第9話 体育祭1(通常版)
9月下旬。気節は秋へと変わっていく。紅葉が実に美しい、公園の散歩が楽しいものだ。それに食欲の秋と題するだけに、自分も含めた食事摂取量が半端じゃない。
あのツーリングで俺達の団結力は凄まじいまでに高まった。もはや俺達は兄妹、家族そのものだろう。
エシェラとラフィナは大型自動二輪免許取得に走った。あの一時が印象深いようで、今度は俺を後ろに乗せて走りたいと言っている。まあ実際に2人乗りができるようになるのは、免許取得後1年以上は必要なのだが・・・。
というかエシェラとラフィナはエリシェに資金前借りで取得に奔走している。これには実に呆れるが、彼女達の生き様に感銘を受けたのだろう。
家族は免許取得に反対せずに応じたという。素晴らしい事である。まあ2人の事だ、無理矢理にでも押し通すのは目に見えているが・・・。
エリシェは年齢的にまだ免許は無理だが、後々必ず取ると豪語している。彼女の事だ、必ず取得するだろう。
最近は本店喫茶店は俺とシンシアとで切り盛りしている。トーマスCは再び本業であったシークレットサービスに戻った。とはいっても命懸けの戦いとまではならない。警備に近いと言うべきか。どうやら俺達の変わり様に感銘を受け、それにより再行動したようだ。
店舗も更に拡大した。今度は公園前と高校前。特に公園前は今までの店舗よりかなり巨大なものとなる。
人員の配置はこうだ。
駅前にエイラとエリムス、大学前にリタナーシュとネアリム。公園前にリーアとフェリカ、高校前にシュピナーとラフィア。エイラ達はプロ級の腕前を持つ調理師になり、その彼女達を支えるのが四つ子である。
エイラ達は予てから考えていた本職を喫茶店の運営にした。これも俺達の生き様に感銘したからだそうだ。その4人に感銘しているのが四つ子、言わば師弟関係だろう。実に素晴らしい事だ。
「そう言えば、喫茶店の名前って何なのでしょうか。」
「む・・・そう言えばそうだな・・・。」
シンシア手料理の昼食を取る俺にシンシアが語る。本店と各4店舗には名前がない状態が続いている。今の今まで“風来坊の店”や“巨乳姉ちゃんの店”などと言われていた・・・。ここらで明確に定める必要があるだろう。
「・・・これしか思い浮かばない。」
俺はナプキンを広げ、近くにあったサインペンを手に取り走らせる。それを真剣な表情で見つめるシンシア。
喫茶店、“The Reminiscence”(ザ・レミニッセンス)。
「おお~、思った通りでした。」
「俺達の生き様の回帰はここ、レミニッセンス。それ以外考えられない。」
「流石師匠~。」
最近シンシアは俺の事を師匠と呼ぶようになる。他の店舗を担当する面々が師弟関係に近い事から、こうなったのだろうと推測できる。それはともかく、喫茶店名は決まりだろう。
「いいですかね?」
「反対するつもりはないよ。君達に全権を任せたんだ、好きなようにしてくれ。」
表のウインドウや看板にザ・レミニッセンスの文字を掲げる。これは同時に4店舗全部だ。言わばこの瞬間が、この喫茶店のオープンともなる。
「スポンサー役は任せて下さい。いっその事、全国展開してみては?」
「ハハッ、それも面白そうですね。」
これは近々実現するだろう。俺達の執念と力があれば間違いない。だが今は身の回りを確固たるものにするのが先決だろう。
「そうだ、躯屡聖堕チームと合併するという手段もありますよ。」
「まてまて、そこまで飛躍させてどうするんだ・・・。」
「先走りすぎましたね、エヘヘッ。」
申し訳なさそうに舌を出して謝る。だが彼女の事だ、これは何れ実現させるだろう。う~む、どうなる事やら・・・。
「そろそろ体育祭じゃなかったか?」
「はい。来週の日曜日に開催されます。町内の小中高大の一斉体育祭ですね。」
「運営側も大変だな・・・。」
ナツミYUも最近、学園の運営方針を変えてきている。大きなイベントを一括して行おうというものだ。まあ彼女が4つの学校の校長を担っているからできる事であり、普通考えれば無理難題だ。特に人員の統率力が著しく低下もする。
「そこは躯屡聖堕チームの出番ですよ。」
彼女の言う通り、躯屡聖堕チームを運営に使うというのだ。統率力と団結力が凄まじい彼らなら、この無理難題をやってのけるだろう。
「全く以て策士だな・・・。」
「貴方のお陰です。」
「ハハッ、ありがとな。」
些細な変革から巨大なうねりを巻き起こし大変革をもたらす。正しくその通りだろう。特に中心者に彼女がいれば、達成できない事など絶対にない。
体育祭の準備が進む4校。人員は日本中の手が空いている躯屡聖堕チームを派遣した。
ボランティアチームでもあるが、最近は派遣チームとしても活躍している。その規模から派遣会社としても充分成り立っていた。
また面白い事に躯屡聖堕チームに入隊したいという人物が数多く現れる。入隊という言葉は元暴走族の発祥だ。その人の為に尽くすという運営方針は大絶賛で、徐々に賛同する人が多くなっている。
本線はボランティアチーム、または派遣チームとなる躯屡聖堕。スポンサーが世界最強の大企業・三島ジェネカンだけに、サポートは万全の状態である。
あくまでもボランティアと位置付けるのは、これが仕事屋ではないという現れだ。言わば躯屡聖堕チームは、人々を幸せにするために動く事を大願とした志願者の集まりなのだ。この本質を忘れてしまっては、本来の在るべき姿はなくなる。それは火を見るより明らかだ。
