『初披露』『Buch』
初披露
安岡 憙弘
ロシアのボリショイサーカスがやってきました。今日は新人のミーナがはじめて綱渡りを披露する日です。
「なんだか怖いわ。」
「なにを言ってるのミーナ、たとえ失敗したとしてもすべては無なのよ。さあ、いってらっしゃい。」
Buch
ここはドイツ人のがんこなおじいさんが経営する書店です。おじいさんがぶつぶつ文句を言っています。
「最近の若いもんは年寄りを大切にしなくなった。挨拶もせんで出て行きよる。年寄りや祖先を大切にせんというのは本(Buch)を読んで目を閉じ心の目でみようとしなくなったからじゃ。心は見えないものへの入り口であり窓じゃからのう。」