷の方です』


 艦橋にいるアンシーが魔物の存在を補足し、伝声管で伝えてきた。

 俺が左舷の方へ行くと、遠くの海面──数km先に何かが浮いているのが見える。


「あいつだ……。

 間違いねぇ……!!」


 漁師達からも、過去に目撃した魔物と同じ存在だという確認が取れた。


 ここからだと形はよく分からないけど、海上に出ている部分の高さはされほどではない。

 ただ、面積は結構あるように見える。

 確かにちょっとした岩礁のようで、島だとか言われていたのも納得ではある。


 で、その魔物は警戒しているのか、こちらには近寄ってこなかった。

 これでは機雷には引っかからないな……。


 う~ん、取りあえず飛行ドローンで、その姿を確認してみるか。

 それで爆弾でも落として挑発し、誘導できるようなら機雷原に誘い込もう。


 そんな訳で、ドローンを空中から魔物に接近させてみる。

 ほう……ドローンのカメラで見ると、海上に出ている部分は円形のようだ。

 やはり蛸や海月(クラゲ)、あるいは亀の魔物なのだろうか?


 しかしそれにしては大きいが……。

 直径で300m以上ないか?

 つまり全長263mあるこのヤマトよりも、ちょっと大きい。


 あと、表面はごつごつしているが、それはサンゴや貝類などがこびりついている所為で、地肌は見えなかった。

 現状では、見かけだけで正体を特定することは、できないということだ。


 で、その巨体を暫く観察していると──、


「えっ!?」


「なんだ今のは!?」


 海中から細長い何かが伸びて、ドローンを叩き落した。

 蛸の触腕か!?

 正確な長さは分からないが、下手をすると1km以上の長さがあるかもしれない。

 それが機雷をすり抜けてこちらに来たら、ちょっとヤバイな……。

 早めに片を付けた方が良さそうだ。


「アンシー、主砲発射用意!!

 戦闘態勢に入るので、皆さんは艦内へ!!」


 俺もアンシーがいる艦橋に向かおう。


「主砲発射!!

 近づかれる前に倒します!」


 ヤマトの主砲は、射程距離が40km以上あるが、逆に密着されると狙いにくくなる。

 そもそも、そこまで射程距離がある砲弾の威力が威力なだけに、至近距離で炸裂したら、こちらにも被害が及ぶ可能性もあるからな。

 ならば離れて戦うのが正解だ。


「かしこまりました、お嬢様」


 直後、主砲が火を噴き、その衝撃波によって海面が大きくへこんだ。


 そして砲弾は、魔物へと直撃した。

 相手は動いていないし、距離的にもサイズ的にも外しようがない。

 そもそも照準の制御をしているのがアンシーだから、その狙いの正確さは疑いようもなかった。


 だが、目の前の島は沈まない。

 いかに巨大でも、普通の生物なら貫通していてもおかしくない威力があったはずだが穴は無く、全体が波打つように(うごめ)いているだけだ。

 どの程度のダメージを与えたのかは分からないので、ここは更に攻撃をして畳みかける。


「アンシー、弾を打ち尽くすまで攻撃続行!

 弾切れになったら、私が『変換』で補充します!」


「はい!」


 主砲での攻撃が続き、海上に着弾の衝撃が吹き荒れた。

 いつも応援ありがとうございます。

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