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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第2部・純愛
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第3話 お守り2(通常版)

 その後突然、本店レミセンへと入ってくる人物があった。俺は犯人が掴まったのかと思ったのだが、悪い予感は更に的中する。その強盗自らここに押し入ってきたのだ。


「動くな、手を挙げろ!」


 俺は恐怖というより呆れ返った。何で質素な喫茶店に押し入るんだ・・・。それに周りは警戒した警察官がうろついているというのに、あまりにも無謀すぎる。


「噂の強盗か。」

「暫く隠れさせてもらう!」


 メルデュラを含めた5人も恐怖に慄いた表情をしているが、雰囲気から何時襲い掛かってもいいという仕草を見せる。それに気付いた俺は小さく待ての合図をした。


「隠れてもここでは袋の鼠だ。それよりも他の場所に逃げる事を勧めるよ。」

「テメェ、俺に指図するのか?!」

「助言だよ。俺は指図とか好まないからね。」


 拳銃を俺に向ける。その銃口は確実に死への誘いだが、胸騒ぎが凌駕していて怖くなかった。徐に立ち上がり、一服しながら強盗の方へと向かった。


「近付くなっ、撃つぞっ!」


 その言葉にも動じず、強盗と向かい側に座る。その堂々とした俺に、相手はたじろいていた。



「質問を幾つかしたい。まあ何だ、俺は警察官じゃない。個人的なものだ。」

「な・・何だ?」


 俺に銃口を向けながら応じる。何だか立場が逆転した。威圧的武器を持つ相手だが、先程までの強気は失せている。俺の言動に焦りを感じ、対応するのが精一杯のようだ。


「噂の強盗らしいが、人を殺めたりはしていないよな?」

「あ・・当たり前だ。俺達は金が欲しくてやった、それだけだ・・・。」

「私利私欲に駆られた訳か。でも目を見る限りは悪人には見えない。自分が本当に正しいと思って行ったと自負しているか?」

「そ・・それは・・・。」


 この強盗も切羽詰って犯行に及んだのだろう。その心の悩みはアマギH達と同じものだ。


「俺も金銭的に苦しくなった時、嫌な魔が差した時があった。しかし自分自身を強く持ち続けていたからな。そこまで至る事はなかった。」

「・・・だが・・もう遅い・・・。」

「諦めるなって言ってるんだ!」


 俺が怒鳴りだすと相手はビクついた。この言動を見れば相手が極悪ではない事が直感できる。


「いいか、間違っても死のうなんて思うなよ。這い付くばってでも生きろ。どんな苦節があろうが必ず報われる時が来る。テメェの胸にもあるんだろう、自分自身を許せない熱い心が!」


 次々に語る言葉に俯いている強盗。彼もまた心の弱さ故に犯行に至った。保険として拳銃を奪ったという事になるが、威圧にしか考えていないようだ。


 俺の説得が効いたのか、強盗は拳銃をテーブルに置いた。この状態を見れば、間違いなく事は終わったと思えた。




「動くなっ!!!」


 突然入店したウインドとダークH。拳銃を構え強盗の方へと向ける。その隙を逃がさないとエシェラが動いた。


「な・・・騙しやがったなっ!」

「ま・・待てっ!」


 テーブルにある拳銃を手に持ち、銃口を一番近いエシェラに向ける。一触即発の状態だと、間違いなく誰かが傷付く。


 俺はエシェラに向けられた銃口の前に立ち塞がる。安堵から緊張へと移り、気が頂点に達した強盗。そのまま引き金を引いてしまった。


 鳴り響く銃声。それを聞いた強盗はハッと我に帰る。撃つつもりはなかった拳銃を撃ったのである。しかもそれを人に向けて。


 放たれた弾丸は俺の胸へと着弾する。その反動で後ろへと飛ばされそうになるが、背後にいたエシェラに抱きかかえられた。


「い・・いや・・・いやぁぁぁぁぁーっ!!!」


 悲鳴を挙げながら俺を支える。その悲鳴を合図に、ウインドとダークHは強盗を狙撃した。それは手に持つ拳銃に放ち、本体に衝撃を加える。凄まじい痺れが強盗を襲い、そのまま拳銃を床に落とした。


