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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第2部・純愛
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第4話 格闘術1(通常版)

 心が軽い。これほどまでに心が軽く感じた事はなかった。エシェラと心と身体を通わせた事で、ここまで安らぐものなのか。


 エシェラも今までとは見違えるほどに美しくなった。あの一晩で大人の女性へと覚醒したと言える。周りからも驚きの声が挙がっているが、俺自身も驚いているぐらいだ。


 エシェラとの一件から、ラフィナ・エリシェ・シンシアからの猛アタックが続く。だが今の俺は恐れるものはなくなった。周りからはタブーとされているが、3人からの告白もしっかり受け止める。素直に受け止められる俺自身にも驚いているぐらいだった。


 無論3人の心と身体の応じにもしっかりと応えた。前の俺なら何かと決め付けては逃げていたが、今回はそうはいかない。心は思っていても身体が伴っていなければ愛とは言えない。俺自身ができる最大限の行動で、3人の心の隙間を埋めてあげられたと思う。


 改めて思うが、俺もやっと大人になれたのだろうな・・・。




 それから数週間後。胸の傷の抜糸はできたが、骨折までは完治には至っていない。幾分か楽にはなったが、それでも無理強いは禁物だろう。


 というか4人に求められ、無理した事が完治を延長させる原因だろうに。まあそこは触れないでおこう。


「何だか皆さん大人びいて見えます。」


 調理師の免許を取得したメルデュラ。シンシア指導の下、レミセンに縁あるレシピの作成を繰り返した。今となってはシンシアのレベルもベテランクラス。全レミセンのマスターの頂点に立つ存在とも言える。


「フフッ、勇気貰っちゃったからね。」


 メルデュラの問い掛けに笑顔で応える。エシェラもそうだが、他の3人も見違えるほど大人の女性として覚醒した。より一層美しさを増した容姿は、内外問わず人気が高い。


「でもよく吹っ切れましたね。」

「俺はエスコートして貰っただけだよ。心から愛を注いだつもりだが、逆に貰った気がしてならない。」


 異性との交わりにより、ここまで変われるものなのか。今までの細かな悩みなどは微塵にも感じられない。ただ純粋に相手を求め合うだけ、そこには疚しさや下心など一切ない。


「これでどうでしょうか?」


 完成した料理を手渡してくる。それを受け取り味見した。シンシアが料理を始めた頃と同じ味付けなのには驚いたが、初めてとしては上出来だろう。


「うむ、いいんじゃないかな。」

「ありがとうございます!」


 教えられるがままに作った手料理を誉められて、メルデュラは嬉しそうに礼を述べてきた。その姿を見たシンシアも嬉しそうだ。


「後数年後にはメルデュラも一端のマスターになれるな。」

「期待に応えられるよう努力しますよ。」


 そう言いながらも次の料理を作りだす。メルデュラは直向きに行動する面では誰にも負けないほどの力がある。一直線に突き進む事は彼女の専売特許とも言えるだろう。




 6月下旬を迎えた。胸の骨折もほぼ完治し、普段と変わりない行動ができるようになる。梅雨の時期に入っているため、表はシトシトと小雨が続く毎日だ。


「ヴェアちゃんも大きくなったねぇ。」

「まだ0歳でしょ、この成長っぷりは驚きよ。」


 既に寝返りを打てるまでになった。それからは所構わずと動き出し、周りをオロオロさせる。まあそんなヴェアデュラが可愛くて仕方がないのだが。


「ヴェアが18とかになったら、手が付けられなくなりそうで怖い。」

「大丈夫ですよ。両親が厳しく接すれば、無理無茶しないだろうし。」

「1人2役は参るわ。」


 俺1人での面倒が主流になりつつある。他の面々は忙しいらしく、父親と母親の両方を担うのが日課となっていた。


 そうそう、最近はシュームも調理師の免許を取得。本店レミセンのマスターとして活躍している。短期間で免許を取得したのは異例で、周りから驚きの声が挙がっている。


 まあ彼女もメルデュラと同じく、これと決めたら我武者羅に突き進む。だから俺に対する思いの強さも尋常じゃないのだから。




「こんちわ~。」


 噂をすれば何とやら。シュームが本店レミセンに入ってくる。何やら大量の食材を持ち、それを見ただけで訪れた理由が分かった。


「いらっしゃい。」

「表は相変わらずよ、早く夏空になって欲しいわ。」


 傘を差してはいるが、濡れるのはご免だと愚痴を洩らす。彼女の性格からすれば、快晴の空を指し示すだろう。曇り空では心も落ち込んでしまう筈だ。


「でも、ここに太陽があるからいいけどね。」


 俺を見つめながら呟く。それに苦笑いを浮かべるしかない。しかし以前とは異なり、彼女の冗談とも本気とも言えない言葉を素直に受け止められる。これも4人と接した事によるものだろうな。




 その後一通り料理を作りだすシューム。流石は現役母親だ、その手際の善さは凄まじいものがある。メルデュラもそうだがシンシアをも遥かに凌ぐ腕前だ。


 いや、それ以前に心の篭り方が全く違う。そこが彼女の最大の長所だろう。格が違うとは正にこの事だ。


「相変わらず美味しいなぁ・・・。」

「フフッ、まだまだ若い娘には負けないわよ。」


 悔しそうに手料理を口にするシンシアとメルデュラ。しかし自分にはないものを持っているのは事実。そこは素直に受け止めているようだ。


「でも貴方達には敵わない事が1つだけあるわね。」


 その理由は直ぐに分かった。最近の4人の変わり様を見れば、自分とは異なるものが直ぐに分かるだろう。そこまで思ってくれているのなら、俺も彼女に応じねば失礼だろうな。


「お前がいいのなら、俺は何時でも応じるよ。」


 俺の発言に驚きの表情をするシューム。4人のお陰で素直な自分になれた。それは彼女にも十分伝わっている。故に人一倍苦労して生きるシュームにこそ、相応しいものなのだろう。


