連鎖~かおり
私の憶えている中で、一番古い記憶は、恐らく人工子宮から出る前のこと、私がそこから出る少し前のことだと思う。
私は、ある日目覚めた。
私は、目覚めたときから、私の見える人間が男か女か、話している言葉が何か『知って』いた。
それは、私の脳に直接刻み込まれた知識だった。
私は、短い覚醒と眠りを繰り返していた・・・。
私の記憶は、卓也にそこから連れ出してもらうまでは、あまりにもあいまいだ。
ほとんど覚えてない・・・。
時には、全ての記憶が分かるときがあるが、それは、すぐに消えてしまう。
時には、所々の記憶が思い出される時があるが、それは、ぼんやりとしていて、けして消えない。
その記憶で、記憶と情報になる物は、分析記憶している。
私の中で、はっきりと覚えている最初の記憶は卓也に、初めて会った時だ。
私は卓也と会った。
その時私は、『科学者』達が、私に関してのデーターを全て取り終え私を人間社会に出そうとしていた時だそうだ。
卓也が私を引き取ると、『組織』の上層部に言ったそうだ。
卓也がなぜ私などを引き取ったか、いまだに分からない。
卓也は私に、意見と行動、それを求めた最初の人物だった。
卓也は、初めて会った時私に、『行くか』『行かないか』を、決めさせた。
その時、私には卓也が、光、輝いているように見えた。
卓也は、私に聞いてきた。
『どうするか』を・・・。
卓也はいつも光輝いていた。
いつも、大勢の人に囲まれ笑いにあふれていた。
卓也と、卓也の周りの人とそして輝く光を見ていた。
私もいつかその光の中に行けると思っていた・・・
今はもう叶わぬ夢・・・
私が自分から捨て去った夢・・・
連鎖シリーズの本編に紛れ込ませようと思っていたんですがなかなか出来ず、折角なので単体で出して見ました。