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奪われた冠  作者: 彩雅
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18.白のウラムケープ

デルフィランズ様を見送った後、ルードルフ様から声をかけられる。

「···あー、と。ヴェリア嬢、いくつか質問あるんだけど、いい?」

「何でしょうか?」

「ここの砦なんだけど。当たり前だけど女性なんてヴェリア嬢以外いないし···侍女がいないのね。お世話できる人がいないんだけど、1人でなんとかなるか?」

「そうですね···食事はみなさんと同じ時間に食べた方がご迷惑をおかけしませんよね。時間と場所を教えていただければ、自分で食べに行きます。もし皆様と食べることに支障がありましたら、料理は多少ならできますので、材料と道具を使っても大丈夫なら自分で作ることもできます」

「···自分で作れるんだ···俺、てっきり王妃様になるぐらいの人だから作れないんだとばかり···」

「そんなことないですよ。殿下のご要望もありまして、嗜みの1つとしてお菓子作りやお料理を少々習っただけです」

「いや、作れるってことがすごいと思う。というか、元々はクソ殿下の要望のせいなんじゃねーか。あの野郎···」

「あの、それ以上は不敬罪になってしまいますのでその辺で···」

「グレンもそんな事言ってたけど大丈夫。この隊にいる奴らにあの殿下を好いてるやつは誰1人としていないから。ヴェリア嬢も悪口言っていいんだよ?浮気したクソ野郎はさっさとくたばれって」

実にあっさりととんでもないことを言うルードルフ様。聞き慣れない言葉にどう反応していいか分からず、苦笑いを返した。

「あはは···と言っても実際、大した料理もお菓子もできませんし。殿下に作ったこともありましたが、食べていただいたことは1度もありませんでした。差し入れて喜んでくれたのは、テオとシリル先生、ルーク様ぐらいかしら」

「えーと、ルークってのは確か殿下の弟だよな?仲は良かったの?」

「いえ、特に仲が良いというほどでは···昔からルーク様は体が良くなかったので、時折お見舞いに行ってお話はしていましたが」

「あー、なるほど···ちなみにそのテオとシリル先生っていうのは?差し支えなければ誰だか聞いてもいいか?」

「テオは私の護衛騎士の名前です。シリル先生は家庭教師の中の1人で、私に魔法学を教えて下さっていた先生ですね。昔、殿下の誕生パーティの際に魔法で花火を打ち上げてくださった事があるのです。とても綺麗でした」 


「·····んで、·····と··」


「え?」

なんと話しているのか聞き取れず、思わず聞き返すが、ルードルフ様は答える事はなく溜息をついた。

「いや、なんでもない。ご飯の話に戻るけど、食事は一応時間は決まってる。食堂でそれぞれ朝は7時、昼は12時、夕方は6時から2時間ぐらいは食べられるよ。もし時間内にいけなくても、厨房で自分で作れば何かしらは飲んだり食べたりはできるから安心してくれ。道案内は後でするから」

「分かりました」

「ん、じゃあ質問に戻るな。次は着替えなんだけど」

「着替えは大丈夫です。持ってきた服は全部1人で着られる服になってますので」

「···え、1人で着られるの?」

「はい。そういうふうに作り替えましたので、一人でも着替えは問題ありません」

「そ、そうか。作り替えたって、ヴェリア嬢が?」 

「おそらく侍女がいないだろうという話には我が家でもなりまして、なら簡素な作りにしてしまえばいいということになりました。私が全て作り替えたわけではありませんが、私の意見を採用してもらって作ってもらったものなので大丈夫です」

「だと後は···お風呂か」

「入浴ですか···他の方と被らないような時間帯はありますか?夜中とかのほうがいいのでしょうか」

「いや、夜中は止めてというか、ヴェリア嬢は大浴場は絶対に禁止!俺かグレンの都合が付かない限りは絶っっ対に駄目!!この部屋に個室のシャワーと小さいけど風呂もあるから、そこ使って!あれ?というか1人で大丈夫!?」

「わ、分かりました。お風呂も1人で入れるよう教えてもらいましたので、大丈夫だと思います」

「それなら良いけど、ヴェリア嬢はここでは唯一の女性なんだから、常に危機感を持って行動してくれ!」

「···ええと、働いてる方にも女性はいらっしゃらないんですか?」

「いないんだよ···いや、グレンがここに来たばかりの頃はいたんだけど、ほとんどがグレンに惚れちゃってな。アイツの若い頃って、今と違ってまさに貴族!って感じだったし。グレンはまったく相手にしてなかったけど、まぁ色々あってな。気がついたら女性を雇うのを止めてた」

