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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第1部・恋愛
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第18話 最終話・愛しい人2(通常版)

 本店レミセンを閉店する。その後4人に引っ張られ、向かうはエリシェの家だ。誰もいないという事から選んだのだろう。


 この後の展開が怖くて何も話せずにいる。下手に刺激しては悪影響になりかねない。ここは任せた方がいいのか・・・。それとも言うべきか・・・。



「一緒に寝るってツーリング以来かな。」

「ですね。」


 エリシェの家には複数の部屋がある。その中の寝室には、怖ろしいほどの馬鹿でかいベッドがあった。普段はここで1人で寝ているというのだ。何だか可哀想に思える・・・。


「・・・あの、やっぱ止めましょうか?」


 何を喋ろうか思いを巡らしている。それがかえって逆効果になってしまった。俺を困らせていると勘違いしたエシェラが、不安そうに問い掛けてきた。


「あ・・いや・・・。」

「勢いで言ってしまったので、無視して貰っても構いませんから・・・。」


 声を聞けて安心している彼女だが、表情を見れば落ち込んでいるのが分かる。だが、今の俺には厳しい問題だ。応えてあげたいが・・・。


「・・・本当に添い寝だけでいいのなら構わないが。今お前さん達が望んでいるのは、それ以上の事なのだろう。応えてあげたいが、流石の俺もそこまでの勇気はない。」


 心の内を、本当の事を語った。それに沈黙する4人。そもそも1人だけなら応じれるが、4人という時点で論外だ。それが通れば、彼女達を不幸にする事になる。


「・・・ごめんな、これが現実だ。」


 そのままバルコニーへと出て一服する。嫌な言い回しだったが、事実なのだから仕方がない。彼女達を不幸には絶対にしない。それが俺の断固たる決意だ。




(自分に素直なままで。私の望むものよ、それに貴方自身の為でもね。)


 脳裏にヴァルシェヴラームの言葉が過ぎる。素直な自分、それは不幸にしないという事に繋がらないのか。それとも不幸にしてしまうという事を言い訳に、逃げているだけに過ぎないのか・・・。


「・・・俺は逃げているだけに過ぎないのですかね・・・。」

(自分自身の生き様を貫きなさい。最終判断は貴方自身だから。)

「・・・俺にどうしろというのです、シェヴさん・・・。」

(それは貴方自身で決めなさい。私は背中を押しただけ。)

「・・・それがどんな道であってもですか・・・。」

(大丈夫よ、貴方は既に答えを見つけている・・・。)


 自問自答を繰り返す。正確にはヴァルシェヴラームという人物を形作った俺自身が、自分に問い質していると言おうか。




「大丈夫?」


 不意に声を掛けられ驚く。傍らには何時の間にか4人がいた。不安そうな表情を浮かべ、俺を見つめている。


「億劫になるのでしたら気にしないで下さい・・・。」

「私達が望むのは貴方の幸せです。でも私達の望む幸せが貴方の不幸になるのなら、今後は絶対に言いません。」

「ごめんなさい、貴方の事を考えずに・・・。」

「忘れて下さい。悲しむ貴方の姿を見たくありませんから。」


 悲しませてしまったのは俺の方だ。4人が冗談半分と本気半分で語ったのは明々白々。その彼女達を蹴ったも当然の事をしたのだ。


「・・・俺は情けない奴だ。お前さん達が本当に望んでいる事も知っている。しかし世間の目を怖れ、自分自身を押し殺す。モラル的には当たり前の事を言ったのだが、君達を傷付けてしまったね・・・。」

「そんな事ありませんよ、私達が間違っていただけです。貴方の考えは正しい。」


 俺を擁護する発言だが、今は苦痛にしか感じられない。心から愛しいと思うのなら、世間体の柵など論外とも言える。用はそこまで決意できるかどうかだ。


「・・・添い寝で勘弁してくれ。」


 その言葉に4人は頷く。今現在できる最大限の行動だ。これしか今の俺には思い付かない。いや、実行できないのが正しい。




「こんな布団で眠ってみたかったぁ~。」


 ベッドの上で子供のようにはしゃぐシンシア。普段から使う下位の部屋にも同じものがあるだろうに。そう言えば着るパジャマは自前か。ここに来る時は何も持っていなかったが。


