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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第1部・恋愛
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第14話 クリスマス1(キャラ名版)

 気節はすっかり冬だ。12月を回り、町並みはクリスマス色に染まっていく。特に下旬ともなると、より一層色濃くなっていった。



 エリシェが企画して打ち出したクリスマスパーティー。区民ホールを貸し切っての大規模なイベントだ。小中高大の生徒全員が出席するとあり、大盛り上がりである。


 特に大規模なイベントがあると、秘密の花園とされる女子高に触れられる。ここぞとばかりに群がる男子生徒達。野郎の性は悲しいものだ・・・。



 それでも何らかの目標を持つ人物は生き生きしている。それが些細な事であっても、目標を持つか持たないかでは雲泥の差だ。


 ここは素直にその瞬間を楽しんで貰いたいもの。人生とはこういった事の繰り返しが実情なのだから。




 12月初旬に調理師免許を取得できた。兼ねてから勉強し続けていたのが実った事になる。実はこれは色々な事情があって取得できたものである。


 本来なら飲食店などで2年間の修行後に取得が許されるのだが、既に7年間の外部の修行が許されての取得となった。風来坊での活躍期間が認められたと言ってもいい。



 これも裏ではトーマスCが根回しをしてくれたようで、長期間掛かる所が短時間で終わったのだ。これは完全に不正取得に近い・・・。


 まあ8年前から数々の飲食店での修行はこなしてきた。経験がゼロという事ではないから、こういった事が罷り通ったのだろう。


 それにトーマスCは初めて会った時の俺のウェイター役を見た瞬間、その経験年数がかなり高いと直感した様子である。これも取得が最短で済んだ意味合いである。



 ちなみにシンシアは4年前から飲食店を中心に修行していたようで、既に調理師免許は取得している。この場合は彼女の方が先輩であろうか。


 それを告げたらエラい怒ってたわ。俺の事を超えるのは不可能だと痛烈に語っていたな。そんなに凄い奴じゃないんだが・・・う~む・・・。




 調理師免許取得後、俺は初めて今までの見様見真似で料理を作る。ところが思いの他簡単にできてしまったのには驚いた。


 彼女に味見をして貰っているが、全て平らげてしまうほどの美味さらしい。何だかなぁ。それだけ過去の経験が役立っている証拠だろう。


シンシア「やればできるじゃないですか~!」

ミスターT「これで一応はマスターとして動けるよな。」

シンシア「頼りにしてますっ!」


 自分の事のように喜んでいるシンシア。そんなに嬉しいのか・・・。まあ見ているこちらの方も嬉しくなるが・・・。何とも・・・。


 しかし感情の起伏が激しい彼女。喜んだり怒ったり泣いたり、これこそ本当の意味での人間と言えるのだろうな。ある意味見習わねばならない。




 そうそう、更にもう1店舗増やす形になったレミセン。今度は駅ビルの中に店舗を構えた。ここにはデュリアとメルデュラが担当し、サポートにシンシアRとシェイナが就いている。


 4つある店舗の中で一番大きく、4人が担当しても足りないぐらいまでだ。本当に足りない場合は他の店舗から応援を寄越す形で補うという。



 結局の所、本店レミセンは俺とシンシアが担当する事になった。男子マスター禁制の喫茶店という打ち出しをしたのにも関わらず、俺が担当するのは如何なものかと・・・。


 まあ総合マスターという位置付けから、ここに居座っても問題なさそうではあるが・・・。また俺と共闘できる喜びを身体で表現しているシンシアには驚きである・・・。




 クリスマスパーティーの当日。打ち出しの再確認をしたいという事で、本店レミセンへと訪れた4人。


 またエリシェがサプライズゲストを採用した。というか今回は学生としての参加である。その人物はエシェラの従姉妹、エシュリオスとエフィーシュだ。


ミスターT「今回もサプライズゲストという訳か。」

エシュリオス「私達が通う高校は違うのですが、制服はこちらの女子高のを使わさせて頂きます。」

エフィーシュ「エリシェ様の発案で、親近感を持たせるためのようです。」


 確かにそうだ。テレビで映る双子はアイドルの衣装で、どう見ても次元が違う存在。また母校の制服は全く異なり、これも他校の生徒と思われる。一番いい方法がエシェラ達と同じ学校の制服の着用。これなら親近感が沸くというものだ。