「ど・・どうしたの、何時もの君らしくないけど・・・。」

「何を今更、これが本来の自分だと思うけどね。」

「で・・でも・・・。」

「4人も分かってくれるよ。あれだけの痛みを持っているんだ。それに応えられるのは俺しかいない。君さえよければ、俺はどこまでも応じる。」


 涙を流しだすシューム。俺の言葉に揺り動かされたのか、その表情は困惑と歓喜で一杯だ。


「嬉しいけど・・・、でも・・・。」

「以前仰ったじゃないですか。心から思う故に動いてしまうのだと。彼が構わないと言っているのです。素直に受けるべきだと思いますよ。」


 数ヶ月前とは立場が逆転している。あの時はシュームが4人を押し進めようとしていたが、今は4人が彼女を押し進めようとしていた。


「・・・分かりました。」


 そう言うと俺の傍まで歩み寄る。先程までの困惑した姿はなく、頬を染めながらも表情は真剣そのものだ。


「・・・貴方を心から愛しています、私を・・・貰って下さい・・・。」


 純粋に語るその言葉はプロポーズとも取れるだろう。だがその思いは切々と伝わってくる。彼女が語れる最大限のものだ。


「ありがとな、シューム。」


 彼女の右手を静かに掴み、ソッと口づけしてあげた。今できる最大限の行動だ。シュームからすれば、この上なく幸せな瞬間だろう。




 更に数週間後。気節は夏へと入っていく。梅雨晴れはしないものの、徐々に蒸し暑くなってきている。また嫌な気節でもある、蝉が大量にでてくるのだから・・・。


 シュームの告白後、俺は彼女に精一杯応じた。心の傷を知っているだけに、どこまでも深く労わった。彼女自身も求めてくる心が凄まじかった。それだけ心が乾き切った証拠であろう。少しは潤す事ができたと確信している。


 胸の骨折は完治し、傷はすっかり癒えた。これなら以前話していた格闘術大会を行う事ができそうだ。多分・・・俺もやらされるだろうが・・・。




「また催すそうね。今度は私も参加するわ。」


 体育館の空き状況を確認しに、ナツミYUの元へと赴いた。今も小中高大の校長を担っており、その手腕は凄まじいほどにまで高まっている。


「ナツミYUさんも格闘術を会得していましたっけ?」

「柔道とプロレスね。プロレスはファンであって見様見真似だけど、柔道は一応十段よ。まあまだまだ甘いけど。」


 十段・・・、柔道レベルのトップじゃないか。そんなレベルまで極めているのか・・・。


「でも若いという事で、紅帯までは至ってないわ。形だけは黒帯だけどね。」

「貴方以外に誰が猛者と言うのですか。これだけ努力しているのを見ていない人物は、ある意味目が節穴ですよ。」

「ありがとう。」


 内外問わず実力者として謳われているナツミYU。その彼女が実力不足と言われるなら、その過去の戦歴を見てもらいたいものだな。阿呆にも程がある・・・。


「シューム先輩が惚れる訳ね。」


 日程リストを組み上げていく最中、ナツミYUが静かに語りだした。その意味合いは先日シュームとの出来事を示しているのだろう。


「先輩って言いますが、シュームの方が年下でしょうに。」

「あら、外見に囚われての解釈は無粋よ。心の強さでは私を遥かに凌駕しているからね。母親としても女としても。」

「すまない・・・。」


 確かに無粋な発言だ。ナツミYUが指摘するのはシュームの全ての強さに当てはまる。母親としての生き様と、内面に抱く女性としての強さもだ。ありとあらゆる面でシュームは勝っているのだから。


「先輩の言う通りね、どこまでも優しい。」

「貴方も同じでしょう?」

「生徒からは怖ろしいぐらいに慕われているけど、職員からは厳しすぎるという解釈をされてるわ。生徒あっての教師だというのに、教師あっての生徒だと勘違いしてる。」

「なら尚更、ナツミYUの確固たる生き様を貫かないとな。」


 ヴァルシェヴラームも語っていた。誰彼がどうこうじゃなく、自分がどうあるべきか。それは俺にも彼女にも当てはまる事だ。常々日々に強き給え、正しくその通りだな。


「フフッ、私も貴方に惚れそうよ。」

「ハハッ・・・。」


 シュームの時と同じく、封印していた女性という一面を垣間見せた。ナツミYUも心情では淋しいのだろう。普段気丈な人物ほど、心に何を抱えているか分からないからな。


「とりあえず体育館の確保は任せて。日程は追って連絡するから。」

「よろしくお願いします。」


 目ぼしい日を選び、その日の体育館の空き状況を依頼した。理想なのは日曜日の午後から。雨が降っていても室内なら全く問題ない。


 後の事をナツミYUに任せ、俺は本店レミセンへと戻って行った。


    第4話・2へ続く。

 ハーレム化の始まりが・・・(=∞=) 第2部は“裏描写”では何度もありますので@@; 大丈夫かと思いますが><;


 ちなみに、風来坊の劇中では、次話での格闘技大会ぐらいしか、目立ったバトルシーンはありません><; 風来坊はあくまでもヒューマンドラマ風な流れなので@@; そこから派生したのが警護者群ですし。色々と大変ですにゃ><;

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