「確保っ!」


 丁度強盗から死角にいたシンシアが、静かに背後へと移動していた。そのまま羽交い締めにして取り抑える。そこにダークHが飛び掛り、彼女と一緒に完全に取り抑えた。



「・・・あまり抑え付けるなよ、過剰正当防衛になる。」


 俺の身体を抱きかかえたまま大泣きするエシェラをよそに静かに語りだした。放たれた弾丸は間違いなく胸に着弾した。しかし撃たれたにしては痛みが酷くない。


 彼女に支えられたまま、着用しているロングを肌蹴る。そこには孤児院で貰ったプレートがあった。そうなのだ。弾丸はプレートに当たり止まっていたのだ。幾分か貫通していたが、それは俺の身体には悪影響を及ぼす程じゃない。


「ハハッ・・・。よかったな強盗さん、殺人は犯してないぞ。」


 至って冷静にいられるのが皮肉だ。至近距離で発砲されたというのに、この落ち着きは何だというのだろう。




 その後リデュアス達も駆け付けてきた。一瞬にして修羅場となった本店レミセン。しかし死者を出さずに対処できたのは、紛れもない幸運な例だろう。


「さっきは場が悪かったが、俺の話した事は本当だ。」


 パトカーに乗せられる強盗に語る。俯きながらも頷き、俺の言葉に耳を傾けていた。


「全て話すんだ。罪は罪だが、お前さんの心情は分かって貰える。」

「ああ・・・分かったよ。世話を掛けたな、申し訳ない・・・。」


 最後に詫びをする強盗。見計らってパトカーは発進していく。ゼラエルやベロガヅィーブのような極悪ではない。彼なら問題なく罪を償えるだろう。


 俺は手配された救急車に乗り、一応緊急病院へと向かう。銃弾を受けた事には変わりない。いくら俺が大丈夫と言っても、内臓までの衝撃があるかも知れないからな。ここは素直に従うのがいいだろう。




 数時間後。俺は本店レミセンへと戻った。中には騒ぎを知った知人全員が集まっている。入るや否や、エシェラが泣きながら抱き付いてきた。無事だったのは確かだが、今の彼女は非常に辛いものだろう。


「何を・・やってるんですか・・・、一歩間違えれば・・・死んでいたのですよっ!」

「かと言ってあのままじゃ・・・お前が撃たれていたよ。」


 語られた現実を知り、エシェラは黙ってしまう。向けられた銃口は死への誘い。あの一瞬は彼女にとって肝を潰しただろう。


「例え俺が死んでも、お前だけは必ず守る。あの孤児院で落ちた時と同じだ。」

「・・・馬鹿よ・・・大馬鹿よ・・・。」


 大泣きしながら俯くエシェラ。その彼女を抱きしめた。俺のこの命を懸けてでも彼女は守る。それが俺の原点回帰だから。



 落ち着いたエシェラをカウンターに座らせる。今度は3人が俺に駆け寄り、安否を気にして来る。しかし彼女とは異なり、涙ぐみながらも会話だけで済ませてくれた。


「これに助けられたとはねぇ~・・・。」


 エシェラを気遣うヴァルシェヴラーム。彼女に事の次第を語った。発砲現場の証拠品としてプレートと弾丸は押収されたが、現物の写真だけは残してくれた。それを見た彼女は驚いた表情を見せている。


「シェヴさんに助けられたも当然ですよ。」

「運の要素もあるけどね。」


 正確に弾丸がプレートに着弾しなければ、今回のような軽傷にはならなかった。何針か縫合したが、丁度肋骨の1つに当たっていた。当然骨折となったのだが、内臓へのダメージは全くない。間違いなく奇跡としか言いようがなかった。