アマギHとユリコYの肩には、凄まじいまでの責任と使命が圧し掛かっている。その彼らを陰で支えるのが俺の役目だ。一生涯を掛けて・・・。
躯屡聖堕チームの存在。それはもはや単なるボランティアチームではなくなりつつある。
それから数日後、大規模な体育祭が催された。小中高大と合同で行う事になったこれは、その規模といい凄まじいものだ。
エシェラ・ラフィナ・エリシェも学生なので、体育祭に参加する事になる。俺とシンシアだけが暇を持て余す事になるが・・・。
「朝から忙しそうですよ。」
体育祭に関係する人物、生徒・保護者・運営側・そして観戦側。この時だけは喫茶店は全く訪れない。実に暇である。
「臨時休業して見に行くかね。」
「あ、大丈夫そうですよ。トーマスCさんも予測していたそうで、応援に駆け付けてくれるそうです。」
「恐れ入るなぁ・・・。」
噂をすれば何とやら、暫くしてトーマスCとトーマスKが訪れた。今日だけは仕事を休み、こちらに専念してくれるとの事だ。
トーマスCとトーマスKに後を任せて、俺とシンシアは体育祭を見に行く。俺達は保護者側として観戦する事になる、実に不思議な気分だ。
時間の都合上、プログラムはかなり短縮されている。しかし目玉と言えるリレーなどは据え置きで、それを上手く噛み合わせているようだ。
小中高大となれば1000人以上の規模。このような措置を取らないと、絶対に1日では終わらない。多くの出店も揃っており、もはや大規模な祭りそのものだ。小学生達は大喜びしている。
「あ~、お兄ちゃ~ん!」
「こんちわ、リュリア君。」
体育着姿のリュリアを発見。幼い外見にブルマ姿、これはこれで可愛い。そんな俺を窺ったシンシアの顔が、何時になく引きつっている。何とも・・・。
「これからリレーだよ~。」
「分かった、頑張れよ。」
「応援してねぇ~!」
そう言うと校庭へと向かう。俺にもあのぐらいの子供がいてもおかしくないのだろう。毎日が大変そうだが、毎日が癒しの連続だろうな。
暫くしてリュリアが走るリレーが始まる。体育祭最初の競技のようだ。どの子も負けじと全力疾走している。
リュリアはというと、何と圧倒的大差で1位を勝ち取った。我武者羅に突き進んだと言っていいだろうか。
まあ母親は肝っ玉が据わっているシュームだ。その血筋を受け継いでいると言えるかな。しかも怖ろしいほどに・・・。
「いらっしゃってたのですか。」
「一応保護者だからな。」
中学生リレーは該当者はいない。高校生リレーにエシェラとエリシェが属している。彼女達も体育着姿が冴える。ボーイッシュな雰囲気のエシェラに、お淑やかな雰囲気のエリシェ。どちらも実に可愛い。そしてシンシアに睨まれるのはご愛嬌か・・・。
「エシェツのリレー、見てくれました?」
「うわっちゃ~・・・エシェツ君は中学生だったか・・・。」
「何やってるのよ~、もう~・・・。」
エシェラの妹、エシェツはまだ中学生。該当者はいないと思っていたが、彼女がそうだったとは。悪い事をしてしまった・・・。
「大丈夫ですよ。エシェツ様の勇姿をビデオカメラに収めましたので。後でしっかりと見てあげて下さい。」
しっかりしてるよなぁ・・・、本当にエリシェには脱帽する。というか別途お手伝いさんがいるようで、その方々に撮影をお願いした様子である。
「時間だよ、行こうエリシェさん。」
「よそ見しないで下さいね。」
念を押して去っていく。もし見なかった場合、怖ろしい竹箆返しが待ち構えているだろう。無意識に背筋に寒けが走る・・・。
高校生ともなると、パワー溢れる競技が展開される。大人の階段を登りだしているためだ。パワー漲る彼らの競技は凄まじいものであろう。
それに合同体育祭の高校生部門は全員が女子学生。これを見たいがために、凄まじい野郎共が集まってもいた。そうだよな、女子高だけに一般公開はしないだろうし。
エシェラもエリシェも圧倒的な大差で1位になる。格闘技に精通しているため、ここぞという時に本領発揮するのだろう。一番の理由は俺が見ているからだろうが、何とも・・・。
「あ、来てくれたのですね。」
「君の部門で午前の部が終わるようだね。」
最後は大学生リレー。こちらは小中と同じく男女混同だ。体育着が引き締まるラフィナ。特にスタイルがいい彼女の事、実に胸が強調されている。物凄い嬉しい事この上ないのだが、今度は殺気まで放ちだしているシンシア。嫉妬心剥き出しだ、怖ろしい・・・。
「貴方のために1位を掴みます、見ていて下さい。」
そう言うと校庭へと向かって行く。彼女の恋する乙女の決意ならば、間違いなく勝ち取るだろう。それよりも背後にいるシンシアをどうにかしてくれ。今まで以上にギラついた殺気が怖すぎる・・・。
リレーは凄まじい展開になった。特に男子と女子での切磋琢磨された展開は、今までにないほどの熱気である。宣言通り1位を勝ち取ったラフィナ、それも圧倒的大差だ。凄まじい。
だが他の生徒達も凄まじく強かった。特に大学で大人気という男子学生が群を抜いている。その爽やかな笑顔は周りを虜にしているようだ。
む・・・。その人気男子学生、何処かで見た事があるような・・・。
第9話・2へ続く。
体育祭の元ネタは、ときめきメモリアルのアレです@@; 懐かしいですわ(>∞<) ただ、リアルの方は身体を動かすのが苦手だったので、とにかく苦痛の何ものでもありませんでしたがねq(*血*)p ちなみに、ブルマ姿は元祖といった感じです、はい(何@@;