表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第1部・恋愛
28/280

第7話 海水浴2(キャラ名版)

 彼女の傍にある柱に寄り掛かり一服。そして一時の相手になった。隣に座ろうものなら、エシェラ達に要らぬ嫉妬心を向けられるだろうから。


 まあ本心はサボってると思われて、減俸されたら可哀想だと踏んでの事。何気ない雰囲気で接するのが一番いいだろう。


ミスターT「なるほど、家計の足しにか。偉いな。」

シンシア「今週には引っ越すので、それまでにはある程度欲しいかなと思ってます。」

ミスターT「そうか、あまり無理無茶しないように。」


 彼女の境遇は俺と同じ孤児。今は駅前の弁当屋で住み込みで働いているそうだ。ある程度資金が手に入り、それで新たな天地へと向かうのだという。何となく風来坊に近い。


シンシア「何かお兄さんと会えたの、偶然じゃない気がする。」

ミスターT「ハハッ、気のせいだよ。」

シンシア「ううん、きっとそう。こんなに胸がドキドキした事ないもの。」


 何だかなぁ・・・。まあでも、彼女に一時の思い出をプレゼントできたのは光栄だろうな。それに風来坊に近い性質なら、一時の思い出は何よりも大切にさせてあげたい。俺が風来坊で生き続けていたからよく分かる。


ミスターT「絶対に自分自身に負けるなよ。」

シンシア「ありがとう、頑張るよ。」


 笑顔で微笑む彼女、その表情を見るとこちらも嬉しくなる。彼女にはこれからも頑張って欲しいものだ。その背中を押せた事に誇りに思う。



ミスターT「む・・・、みんなが呼んでる。」

シンシア「うん、ありがとね~。」


 遠くで俺を呼ぶ3人。シンシアに別れを告げ、彼女達の元へと向かった。シンシアも一緒に遊べたらいいのに。可哀想だ・・・。




ミスターT「どしたん?」

エシェラ「いやさ、一緒に泳がないのかなって。」

エリシェ「ミスターT様は多分、泳げないと思います。」

ミスターT「あら・・・気付かれてたか・・・。」


 抜け目がないとはこの事だ。どうやら海を見る目が引いている事を察知しているようだ。凄い洞察力だが、逆を言えば監視されていると言えるか・・・。


ミスターT「俺の事は気にせず遊んできなよ。」

ラフィナ「後でサンオイル塗って下さいね~。」

ミスターT「じ・・自分達で塗りなさい。」

エシェラ「またまた~、本当は嬉しいんでしょ~。」


 この3人のペースには実に参り気味だ。いいように弄ばれている気がしてならない・・・。それに身体が濡れてより一層色っぽくなる3人を直視できない。それを彼女達は分かっていて接しているのだろう。何ともまあ・・・。


 再び海に向かう3人。俺は近くの砂場に座り一服をする。海の家の方を見ると忙しくなったのか、慌ただしく動き回るシンシアがいる。負けずに頑張れよ・・・。




 結局サンオイルを塗る羽目になった。実は嬉しいのだが、どうも奥手が目立つ。こういった事の経験のなさが悔やまれる。


 先にエシェラとラフィナを塗り終え、最後はエリシェに塗る。先の2人は気持ちよさそうに眠っていた。人の気も知らないで・・・。


エリシェ「何か気になる事でも?」

ミスターT「あ、いや・・・。」

エリシェ「相談に乗れる事なら何でも乗ります。遠慮しないで仰って下さい。」


 実に鋭い、俺の深層に思う感情を察知された。エリシェは対人話術などに長けるのかも知れない。だから三島ジェネカンを引っ張るほどの実力を持っているのだろうから。


ミスターT「明日には帰るんだっけ?」

エリシェ「はい。宿泊は1泊2日の日程で考えました。それにナツミYU様が仰るには、近々学校全体で交流教室という企画を打ち出すとか。その打ち合わせに出席しますので。」