「君の強運には驚かされっ放しね。」


 紅茶を飲みながら語る。彼女も認める強運、それは俺のもう1つの長所とも言えるだろう。過去この強運に何度も救われてきたのだから。


「俺の生き様がそこにある、ですよ。」

「フフッ、君らしい。」


 運をも生き様と例える俺に、彼女は苦笑いを浮かべた。こういった事はあまり起きて欲しくないが、人を守る事はできたのだ。ここは素直に喜んだ方がいい。




「大丈夫か?!」


 大勢のためカウンターではなくテーブルを囲んで雑談する俺達。ここまでオールスターで揃う事は滅多にない。久し振りの座談会を楽しんだ。


 そこにライディルが入店してくる。慌てて来たのだろう、衣服が調っていなかった。


「お陰様で無事ですよ。」

「驚かせるなよな・・・まったく・・・。」


 泣きながら安否を気にする。普段の男気はどこにいったのか、ライディルは少年のように泣き続けた。


「上官、今回の件は私達にも責任があります・・・。」

「強行突入した際、相手が混乱して発砲したのです。一歩間違えば死者が出たであろう状況でした・・・。」


 ライディルの前へ進み出て、深々と頭を下げるウインドとダークH。先程の一件で自分達が招いた出来事だと詫びだした。


「終わった事をグダグダと掘り返すなよ。現に俺もみんなも無事だ。経緯がどうあれ、結果は勝利したんだ。誇りに思いなよ。」

「彼の言う通りだよ。細かい事を挙げればキリがなくなる。今後どうすれば再犯防止に繋げるか、その考えこそが大切だ。」

「それに2人には感謝している。その場の流れを読んで最小限の行動で彼を捕縛した。普段から訓練を積まなければ、そう簡単にできるものじゃない。偉大だよ。」


 労いの言葉を掛けると、今度はウインドとダークHが泣きだした。彼女達は自分を責めていたのだろうから。


「申し訳ない、直ぐに戻らなくてはいけないので。何かあったら連絡して下さい。」


 間隔空けずに去っていくライディル。何でも会議に間に合うように調整して来たようである。本当に頭が下がる思いだ。




「あの・・・マスター・・・。」

「本当に申し訳ありませんでした・・・。」


 ライディルがいなくなってから、改めて謝りだす2人。心中では納得できていないようで、表情は物凄く暗かった。


「上官命令、悲しむのを止めなさい。」

「「はっ、了解しました!」」


 命令口調に直ぐさま反応するウインドとダークH。それを窺った周りは笑いだした。2人も笑いに当てられ、表情は堅いが笑いだす。


「その顔、もっと大切にしなよ。堅い表情だとその美貌が台無しだ、2人とも可愛いんだから。」

「はい・・・。」

「分かりました・・・。」


 頬を染めながら頷く。俺の冗談とも口説きともの発言だが、2人の心を和ませるには十分なものだろう。


 その後も雑談に明け暮れる一同。現場検証などは後日行うという事で、今は息抜きを満喫した。この面々も俺の大切な家族そのものだ。命を賭けてでも守らねばな・・・。




 時刻は午後10時を回った。ヴァルシェヴラームは帰宅し、ウインドとダークHは駐在所へと戻った。リューアとテュームはリデュアスと一緒に地域巡回を行っている。


「ヴェアちゃんを預かるわ。」

「いいのですか?」


 ヴェアデュラを胸に抱き、徐に語りだすシューム。普段は俺に子育てを優先しろと語ってくるのだが、今日は自ら買って出てきた。


「それよりも大切な事があるでしょう。しっかり面倒見ないとダメよ。」


 そう言いながらエシェラに目配せをしている。それに静かに頷く。ああ、内容は何となく把握できた・・・。


「いい加減覚悟決めなさい。君がした行動は彼女を守った、それは心から愛している証拠。なら成すべき事は1つ、分かった?」

「分かってますよ・・・。」

「いい結果を期待しているわ。」


 語りながら本店レミセンを後にするシューム。彼女が話した内容の意味は十分理解している。俺にその第一線を超えられるか・・・。


「まず始めはエシェラさんね。」

「急かすなよ・・・。」


 ニヤニヤしながら俺を見るシンシア。他のラフィナやエリシェも同じだ。進むべき道はただ1つ。それはエシェラもしっかりと理解している。


「逃げないで下さいね。貴方が今行うべき事は、エシェラ様を支える事です。」

「ああ・・・。」

「一歩前へ出れば、後は欲望のままに動けますよ。」

「何とも・・・。」


 3人とも俺を励まそうとするが、励まし以前の問題だ。だが彼女が望むのなら、それに応えねばならない。


 俺にも必ず選ぶ時が来る、ついにその時が来たようだ。




