表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほしぼし  作者: 猫凪 宇宙
2/2

部室

 腕を引っ張られ大学内を疾走する私、と引っ張る小さな女性。あまりに急すぎる出来事で隣子となりこちゃんの驚く顔しか覚えていません。隣子ちゃんとは後でまた会えるかな。

 そんなことを考えていたら天文サークルの部長と名乗る小さな女性は走りながら話してくれました。

「うちのサークル、まだできてから少ししか経っていないんだよ。今年で3年目を迎えるんだ。んでもってメンバーがまだまだ少ないんだ」

「さっきのテントには部長さんの他に2人いましたっけ?」

「そうだな。そしてこれから向かう部室にあと2人いるぞ、合計5人だな」

「結構少ないんですね……」

 私は思ったことをそのまま伝えました。

「そうなんだよなぁ、でも今日おまえたちは来てくれた!しかもおまえに至っては名前が宇宙と書いてそらと読むときたもんだ、ほんと運命だよ!」

 まだ入部するなんて一言も言ってないし、テントでは名乗っただけなんですけど……。


 そんなやりとりをしているうちに部室という場所についたようです。大学の本棟からは離れ、渡り廊下を通って西棟まで来ていました。入学式でもらった大学の地図では部室棟は逆の方ですし、部室と呼ぶには普通の小さい教室に見えます。

「えーと、ここが部室なんでしょうか」

「そうだぞ!ここと隣の教室が天文学研究室なんだが、そこの教授と仲が良くてな!こっちの教室は部室として貸してもらってるんだ。さ、行くぞ!」

 そういって部長さんは部室の扉を勢いよく開けました。中には部長さんの言うとおり女性が2人いて驚いた顔でこちらを見つめていました。

「聞いてくれ!とんでもないやつを連れてきた!」


 私はペコリと頭を下げました。私の姿を見た長身の女性はすごく嬉しそうにしています。やわらかい笑顔で私に挨拶してくれました。

「ようこそ『ほしぼし』へ、私は心理学部で二回生のリリです。部員さんが入ってくれるなんて嬉しいなぁ。よろしくね」

 そういうと私の手を優しく握ってくれました。金髪で顔が小さくって瞳が青く、まるでモデルみたいですごくきれいな方です。

「よろしくお願いします。といっても私まだ入部を決めたわけではないんですけど……」

「うふふ、いいのよ。見学の気持ちでゆっくりしていってね」

 笑顔だけでなく空気もやわらかくなりそうなくらい、ほんわかとした話し方をする方でした。私の緊張も少しほぐれました。

 するともう一人の女性も自己紹介してくれました。

「私は古河ふるかわれん、理学部の三回生。君、汐里に無理やり連れてこられたんでしょ?汐里は無鉄砲な子だから変に付き合わされてんじゃない?」

「無鉄砲とはなんだ!それより聞いてくれよ、この子の名前を!」

「ん、名前?君はなんて言うの?」

「私は福島ふくしま宇宙そらと言います。あ、宇宙と書いてそらです。よろしくお願いします」

 そういうと2人の女性は目を丸くしたあとにすごいすごいと喜んでいました。やっぱり天文サークルの人にはウケがいいんですね、この名前。


 私は案内された椅子について、リリさんが入れてくれた紅茶を飲みながらサークルのお話を聞きました。部長さんと漣さんが理学部の一回生として樟葉教育大学に入学したときに2人で立ち上げたサークルなこと。今では三回生が3人、二回生が2人の合計5人であること。普段の活動内容は毎週金曜日に部室に集まって話をしたりする程度らしいのですが、月に2~3回は観望会といって山などにいって天体観測をしたり、学園祭の時はサークル所有のプラネタリウム機材を使ってプラネタリウム解説を行ったりすることも聞きました。

 私は天体観測をするという部分に少しロマンティックを感じ、少しこの天文サークルに興味を持ちました。受験勉強で疲れた時にぼーっと星空を見上げていたのを思い出しました。あの頃はもっときれいな星空に憧れたものです。


 ひとしきりサークルの話を聞いた後に、対角線上に座っていた部長さんが私の瞳を覗き込みながら、

「な、このサークルいいだろ!名前も奇跡だし入るよな!な!?」

 部長さんの隣に座っていた漣さんは、

「まぁ我ながら居心地はいいサークルだと思うよ。もしソラちゃんが良ければ私たちと一緒に星空を見に行かない?」

 リリさんは隣で頬杖を突きながら、

「他に気になるサークルもないなら『ほしぼし』に入ってみない?もし合わないと思ったらいつでも辞めてもらっていいのよ」


 先輩方の熱い眼差しを向けられた押しの弱い私はなんて答えたと思いますか?


「は、はい……」

 思いがけず天文サークルに入ることが決定しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