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ほしぼし  作者: 猫凪 宇宙
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出会い

「おまえはこのサークルに入るべきだ!このサークルに入るために生まれてきたんだよ!」

 私の腕を引っ張って大学内を疾走するこの女性はそう言いました。


 ―― ☆★☆★☆ ――


 私の名前は福島ふくしま宇宙そら。今春この樟葉教育大学に入学することになります。教育大学なんて聞こえはいいかもしれないけれど先生になるつもりはないんです。私の家は貧乏で下宿・浪人・私立大学は禁止と言われていて、センター試験の点数を鑑みると実家から通える国公立大学がここしかなかっただけなんです。樟葉教育大学は教育大学とは言いつつも教員免許を取らなくても卒業できるって聞いて、将来やりたいことがなくてテストで点数もとれなかった私には最適な大学でした。


 入学式では学長さんが色んなことを話していたけれど、右耳から入って左耳から抜けていくような感じで何も話を覚えてはいません。覚えているのは隣の席に座っていた人に誘われランチに行ったことくらいかな。隣の席の子はいわゆるコミュ強というやつで昼休憩になるやいなやすぐに声をかけてきてご一緒することになりました。

 入学式の会場付近のイタリアンでランチを食べているとその子が言いました。

「宇宙はサークルどこに入るの?」

 私だって事前にサークルは探してたけど特に入りたいと思うものはありませんでした。

「うーん……特には考えていないですね」

「だったらさ、勧誘会は一緒に回らない?気になるサークルがあるんだ!」

 これが入学式の日の記憶。そして今日は学部のオリエンテーションで初めて大学に通う日。隣子となりこちゃんとは学籍番号も隣だったので、教室ですぐに会うことができました。


 オリエンテーションは教授陣の自己紹介と学部の先輩方からの説明があって午前には終わりました。

 そのまま隣子ちゃんと学食でランチを食べることになりました。

 カレーライスを食べながら私は尋ねます。

「この後の勧誘会なんですけど、どのサークルに行くつもりなんですか?」

 隣子ちゃんはうどんをすすり終わると話してくれました。

「天文サークル!ちょっとロマンチックじゃない?」

 天文サークル??どんなサークルなんでしょうか、イメージがつきません。飽き性な私にも興味を持つことができるんでしょうか。


 そんなこんなでランチも食べ終わり、勧誘会の始まる13時半に。学食を出ると屋外のあちらこちらでテントが立っていて、いろんな部活やサークルがビラ配りを始めていました。隣子ちゃんは勧誘会の地図を見ながら私を案内してくれました。

 そしてついたのが天文サークルのテント。女性が数人いてビラ配りをしていました。隣子ちゃんがビラを受け取り、いろいろとサークルの人から話を聞いています。私はそこまで興味はなかったので、入学式の学長の時と同様に右耳から左耳へと抜けていきました。うしろの方でぼーっとしている私にテント内のある女性が話しかけてきました。

「おまえ、名前は?」

 この子は天文サークルのメンバーなんでしょうか。生意気口調ですが背は小さく声が高くて顔は丸っこいです。まるで子供みたい、ツインテールもかわいいです。

「わ、私は福島宇宙といいます。よろしくお願いします」

「そらぁ!?すごい名前だな。なんて書くんだ?」

宇宙うちゅうと書いてそらです。キラキラネームとよくいわれまs……」

「なにぃっ!?!?」

 急にその子は私の腕をつかんで走り出しました。

「おまえっ、ちょっと来い!」

「え!?何ですか??」

「私は天文サークル『ほしぼし』の部長、須藤すどう汐里しおりだ。今からおまえを部室に連れていく」

 そう言って外にいた私は一瞬にして棟内に引っ張られました。

「はひー、急になんでしょう?部室ですか、なんで??」

「おまえの名前はこのサークルにとってまるで奇跡だよ、聞いた瞬間にビビッときたね」


「おまえはこのサークルに入るべきだ!このサークルに入るために生まれてきたんだよ!」

「はひーーー」


 こうして私は天文サークル『ほしぼし』の部室へと無理やり連れられたのでした。

 今思えばこれが私の人生に光を照らしてくれる第一歩だったようです。

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