「パジャマも用意とは、前々からやる気満々だったという事か。」

「これはエリシェさんのですよ。本当にこうなるとまでは予想していなかったので。」

「はぁ・・・、つまり半分は俺にも責任があるという事か・・・。」


 4人ともパジャマを着込んでいる。俺はというとエリシェの父親のものを使わせて貰った。少々小さいが、間に合わせには十分だろう。それに自分にも原因があるという事で、罪悪感が薄らいだ気がした。


「あくまで添い寝というだけでいいよな?」

「構いませんよ。これ以上我が侭を言えばバチが当たりますから。」

「一時の安らぎを頂ける事で、どれだけ励みになるか。」

「十分すぎるほどの癒しです。」


 そうか、3年の長い月日は淋しかったのだろう。言葉はタブー気味たるものだが、4人が本当に望むのは癒しの時間なのだ。それを意識しすぎて暴走したのは俺の方だったな・・・。




 俺は後頭部にある覆面の留めを外す。そして徐に覆面を取り外した。前髪を振り払い、素顔を曝け出す。


 一部始終を窺っていた4人は今までにないほど驚いている。特にエシェラ以外は俺の素顔を一度も見ていない。完全に声を失っていた。


「添い寝だけで勘弁してくれたお礼だよ。」


 俺の素顔を見つめ、ラフィナ・エリシェ・シンシアは顔を赤くしている。そんなに美男子じゃないのだが・・・。一度目撃しているエシェラも顔を赤くしていた。何とも・・・。


「あぁ・・・想像していた通りの顔・・・。」

「よく見ると本当に懐かしい・・・、あの時から全く変わってないですね。」

「ディルみたいに美男子じゃないがね。」

「そんな事ありません、私の中では最高です・・・。」

「もっとよく素顔を見せて頂けませんか・・・。」


 マジマジと俺の顔を見入る4人。これはこれで恥ずかしいのだが・・・。まあ添い寝と素顔で勘弁して貰ったのだから、ここは身を委ねるしかない。



「あの・・素顔でキスしてくれませんか?」

「ずる~いっ!」

「私も・・お願いします・・・。」

「私も真剣にお願いしようかな。」


 早速バトル開始だ。エラい騒ぎになりだし、仕舞いには枕投げにへと発展していった。結局の所は騒ぎたかっただけなのだろう。何だかなぁ・・・。


 そんな彼女達を見つめながら、俺は心中で礼を述べた。何だかんだで4人の笑顔を見ている時が一番幸せだと気が付いたからだ。


 俺の故郷は彼女達がいる場所なのだ。それを改めて気付かせてくれた・・・。




 不意に俺の顔に枕が当たる。その勢いは結構強く、そのままベッドへと倒れ込んだ。それを見た4人は一瞬止まる・・・。


「・・・こらぁ~!」


 起き上がりながら軽い激怒をすると4人は軽い悲鳴を挙げる。顔に当たった枕を彼女達に投げ返し、逆に相手からも枕が投げられる。


 更には肉弾戦にまで発展していき、相手を捕まえ擽るまでになった。俺には積極的に捕まりには来ない。というか彼女達は触られたくてウズウズしているのではないかね・・・。


 まあ・・・もういいわ、今夜はトコトン付き合おう・・・。



 今も騒ぎまくっている4人に便乗して俺も騒ぐ。だが心では深く溜め息を付いた。この4人の面倒はとにかく参る・・・。でもまあ、偶にはいいものだな・・・。




 エシェラ・ラフィナ・エリシェ・シンシア、俺の大切な愛しい人・・・。


 この4人を守り抜いてこそ、俺の本当の生き様なのだろう。それこそが俺の原点回帰なのだから・・・。


    第1部・完

 第1部の最後は枕投げと@@; あと、覆面を取り除いた素顔曝しの初めての話ですか@@; ただ、4人に向かって正面を向いているため、実際にはこちらからは素顔は見えない設定ですが(何@@; ともあれ、これで第1部が終了です。第2部以降からが、実質的な本番となりますので。今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

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