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海辺の領地へ

 総合評価2000ポイント突破、ありがとうございました。

 公爵になった俺は、早速領地へと居を移すことにした。

 まあ、学園の卒業や、王都での商会運営について、俺抜きでどのようにやっていくのか……という話し合いなど、やることは沢山あったが。


 そういえば孤児院についてだが、仮に子供達を全員領地へと連れて行ったとしても、孤児院自体の需要が無くなる訳ではない。

 なので新たに管理者を雇い、俺の拠出する資金によって運営を継続することにした。

 その辺は1か月くらい時間をかけて準備を進めてきたが、そろそろ準備が整ったので、あとは王都の人員に任せて俺は領地へと移動する。


 俺の領地はノーラン地方という狭い土地で、前世で言えばちょっとした市くらいの面積だが、人口は2千人弱程度だという。

 異世界は人口密度が高くないねぇ……。


 そこに孤児院の子供達や、俺へと忠誠を誓った元教国人などが300人以上が移住することになる。

 他にもロゼーカンナ市からドンガトさん達も呼び寄せるつもりだし、将来的にはルエザリクさんも活動の拠点をこちらに移すということなので、いきなり人口が急増する。

 現地人との軋轢が、生じないようにしないとなぁ……。 


 なお、今回俺に同行するのは、メイドのアンシーとミミは当然だが、妹のクレアと形だけだが嫁となるアリサとセリエルも学園を卒業して一緒に行く。

 それと静代さんは、孤児院の子供達と先行して現地入りしている。

 取りあえず元教国人に任せている開拓村で、働いてもらう予定だ。

 勿論、まだ小さな子や、王都に残りたいという子は、孤児院の方に残しているぞ。


 そして──、

 

「では()こうぞ、われらが新天地へ!」


 ミーティア王女も一緒だ。


「え……あなたも行くのですか?」


「私とそちは婦婦(ふーふ)であろう。

 当然ではないか」


 ……結婚って、形だけじゃなかったっけ……?

 アリサやセリエルと違って、王女は俺自身にはさほどi愛情を持っていないという認識だったのだが……。

 でもだからこそ、体裁だけは整えるということか?


 ともかくオスプレイに乗り込み、移動すること2時間ほど──。

 目的地が見えてきた。


「あれが海!?

 大きいーっ!!」


「初めて見た……」


「素晴らしい眺望ですが……揺れががが」


 みんながはしゃいでいるが、空から見る景色は確かに雄大で美しい。

 だが、目的地の町は、地上からよりも更に小さく見える。

 本当に小さな港町で、辛うじて漁村とは言えない程度だ。

 まあ、俺は政治とかはそんなに分らないし、このくらいの規模の方が統治しやすいのだろうけれど。


 そしていつも通り、目立たないように町から離れた場所に着陸して、そこからは徒歩で向かう。


「ふむ……妙な匂いがするな」


「潮の香りですね」


 マジでワカメスープのような匂いがするのだから、ちょっと不思議な気分になる。

 まあ、すぐに慣れるだろう。


 で、町に到着すると、開業予定の商会支店に泊まることにした。

 住むところはまだ(・・)用意していないからな。

 公爵家の屋敷に相応(ふさわ)しい物を建てようとしたら、年単位の時間と莫大な予算がかかるので、現時点では何も手を付けていない。

 いっそ俺の能力を使おうと思っているが、それは後日に落ち着いてからだ。


「それではみなさんは、ここで休んでいてください。

 私は領主として、ちょっとした仕事をしてきますので」


 と、俺は1人で町へと出掛けることにした。




「姉様……どこへ……?」


 私クレアは、姉様の新領地へとやってきた。

 現地へ到着して早々、姉様は何処かへ出掛けてしまう。

 しかも平民の……まるで男装のような服装でだ。

 そういえばよく忘れそうになるけど、元々は兄様だったから、そんなにおかしなことではない……のかな?


 とにかく気になった私は、姉様の後をつけてみることにしたのだけど……。


 でも、私一人で見ず知らずの土地に行くのは、ちょっと不安だ……。

 アリサは……はしゃぎ疲れて、寝てしまっている……。

 昨晩は今日が楽しみで、眠れなかったようだ。

 形だけ……そう形だけとはいえ、姉様との新婚生活の始まりだし……。


 それではセリエルは……。


「わ……(わたくし)も……!!」


「……あなたはアリサと一緒に寝ていて」


 どうやらあの空飛ぶ乗り物に酔ったらしく、動けそうにない。

 あとは王女様だけど、さすがに彼女には、なんだか話しかけるのもむ恐れ多いし……。


 あっ、急がないと、姉様を見失ってしまう!

 私は意を決して、姉様を追った。


 姉様は町の大通りに出ると、その道端にむしろを敷いて、その上に商品ら並び始めた。

 え……行商人の真似事?

 暫く物陰から観察していたけど、やっぱり物を売っているようだ。

 公爵になった姉様が、なんでそんなことを……?


「初心に返って、新たな生活への心構えにするつもりなのでしょう」


 突然、背後から声がかけられる。


「ア、アンシー!?」


「勝手にお(ひと)りで出歩いては、困ります」


 いつの間にか、昔から我が家に仕えているメイドのアンシーがいた。

 彼女は姉様が家を出た後も、ただ一人姉様に付き従った人だ。

 そしてだからこそ彼女は、姉様にとっても特別な人になっている。


 それにしても、どうして──、


「どうして私の私の居場所が分かったの……?」


「私はあらかじめ設定した人物の居場所は、数km圏内ならば何処にいても分かります」


 そんなことがありえるの!?


「ちなみにお嬢様も、クレア様がついてきていることには気づいていますよ」


「えっ!?」


 私は姉様の方を見ると、遠くてハッキリとはわからなかったけど、目が合ったような気がした。

 ……やっぱり姉様は凄いなぁ……。


 それにしても、初心とはどういう意味だろう……?


「初心……って?」


「お嬢様はご両親から(かえり)みられなくなった後、あのように自身の能力を活かして商売を始めました。

 独りでも生きていけるように……と。

 結果として危ない目にあうこともありましたが、この最初の一歩があったからこそ、現在の公爵という地位があります」


 ああ……私も人質に取られそうになったことがあったっけ……。

 あの時の姉様は、こんなことをしていて、それでトラブルに巻き込まれたんだね……。

 姉様も大変な思いをしてきたんだ……。


「それにあのようにして、町人の生活状態等を確認しているのだと思います。

 直接、地元の住人と触れ合うことで、得られる情報もあるのでしょう」


「そうか……」


 これから姉様は、この領地を運営していかなければならない。

 そのことに姉様は、真剣に向き合おうとしているのだろう。

 適わないなぁ……。


「私も……姉様のお手伝いができればいいのだけど……」


「できますよ、その気持ちさえあれば……。

 後はクレア様の努力次第で、結果はついてきます」


 アンシーの言葉は、その通りなのだろう。

 私はこの新しい土地で、今まで以上の努力をしていかなければならない……。

 そう強く感じた。

 いつも応援ありがとうございます。

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