 本店レミセンの切り盛りをシンシア達に任せ、俺はエシェラと一緒に外に出た。表は幾分か曇っているが、所々から星空を覗かせている。


「あの・・・、無理しなくていいので・・・。」

「自粛したらどつかれるよ。それに今まで控えていた事を取っ払う。覚悟を決めなければならない。」

「・・・はい。」


 この間の気まずさには参る・・・。しかし動くべき時は今なのだ。この瞬間を逃せば、俺は先に進む事を更に渋り続けるだろう。


「明日は休みだっけ?」

「明日は日曜日ですよ。」

「ハハッ、また体内時計が狂ったな。」


 休日はその場の雰囲気で取る自分。それ故に曜日という世間の流れから離れてしまっている。今が普段の日か休日の日か、それも把握できない状態だ。


「少し歩くか。」

「お供します。」


 俺は彼女を誘って夜の街を歩いた。昼間とは変わった風景は別の感覚に浸らせる。土曜の夜とあって、まだまだ賑やかであった。




「お前と知り合って21年か。」


 やはり来るとすれば中央公園だろう。それに今いる場所はエシェラと初めて出会った所。泣き続ける彼女を抱いて、瞬時に泣き止ましたのだ。


「貴方が抱きしめてくれた時も、懐かしい思いになります。」

「生まれて直ぐだったからね。今も憶えているのだろう。」


 意識がハッキリしているのなら、その瞬間から俺を意識しているという事になる。だが彼女は当時0歳だ。それは流石にないだろう。


「実はね・・・貴方と久し振りに会った時、もしかしたらと思ったの。素顔は覆面で隠していたけど、雰囲気は変わらなかった。」


 ベンチに座り一服する。その隣にエシェラが腰を掛けた。噴水の着水と木々が風に揺らぐ音が続くこの場。実に心が癒される。


「それに孤児院で覆面を取ったのを見て分かった。憧れの人とまた逢えたんだって。」

「そうだったのか。」

「・・・今ならハッキリと言える。それに今しか言えない・・・。」


 徐に俺の顔を見つめる。その仕草を感じ、煙草を消した。この場合の喫煙は失礼極まりない。


「・・・貴方が好きです、心から愛しています・・・。」


 精一杯の笑顔と勇気で告白する。彼女にとってはどれだけの力が必要だったのか。俺には到底推測できない。


 言葉は不要だ、俺は彼女を抱きしめた。無言の抱擁、それが俺の彼女に対する応えだ。



「・・・言葉にした方がいいかね。」

「ううん、いいですよ。」


 胸の中で余韻に浸るエシェラ。俺の言葉はしっかりと伝わっているようだ。しかし改めて言う必要はある。俺はそのままの状態で語りだした。


「生まれてこの方、今年で31。恋愛という事は全く疎いが、愛しい人を思うという心は分かっている。」

「うん・・・。」

「お前は精一杯の勇気で応じてくれた。そのお前に俺も応じねば失礼だろう。」


 彼女を抱く手に力が入る。頬を彼女の頭に寄せながら、静かに頭を撫でてあげた。


「エシェラ、大好きだよ。心から愛してる。」


 その言葉に彼女も無言で頷いた。言葉は無用、ただ俺の胸に顔を埋めるだけだった。これほどまでに彼女が愛おしいとは思った事がない。今まで我慢していたのは俺の方だったのかもな。




 お互いの告白が終わると公園を出る。既に義母のシュームには了承済みだ。後は行動するだけ。腕を組みながら俺の自宅へと戻った。


 もう逃げる必要もない。己の想いを全てぶつけるだけだ。それこそ言葉などは不要である。



 その後は言うまでもない、お互いの思いを確認し合い求め合った。というか今も俺は奥手なだけに、ここは彼女にエスコートして貰ったのが実情だが・・・。


 野郎としては情けない事だろうが、経験不足は素直に受け入れた方がいいだろう。


 それよりもエシェラの方は嬉しそうだった。俺と心も身体も通じ合える事に歓喜を感じずにはいられないようだ。もっと簡単に行動できただろうに、俺の奥手な性格を恥じる・・・。



 しかしそれはもう過去の話だ。これからどうするかを考えればいいだけの事だ。それに周りがどう思おうが、3人にもしっかりと心の丈をぶつけた方がいいだろう。


 彼女達に対しての、今までの礼と感謝を愛として伝えるだけだ・・・。


    第2部・第4話へと続く。

 不測の事態を強運で回避し、愛の告白という凄い展開と@@; ちなみに、あちらの描写の話数もありますが、それは機会があったらで><;


 今後は、こういったラブコメ的な流れが多くなります><; 詳細描写があれば・・・(-∞-)

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