第9話 永遠のパートナー6 二日酔いの面々(通常版)
「そう言えば、二次会の格闘術大会は今日かい?」
「と・・とんでもない・・・。皆さんベロベロになるまで飲みまくったのに・・・。」
「日を改めて行うそうです・・・。」
案の定な内容だった。昨日の飲み方からすれば、とても今日格闘術大会を行うほどの余力はない。まあ大会が逃げる訳ではないのだから、焦らず行うのもいいだろう。
「みんな酔いが残ってるから強いんじゃないかね。」
「す・・酔拳じゃないのですから・・・。」
「ダウン者続出ですよ・・・。」
「ハハッ、違いない。」
何でもこの2人も最近は合気道にハマっているらしく、今回の格闘術大会には参加側に回るのだと言う。現役アイドルが一般の格闘術大会に参加し、怪我でもしないといいのだが・・・。
「改めてお兄さんの強さを知りました・・・。」
「全てにおいて強いですよ・・・。」
「時と場合によるがね。お前達の方が遥かに強いよ。」
酔いが抜け切らない2人が口を揃えて語る。俺の強さはいざという時に現れるのだろう。俺自身も驚いているぐらいだからな・・・。
「より一層惚れてしまいました・・・。」
「やはりお兄さんは運命の人です・・・。」
「フフッ、ありがとね。」
二日酔いにより酷い表情だが、頬を染めながらこちらを見つめてくる。この2人の根底にも、俺という支えがあってこそ成り立っているのだろう。それはそれで嬉しい限りだが、別の意味では気苦労が絶えないわ・・・。
「うぅ~・・・頭痛い・・・。」
それからして13人の妻達も起床しだした。しかし表情の方はエシュリオス・エフィーシュ姉妹よりも酷いものだった。酒の力というものは実に恐ろしい・・・。
「ほれ、気付けの一杯。」
「ありがとうです・・・。」
ゾロゾロと3階から13人の美女達が降りてくる様は異様としか言い様がない。しかし俺達の事情は常連さん達は知っているため、苦笑いを浮かべるだけになっているが。
「あ・・あれだけ飲んだのに・・・何ともないのですか・・・。」
「辛いのは寝不足だけだなぁ。別に胃もムカムカしてないし、極めて良好だよ。」
エシュリオス・エフィーシュ姉妹と同じように、俺の意外な強さを知った妻達は驚愕している。あれだけ少量の酒が入るだけでベロベロになったのに、昨日はそれ以上の量を摂取したのだから。家族内最強の酒豪と謳われるメルデュラでさえグロッキーに近いのに、である。
「でも今後は飲まないつもりだ。心から望むのなら応じるが、やはり素面には敵わない。ありのままの姿が一番だよ。」
「それはそうですが・・・。」
「俺的には笑顔で明るく活発なお前達が好きだからね。今の顔はとてもじゃないが、周りに見せられないわ・・・。」
先は口説きで後は現状の語り。それに顔を赤くするが、膨れっ面になっていく。そんな彼女達が実に可愛らしく見える。
「まあ何だ、色々な意味でこれからが勝負さな。」
「そうですね・・・。」
俺の一言に周りは頷いている。その意味合いは先に生まれた娘達の遠征修行だ。数日後になるだろうが、暫しの別れが待ち構えている。俺はともかく、己の腹を裂いて生んだ母親達にとっては苦痛の何ものでもないだろう。
「大丈夫さ、何時でも応じてあげるから悄げるな。」
最後に付け加えた言葉に、妻達は一気に赤面していく。俺から応じると語る事は殆ど稀であるため、意外な不意打ちを喰らったといった雰囲気だ。そんな妻達の表情に、エシュリオス・エフィーシュ姉妹はご馳走様と呆れつつも微笑ましい視線で見つめている。
これからが色々と大変になっていくだろう。しかしそれらも己の大切な成長の一部として乗り越えなければならない壁である。
それに俺には彼女達がいる。心からお互いを信頼し合い、背中を預けられるパートナーが。負ける筈がない。否、負ける意味もない。彼女達とならどんな苦難だろうが乗り越えていってみせる。
今も二日酔いに苦しむ妻達を見つめ、俺は心に堅く誓った・・・。
第10話へ続く。
酒飲みグロッキーの面々。そして、酒が苦手な主人公なのに、いざ飲むと平気だったという@@; よくこういうのありますよね(何><; まあ作者の方は少量でも相当ヤバい事になってしまいますが・・・(-∞-)
それでも、流れの本質はお互いを思い遣る事。そのための諸々の流れだったと思います。これはリアルでも当てはまるので、持ちつ持たれつ“投げ飛ばす”が大切なのでしょうね。