ミスターT「交流教室か・・・。」


 彼女が語るには、小中高大のクラスをそのまま移動させるといった凄まじい計画だった。というか小学生が大学生とトレードしても、話の内容に付いて行けるのかね・・・。


エリシェ「できましたら・・・、私のサポートをして欲しいのですが・・・。」

ミスターT「ふむ・・・。まあ帰ってから考えよう、今はこっちを楽しまなければね。」

エリシェ「はい、分かりました・・・。」


 う~む、この美丈夫の肩には凄まじい重圧が掛かっている。それを少しでも支えられれば、どれだけ楽になる事か・・・。


エリシェ「・・・あっ・・・く・・くすぐったいです・・・。」

ミスターT「わ・・わりぃ・・・。」


 肩から間違って脇の部分を触ってしまい、くすぐったそうにするエリシェ。まあ何だ、スゲー嬉しいには変わりないが・・・。野郎の性は悲しい・・・。




 夜になる前にホテルへと引き上げる。汗をかいた身体を巨大風呂で流した。流石に混浴ではない。それに例え誘われても断る。本心は実に嬉しいが・・・。


 娯楽施設も完備しているここには、コインで楽しむカジノもある。無論金銭が絡むものではなく、息抜きに近いものだ。



 卓球台を目撃したエシェラは、ラフィナとエリシェ相手に試合を展開している。反射神経が強い3人、凄まじい試合に周りを驚かせている。


 3人と言ったが、それにはエリシェも含まれる。彼女は何とフェンシングと剣道を極めるまでに至っていた。まあプロには遠く及ばないが、俺からすれば充分強いだろう。反射神経の強さも充分頷ける。



 俺はというと、パチンコ台があったので勤しんでいる。これが本当に換金できれば最高なのだが、遊び程度にした方が無難だな。




 時間は夜の12時を回っている。遊びすぎて時間を忘れるほど楽しめた。激闘を繰り返した3人はグロッキー状態だ。夜食を取った後に部屋へ戻り、そのまま深い眠りに入っている。頑張りすぎだよ、まったく・・・。


ミスターT「また煙草がない・・・。」


 バルコニーに出て一服しようとしたが、またまた煙草がない事に気が付く。確かパチンコをやってる時にエラい吸ってたのを思い出す。手持ちの煙草を全て吸っていたからなぁ・・・。この時間だと近くのコンビニが一番手っ取り早いか。




 表は海風に吹かれ凄い涼しい。バルコニーでもそうだったが、夜の風は最高にいいな。近くのコンビニに行き、煙草を買った。深夜での煙草購入は身分証明書の提示を催促される場合がある。幸いにも俺の体格から疑われる事はなかったが。



シンシア「あ、お兄さん。こんばんは。」


 一服しながら海岸を歩く。昼間は人でごった返していたが、夜ともなると殆どいない。偶にカップルがいちゃついているが、それは黙認しよう。


 突然声を掛けられ驚くが、その声には聞き覚えがあった。昼間会ったシンシアだ。


ミスターT「よう、散歩かい?」

シンシア「はい、何だか眠れなくて・・・。」

ミスターT「なら少し付き合うか。」

シンシア「あ・・はい・・・、ありがとう・・・。」


 人気が少ない海岸を歩く。波が押し寄せる音だけがするこの場、心が洗われるようだ。無言で歩き続ける俺とシンシア。何も話さなくても心が通えるようだ。



シンシア「明日・・・出発します。」

ミスターT「そうか、今までお疲れ様。コーヒー美味しかったよ。」


 不意に抱き付いてくるシンシア。一瞬何だと焦ったが直ぐにその心境が分かる。俺もソッと彼女を抱き締めた。


シンシア「・・・やはりお兄さんに運命を感じる、最後に・・お会いできてよかった・・・。」

ミスターT「フフッ、ありがとな。」


 表には出していないが、心では怯えているのだ。彼女の背中を押せる事を願いつつ、俺は心の底から労いの抱擁を続けてあげた・・・。




 海の家まで彼女を送る。そして彼女に握手を交わした。精一杯の笑顔で応えるシンシア、少しは力になれたのだろう。嬉しい限りだ。


シンシア「本当にありがとう・・・。」

ミスターT「気にするな。お節介焼きの世話好きだから。」

シンシア「ううん、お節介ではこんな事できないよ。お兄さんが優しいから・・・。」


 幾分か大人びいたように見える。些細な切っ掛けで人は成長するのだ。あの一瞬で先へと進めるのなら、俺の存在は無駄ではない。


シンシア「じゃあ、またどこかで・・・。さようなら・・・。」

ミスターT「あ、待った。1つ忘れ物が・・・。」


 彼女を呼び止めると、静かに抱き寄せる。思いっ切り焦った表情を浮かべているが、俺の目を見た彼女はその理由を知ったようだ。瞳を閉じ身を委ねる彼女、俺はソッと唇を重ねた。俺ができる心からの甘い一時をプレゼントしてあげた。俺にできる精一杯の慰めだ・・・。



 長い間、唇を重ね合う。意外と積極的にアツい口づけをしてくる所を見ると、それだけ愛情に飢えているという表れだろう。


 涙を流しながら唇を重ね合わせるシンシア。まるで今生の別れとも言わんばかりに・・・。それを感じ取ると、無意識に抱き締める手に力が篭る。口づけをしながらも、お互いに熱い抱擁を繰り返し続けた・・・。




 落ち着いたシンシアとガッチリと握手を交わし別れた。彼女が住み込みで働いている弁当屋まで戻っていくのを見守る。本当は送り届けたかったが、別れが辛くなると断られた。まあ確かにそうだな。