ラフィナ「エシェラさんより年下なのに、雰囲気が大人になりましたね。決して形作っているものではなさそうなのに。」


 文化祭後によくテレビで見る双子は、今まで以上に大人びいている。それは今までは背伸びをして形作っていたが、今は大人の雰囲気が色濃く出ていた。


 それでいて偶に見せる本当の幼さの部分が、彼女達をより一層アイドルへ押し進めている。前以上にファンが増えたと言うのも頷けた。


エシュリオス「お兄さんに背中を押して貰ったお陰です。」

エフィーシュ「何も考えずに我武者羅に突き進めと。」


 ニコニコしながら語る双子。流石はエシェラの従姉妹だ。肝っ玉が据わりだしている。いや、既に据わっているのを不動にしてあげたというべきか。




エシュリオス「今年16で都心の高校に通っていますが、大学はこちらに来ようと思います。」

ミスターT「アイドルが地方の大学に来ても仕方がなかろうに。」

エフィーシュ「いいえ、自分が進むべき道を進むだけです。お兄さんが仰ってたじゃないですか。」


 紅茶を上品に飲む。外見の身嗜みは徹底的に教え込まれている。しかしそれに溺れる事なく自分流のスタイルも兼ね備えている。流石としか言いようがない。


 その中で将来への布石を語る。進学はするそうだが、有名大学ではなく俺の地元の大学へ来るという。まあ彼女達がそうしたいのなら、何も言うべきではないが・・・。


ミスターT「リシューナ達は普通の大学生だっけ?」

エフィーシュ「高卒後に芸能界へデビューしています。私達より後の進出ですが、人気は4人の方が遥かに高いので。」

ミスターT「まあ優劣を考える必要なんかない。心こそ大切なれ、それで十分だ。進むという決意があれば、自分自身に負ける事など一切ないから。」


 自分に何度も言い聞かせている言葉、そして恩師ヴァルシェヴラームが口癖のように語ってくれた言葉でもある。


 周りがどうこうではなく自分自身がどうあるべきか。それこそが人として本当の生き方だ。いや、生き様を刻む大切な信念と執念とも言うべきか。まあ俺流の解釈の仕方だがな。


エシュリオス「エシェラ姉さんが惚れる訳ですね。」

エフィーシュ「私もその気になってしまいました。」


 また変な解釈の仕方を・・・、まあいいか・・・。彼女達の励みになれば、これほど喜ばしい事などない。そこに恋愛などが結び付こうとも、本当の心は更に純然としている筈なのだから。


 というかそうでなければ、激励の度に惚れられる。それはそれで非常に困るのだが・・・。


エシェラ「エフィーシュちゃ~ん、それはどういう意味かなぁ~。」

エフィーシュ「え・・え・え~と・・・。」


 告白気味た事を語るエフィーシュ、その彼女にからかい半分で迫るエシェラ。その威圧的な雰囲気に青褪めている。何とも・・・。


 まあ姉妹同士の戯言は見ていて飽きない。それに羨ましい限りである・・・。




ミスターT「これはささやかなクリスマスプレゼントだよ。」


 スケッチブックに書いた2枚の絵を取り出す。それぞれをエシュリオスとエフィーシュに手渡した。


 描かれた絵を見て双子は驚愕している。周りの4人も覗き見るが、同じく驚愕していた。


ミスターT「エシュリオスのは強い決意を表した。双子で高みへの階段を駆け上がる、その決意を歌と踊りに表す姿を書いてみた。」


 エシュリオスが持つ絵には、ドレスを身に纏った2人がマイクを片手に踊る様子を描いた。幼さがある姿と踊りとは裏腹に、その4つの眼はどこまでも純粋に前を見据えている。


ミスターT「エフィーシュのは強い姉妹愛を表した。血を分けた姉妹の、お互いを思い遣る心を。少し難しかったが、何とかものにできたよ。」


 エフィーシュが持つ絵には、普段着を身に纏った2人が笑い合う姿を描いた。こちらも幼い姿を醸し出しているが、それでも微笑む表情には強い力を感じる。間違いなく大人の力だ。


