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奪われた冠  作者: 彩雅
82/98

82.敵との対峙

「現在の守備は?」


「つい先程3階の見張り塔より、集団で魔物が移動してきているとの連絡が入りました。ネームドも何体か確認されているとの事で、そちらは現在第2、第3討伐部隊が対応し第4部隊が補助についております。ドラゴンの方は隊長の部隊とフィンが指揮官となり半数がドラゴンの警戒もしくは戦闘中、副隊長の部隊と第6討伐部隊が女性達を護衛、現在はシェルターまで移動中です」

「分かった。ドラゴンは3階だとの事だな」

「はい。しかし、未だに成長しているのを考えると既に場所を移動している可能性も考えられます」


部下の言葉と共に、俺は階段を駆け上がる。その時、凄まじい轟音と共に建物が崩れるような地響きが起こった。

ドラゴンには背に翼が生えている。その翼は他の魔物からは考えられないほどの巨体なのにも関わらず、自らを飛ばせるほどの大きさがあり、一度飛び上がってしまえばこの建物などは簡単に崩れてしまうだろうと予想がつくほどの破壊力を兼ね備えているのだ。

自分自信もドラゴンを見たのは20年前のあの日が始めてで、正直な話、目の前にいる王を守ることなど全くもって頭に無かった。


ーーーあの時はただただ『死にたくない』と、その一心で自分が生き延びるためだけに剣を振るったのだから。


20年前のあの日、ドラゴンと対峙した自分は間違いなく殺されると思った。たまたまあの時王宮に居合わせた、たったそれだけのことで。

こんなところで死にたくない、誰か助けてほしいと心の底からそう思った。だがどれだけそう思っていてもあの時、自分を守ってくれる者などいるはずもなく。


己の身を守れるのは、己だけだと。その一心で、剣を手に取ったのだ。


勝てる見込みなど無かった。いくら剣の腕を磨いていようと、その強さからソードマスターになれるなどと持て囃されていたとしても、それは所詮、対人戦でのことでしかない。

自分の剣が魔物に通じるかどうかなど分かるはずもないまま戦いを挑みーーーそこからは、記憶が飛んでいる。

ドラゴンが地に倒れた時、自分も真っ赤な血で染っていた事だけは鮮明に記憶に残っていた。けれど、たとえそれがどれだけ記憶が飛ぶほどの悪夢のような戦いだったとしても、目撃はおろか、討伐されたのはそのたった一度きり。

魔物の死体は消えてしまうため、研究することはできない。その後は何も情報がなく、結局はなぜあのドラゴンが突然王都に出てきたのかもわからないままだった。

そんなとりとめの無いことを考えていると、地響きが収まったとほぼ同時に警告の鐘が響き渡る。


「外に出たか···!」


今はこんな意味の無い、考えても分からない事を考えていてもどうにもならない。今は皆が団結し、ドラゴンや他の魔物の襲撃の対応に終われているのだ。

そんな中、隊長と呼ばれる己がどうでもいいことに気を取られている場合ではない。

目の前で、何人もの部下を失った。己の手で、殺してほしいと懇願する何人もの部下を切ってきた。もうそんな思いはしたくないと、強くなければ守れないものがあると。その為に今まで、自分は努力し続けてきたのだから。生きたいという未練など忘れて、皆と共に戦うべきだ。


外へと続く扉を開け、室内に吹きこんできた冷たい風と吹雪に一瞬だけ真っ白な彼女が脳裏を過る。


ーーー私は大丈夫です。行ってください、グレン様。


そう言った彼女に、必ず戻ると約束した事も忘れてしまわなければいけないのに。

その約束が頭の片隅から消えてしまう前に、俺は20年ぶりにドラゴンと対峙したのだった。


ーーーギシャアアアアッ!!!!


身を凍らせるような雄叫びに、どれだけの者が動けなくなるか。おそらくベテランでも動けなくなるものも何名かいるだろう。この威圧が耐えられるかどうかは、実力や経験の問題ではない。

そんなことを考えながら既に始まっていた戦いの最中、剣を抜き敵の声にかき消されぬように声を張った。


「総員、戦闘を開始する!!」


真っ白な雪が舞う中、戦いの火蓋は切って落とされた。

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