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商談成立

「ギフト……そうか。

 それならば確かに……」


 男は得心いったように頷く。

 そして──、


「……でも、それが本当なら、あまり口外しない方がいい。

 君の能力は利益を生むから、君を監禁でもして独占しようとする者もいるだろう」


 俺に忠告してくれた。

 その顔は真剣で、何かを企んでいるような雰囲気はなかった。


「……つまりあなたは、違うということですね?」


「あ、ああ……そうだな。

 本音を言えば、独り占めしたくなる気持ちもあるが、私は君と対等の取り引きをしたい」


 ふむ……俺とは信頼関係を築いた方が、得だと判断した感じかな?

 わざわざ独り占めをしたいという気持ちまで吐露しているところを見るに、まあ悪い奴ではないと思う。

 でも、正直なだけでは、商売人としては大成できない。

 この場で全面的に信用するのは早計だ。


「具体的には、どのような形ですか?」


「そうだね……私は普段行商をしているが、そろそろロゼーカンナ市で店を開こうと思っている。

 その際に、君の作品を目玉商品にしたいんだ」


 ロゼーカンナ市と言えば、隣の子爵領だったかな?

 我が男爵領にあるどの都市よりも、大きな街だったはずだ。

 確かダンジョンという魔物が湧き出す地下迷宮も、近隣にあったと思う。

 そこの魔物から採取できる素材が、経済発展に一役買っているとか。


 俺としても、「変換」の材料にできそうだから、ダンジョンにはちょっと興味があるな。

 魔物の素材が手に入れば、もっと強力な武器や防具を作ることができるかもしれない。


「どうだい?

 私の店に商品を(おろ)してみないかい?

 こんな露天で売るよりも、高額で沢山売ってみせるよ?」


 う~ん……悪い話ではないんだよなぁ。

 ただ、この人がロゼーカンナ市を中心にして商売をするというのなら、俺もそこへ移住することを考えた方が、色々と都合がいい。

 確かロゼーカンナ市って、ここから馬車で5日はかかる土地だ。

 そこと納品などのやりとりをするのに、俺がこの街にいたままではお互いに大変だろう。


 そんな俺の考えを話すと男は──、


「君が移住してくれるのなら、それが一番良いが……。

 勿論その場合は、住む場所などはこちらで用意しよう」


 男はそう申し出てくれたが、さすがに即決はできないなぁ。


「ただ……君の親御さんはどう考えるか……」

 

「ええ、家族がいるので、いますぐには決められませんね。

 何度か取り引きしつつ、考えていく……ということでいいですか?」


「ああ、それでいい」


 本当は俺が何をしようとも、両親はまったく気にしないと思う。

 むしろ俺が別の土地に移住したら、邪魔者がいなくなって清々するんじゃないかな?

 まあ……俺も今更両親には何も期待していない。


 でも、アンシーは連れていきたいな。

 今や彼女はメイドとしてだけではなく、家族としても俺にとっては無くてはならない存在だ。

 とはいえ形としては両親に雇われているアンシーを雇う為には、両親が提示している以上の給金を俺が払えるようにならなければならないだろう。

 アンシーの給金を稼ぐ為にも、商売を頑張らないと!


 で、肝心の取り引きについてだが、俺にとっては不都合の無い条件が出された。


「当面の間は、私がこちらへと仕入れに来るよ」


「それで利益が出るんですか?」


 仕入れに往復10日もかけるんだぞ?

 その間に店を閉めるってことはないと思うけど、人を雇うにしてもタダではない。

 それだけ俺が作る物に、価値を見いだしてくれているのか?


「そこは上手くやらせてもらうよ」


「……では、あなたのところへ、優先的に商品を用意しますよ」


「うん、よろしく頼むよ。

 あ、申し遅れた。

 私はルエザリクだ」


「俺は、アーネスト。

 こちらこそ、よろしくお願いします」


 それから俺達は、これからのことを話し合った。

 これで商売は軌道に乗りそうかな……?


 ……が、これだけでは終わらないということを、俺はまだ知らなかった。

 応援ありがとうございます。


 明日は仕事の都合でお休みします。

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