 彼女が見えなくなると、俺はホテルに戻る。心中で彼女に勇気と希望が沸くよう、俺は強く願った・・・。




 翌日。朝食を取ると一泳ぎする3人。俺は帰宅の準備も兼ねて、既に普段着で付き合った。海の家でコーヒーを頼んだが、既にシンシアの姿はなかった。


 彼女に一時の安らぎを与えられた事に感謝した。俺の存在も決して無駄ではない・・・。




 正午に昼食を取ってから、お土産を大量に購入する。全て自分の知人に渡す物だ。手当たり次第に買い捲っていたエシェラには恐れ入るが・・・。


 そして俺達は東京へと帰った。僅かながらの夏の日は終わりを告げる。しかし生涯忘れえぬ大切な思い出となったのは言うまでもない。




エシェラ「ただいま~。」


 帰ると喫茶店へと戻った。キャンピングカーをトーマスCに返さなければならないのと、お土産を渡すためでもある。


トーマスC「おかえり。う~む・・・見事に日焼けしたなぁ~。」

ラフィナ「充分楽しめました~。」

エリシェ「これお土産です。」


 すっかり日焼けした3人に驚くトーマスC。無理もない、俺も驚いているぐらいだ。しかし焼き過ぎという程ではなく、並という部分だろうか。現にシャワーや入浴をしても痛まないと言っている。実際に大きく日焼けした事がないから何とも言えないが・・・。


トーマスC「そうそう、働きたいという新しい子が来る。応対を頼むよ。」

ミスターT「OK。」


 駅前と大学前の店も大繁盛している。流石に2人だけでは厳しくなっており、新たに募集を呼び掛けたようだ。



エシェラ「どうこれ、店先に飾るといいよ。」

トーマスC「おう、ありがとな。そうだな・・・そこの冷蔵庫の上に置いてくれ。」


 色々と購入したものを配りまくる。エシェラもただ我武者羅に買ったのではなく、一応は考えて購入したようだ。ラフィナもエリシェも色々とお土産を手渡す。僅か1日の滞在だというのに、ここまでする必要はあるのかね・・・。まあこれも彼女の優しさだろう。


 俺は店内の掃除を行いつつ、雑用に明け暮れた。新しい人物が到着するまでの間の時間潰しである。まあ仕事には変わりないが、何もしないよりはマシだ。




 一服しながらコーヒーを飲む。今もプレゼントの配置に困っているエシェラ。徹底した行動には恐れ入る。まあ好きにさせよう。


ラフィナ「あ、いらっしゃいましたよ。」


 暫くしてラフィナが俺を呼ぶ、候補者が到着したようだ。俺は一服を終え、出入口の方へと目をやった。ボストンバッグを片手に、背中にリュックを背負った女の子。今時被る地味な野球帽が印象深い。


 まてよ・・・、野球帽・・・まさか・・・。


シンシア「あ・・・。」


 ハ・・ハハッ・・・。運命とは正にこの事なのだろう・・・、偶然にも程があるな・・・。俺に分かると顔が見る見るうちに泣き崩れていく。そのまま俺の胸へと飛び込んできた。


シンシア「・・・やっぱり・・・気のせいじゃなかったんだ・・・。また必ず会えるって・・・、そう信じてた・・・。」

ミスターT「ああ、そうだね。」


 最大限の真心を込めて彼女を抱きしめる。他のみんなと同じく、彼女もまた心の深層では強く繋がっているのだ。


シンシア「・・・シンシア=ドゥガと・・言います・・・、ここで・・働かせて下さい・・・。」

ミスターT「承諾するよシンシア、これは認め印だよ・・・。」


 徐に彼女の顎を持ち上げ、静かに口づけをする。それに静かに応じたシンシア。みんなが見ている中での行為だが、彼女の言動を見ればその意味を理解してくれるだろう。



 実際の面接をせずにシンシアを採用した。このアツい口づけが何よりの証である。それに今まで見た事がない笑顔で接してくる彼女。


 これからは共に戦える。彼女の背中を一緒に押して行けるのだ。これがどれだけ幸せな事であるか計り知れない・・・。




 強く思う願いは必ず叶う。それを感じさせた瞬間だった・・・。


 こうして再会は果たされた。シンシアもまた、俺達の大切な友人の1人となる・・・。


    第1部・第8話へと続く。

 数十年前の執筆の際、何かの作品にインスピを受けての展開。ザ・再会、という感じでしょうか@@; これでヒロインが4人になりましたが、当然これで終わる訳はありません(何@@; 探索者や警護者とは異なる展開には、当時の自分もよく描いたなと思う次第ですわ(-∞-)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