「そんなことがあったんですね···」

どこか遠い目をしながら話すルードルフ。おそらく話している以上に大変なことがあったのだろう。

「と、まぁ色々余計な事も話しちゃったけど、聞きたいところはそんなところだ。ヴェリア嬢からは何か質問あるか?」

「あの、思ったよりも寒いので、何か室内でも羽織れるものが欲しいなと···何かいいものはありますか?」

「あ、室内でも羽織れるものなら、そこのソファーに置いてあるウラムケープがあるからこれ使って?」

そう言ってソファーに掛けられていた白いものをルードルフ様が手に取ると、それはふわりと広がった。ふわふわと柔らかそうな見た目のそれは、白いウラムケープ。実際に見たのは初めてだが、話は聞いたことはあった。確か羊毛は羊毛でも、羊型の魔物の羊毛で作られており、とても温かいのだとか。かなり獰猛な性格らしく家畜化はされていないらしいので、おそらく討伐の際に刈り取ってくるのだろう。

「ウラムケープってもしかして、魔物の羊毛でできてるケープですか?初めて見ました···」

「王都には出回ってないし、ここら辺でしか作ってないからね、これ。ヴェリア嬢に似合うかは分からないけど···温かさはかなりあるから。というかよくこのケープのこと知ってたな?」

「魔物の勉強をした際に習ったので···。ちなみに、何色ぐらいあるものなのでしょうか?あと、何色が好まれて使われているのです?」

「ウラムの色?白、灰、黒の3色だな。白と灰色はよく見かけるけど、黒色のウラムはリーダー格のやつしかいないから、強すぎて羊毛は取れない。1回だけグレンが刈り取って来たことあるけど···あれ、どうやって刈り取ってきたんだろうな。グレンが自分の着てるコートに使ってるけど、未だに謎なんだよ。ちなみに基本的にケープとして着てるとしたら灰色かな。白は汚れも付きやすいし、何より森じゃ目立つから。灰色しか着るやついなくて白は作っても余るから作らないんだけど。···あ、このケープは余り物じゃないからな!?ヴェリア嬢には灰色よりも白が似合いそうだと思って作ったやつだから!」

「ふふ、ありがとうございます、ルードルフ様」

「サイズは大丈夫そう?1回試着してもらうと助かる」

「分かりました」

似合いそうだと思って作ったということは、私の容姿から考えてくれたのだろうか。ふわふわとした柔らかな手触りのそれは、とても温かい。着たままでも動きやすく、何か作業をしやすいようにという配慮だろうか、ただの被るタイプではなく袖口が別についていた。ふわりと大きく広がった袖に腕を通そうとすると、大きく広がった袖とは別に、中が長袖になっている事に気が付く。

「あ、それはなんか作ったやつのこだわりらしい。『袖は広がってたほうが絶対に可愛いけどそれだとめちゃくちゃ寒いから裾から見えないぐらいの長さで長袖をつけた』って言ってた。」

手を軽く上げれば広がっていた裾はするすると肘の所まで落ちていき、なぜかそこで固定される。下に下げても下がってこない所を見ると、もしかしてこれも何か魔法がかかっているのだろうか。

「これ、もしかして魔導服···ですか?」

「え?あ、そうだよ。袖口長いほうが可愛いけど、何かするときは邪魔かなと思って簡単に魔法入れたって言ってた。アイツ男モンだと機能性しか入れないくせに、女性物は可愛いかどうかでしか服作らねえから、使いにくかったら作り直させるわ。ちなみに腕を2回振ると外側の袖が下に降りる仕組みになってるから」

「まぁ···便利ですね。あの、作ってくださった方にも直接お礼が言いたいですが」

「いやー、ヴェリア嬢に直接会ったらアイツ発狂しそうなんだけど···。にしても、やっぱりヴェリア嬢には白が似合うな」

誰かが自分の事を考えてなにかをプレゼントしてくれるなんて、いつぶりだろうか。思わず、口元が綻ぶ。

「ありがとうございます」

「どういたしまして。さて、じゃあそれ着たままでいいからここの案内してもいいか?お腹空いてるなら何か食事でも···」

「お腹は空いていないので、大丈夫ですよ。案内よろしくお願いいたします」

「といっても疲れてるだろうから、最低限だけ案内するから。まずはここから食堂までの道だけ。後はゆっくり体休めてもらって、明日また改めて案内するよ」

「はい」

「じゃあ行こうか」

ルードルフ様にそう声をかけられ、ケープを着たまま私は扉の方へ歩き出したのだった。

普通の王妃様ならこんな庶民のようなことはできないでしょうが、乙女ゲームなら主人公チートできっとなんとかなるでしょうと思って書いてました。本来ならルードルフの反応が正しいと思う。

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