ミスターT「4人にも書いたのがあるが、それは後で渡すよ。」


 何も言わずに見惚れる6人。絵を凝視し、まるで吸い込まれたかのように見つめている。俺の渾身の力作が十分すぎるものなのだろう。嬉しい限りである。


エシュリオス「・・・ありがとう・・・。」

エフィーシュ「・・・宝物にします・・・。」


 涙を流して礼を述べる。エシュリオスとエフィーシュにも、いいプレゼントになるだろう。まさか趣味程度でやっていた絵が、ここまで人に役立てるとは。不思議なものだな・・・。




 その後6人はクリスマスパーティーの会場である区民ホールへと向かう。今回は学生服での出席である。周りと違和感なく合わせるという配慮だ。


 俺は賑やかな場所が苦手だと再三述べている。また本店レミセンの管理も担わなければならない。という理由から、留守番である。正直な話、1人でいる方が気が楽だ・・・。



 この時間帯には珍しく、お客さんの方はボチボチといった雰囲気だ。この流れなら1人でも充分担えるだろう。


 料理の作成に勤しんだ数日は確かな結果として現れてもいる。シンシアに味見というか毒見をして貰っての調理実習だ。彼女にも大変感謝している。




ヴァルシェヴラーム「こんばんは、お久し振りね。」


 不意の来訪者が訪れる。孤児院でお世話になった恩師、ヴァルシェヴラームだ。ここの情報はエシェラに聞いたのだろうか。俺が話した記憶は一切ないので十分に予想できた。


ミスターT「態々おいで下されたのですか。」

ヴァルシェヴラーム「エシェラさんの頼みよ。1人で心細いと思ったのでしょう。」


 予想通りだ。エシェラが彼女に連絡し、俺の為に行動してくれたという。そう言えばあれから2人は仲が良くなったとも聞いている。まるで母娘のようだな。


ミスターT「何か食べますか?」

ヴァルシェヴラーム「エシェラさんからサンドイッチとシチューが美味しいと聞いてるわ。それをお願いしようかしら。」


 カウンターに座った所を見計らって、注文を聞き出した。それに間隔空けずに語る彼女。エシェラから聞いていたのだろう、俺が一番得意としている2つの品を挙げだした。


ミスターT「俺流なので美味しいかどうかは分かりませんよ。」

ヴァルシェヴラーム「馬鹿ね、貴方が作るから美味しいんじゃないの。」

ミスターT「ハハッ、分かりました。」


 一応我流での作りなので、実際に美味いかどうかは人それぞれだ。しかし彼女はそれを覆す発言をしだした。


 この人には頭が上がらない。厳しい発言の中にも優しさがあり、かといって真逆のパターンも存在する。つまりは予測不可能という事だ。流石は俺の恩師だな・・・。



 暫くして会計を済ませたいお客さんがレジに来る。丁度俺は調理中で手が離せなかった。それを察知したヴァルシェヴラーム、何とお客さんの対応をしてくれた。


 これは立派な臨時のウェイトレスだ。機転溢れる行動に感謝するしかない。流石は孤児院の覇者である。


    第14話・2へ続く。

 風来坊では絵心があるミスターT君。警護者側シリーズはそれがなく、手帳に各ネタを留める程度ですが@@; まあ、警護者側ではオールスター状態なので、周りが強者ばかりですからね><; 確かに主人公視点ですが、むしろ周りあっての彼でしょう。これは今の自分にも当てはまるので、とにかく周りへの感謝を決して忘れずに有り続けたいですm(_ _)m

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