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奪われた冠  作者: 彩雅
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14.白い令嬢

女の体がふらりと傾くとそのまま膝を付き、崩れ落ちそうになる。

手の力が抜かれたことで軽くなった剣を捨てて体を受け止めると、酷く体が軽く、冷たい事に気が付く。

どうやら気を失ったらしかった。


「……」


慣れぬ気温のためか、白い肌を通り越し青白く見える。

先程のまるで作られたような美しい笑みを思い出し、昔の自分を思い出し吐き気が込み上げてきた。


『デルフィランズ様。私のことが、信じられないというお気持ちはよくわかっています。ですから、どうか』


『王都に連絡を入れるなら、せめてここで私のことを殺してください』


(極端すぎるな。この女はここまで来て死にに来たとでも言うのか)

そしてその言葉に、グレンは酷く苛ついた。しかし気を失った彼女をこのままにしておくわけにもいかず、男はため息をつくと彼女を抱えたまま、向かい側の男に話しかけた。


「この令嬢がアリス・ヴェリアというのは本当か」


「ほ、本当でございます!その方は、ヴェリア家の長女、アリス様です!」

「…」

二人揃って嘘をついている可能性はありえるが、だとしてなぜそんな嘘をつく必要があるのかがグレンには分からなかった。

「嘘だと思うなら、イバリア様に聞いてみてください!お嬢様の事は彼に頼んだと奥様からそう聞いたのですから!」

「ルードルフ?」

「そ、そうです!」

(ルードルフがヴェリア家と繋がっている?そんな話は聞いたことがないが)

嘘はつけぬあの男の事だ。知っているなら必ず自分に報告する筈。

この女を切るのは簡単だが、本当にルードルフに話が通っていた場合は話が変わってくる。なぜ自分の所にまで報告が来ていないのかという問題は残っていたが。

だが今は、とにかくルードルフに聞かない限りはこの状況は改善しそうもない。

グレンはアリスをベッドの上に横たえると、剣の先を掴んでいた手のひらと薄い首の肌を裂き、血が滲んでいるのを見て、自分の着ていたマントを上から掛けた。

なぜそんなことをしたのか、自分でもよく分からない。

だが、なぜかこの白い女に血は似合わないと思ったのだ。


「事実確認をしてくる。もう少し待っていろ」


グレンは床に転がっている男を先程まで気を失っていた見張りへ『部屋を移す』ように言いつけた。

血を流しすぎたのか、そのまま抵抗する様子のない男が牢屋から引きずり出され、どこかへと連れていかれるのを見届けてから再び牢屋の鍵を閉める。

石造りの階段をそのまま上がっていくと、グレンはため息をつきながら己の仕事部屋へと向かっていった。

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