第8話 決着と決意と5 戦後処理と娘達の決意(キャラ名版)
遣る瀬無く本店レミセンへと帰宅した。ゼラエルやベロガヅィーブの一件のように、更に厳しいものになると踏んでいたからだ。
店舗内に戻るとシュームが出迎えてくれた。その彼女を優しく抱き寄せ胸に抱く。それに慌てだすのだが、俺が思う心の内を感じ取ったのか大人しくなった。
シューム「・・・落ち着いた?」
ミスターT「・・・ああ。」
何だかんだで死闘だったのだろう。シュームを胸に抱く事で、急激に疲労感が出始める。いくら無力化した核弾頭だといっても、目の前には自分達を死に至らしめる最凶の武器が存在していたのだから。
ミスターT「こうしている事は事実なのかね。本当は俺自身は既に死んでいて、望んでいた現実が走馬灯のように浮かんでいるのかと思えてしまう。」
シューム「凡人からすれば、貴方が赴いた先は死の淵と言えたでしょう。ですが今こうして貴方は私を抱いて下さっている。それは紛れもない現実であり事実です。貴方は勝利したのですから。」
ミスターT「・・・そうだな。」
徐に俺を見上げると、そのまま軽く唇を重ねてくるシューム。濃厚な口づけではなく、ただ唇を重ねるだけのものだ。
シューム「お疲れ様でした。」
ミスターT「ありがとう、シューム。」
口づけを終えると労いの言葉を掛けてくる。そのお返しに優しく抱きしめ返した。彼女の大きな心に、心から癒される思いである。
それから数週間後、関東近辺は普段通りの活気に戻った。都市機能が麻痺してからの回復は時間が掛かったが、そこも三島ジェネカンと躯屡聖堕チームの尽力により早期回復が図れた。これによって、より一層俺達の見方が変わりだしていた。
今までは何かとあっては財力の横暴だ・元暴走族のやる事だ、などと批判的な声が挙がっていた。しかし今回の一件で流れは一変していった。
インフルエンザ企業間抗争で矢面に立って戦った事をマスコミが大々的に評価した事に、改めて三島ジェネカンと躯屡聖堕チームが評価されだしたのだ。
これにエリシェやラフィナは泣いて喜んでいた。それにアマギHとユリコYもだ。自分達が心身共に捧げて尽力を尽くしてきた事を評価されたのだ。この上ない喜びであろう。
またウエスト達の工作もあり、後始末的な事態は終息している。いくら社会から認められたとしても、それが100%とは言い切れないのが実状だ。そこを彼らが上手い具合に調整してくれていた。
嫌な役割でもあり行動であったが、汚れ役は任せろを胸を張っているウエスト達。世界中に広がっているネットワークの調停者と言えるだろうか。
しかし・・・あの核弾頭すらもハッキングの応用で操作できるのだから驚きだ。所詮は最凶の武器も精密機器の集合体であり、人がいなければただの道具に過ぎないという事か。
全ては人に掛かっているという事だろう。恐縮ながらも俺達が周りを支えていってこそ、間違った方向に進ませないようにできるのだから。
そんな役割を少しでも担える事に、俺は心から感謝したい。俺という存在も無駄ではないと言えるのだから・・・。
ナツミA「決定打を与えたディルLKさんの評価は凄まじいですよ。」
ミツキ「遠距離からの狙撃でアビゲイルを沈黙わぅ。」
ようやく調理師免許を取得できたナツミAとミツキ。予てから練習していた手料理を実際に本店レミセンにて振舞い出している。まだ味付けなどは完璧ではないが、初心にしては十分な出来映えだろう。
その2人が厨房で悪戦苦闘しながら、ディルヴェズLKの事を語っている。例のアビゲイルの狙撃が評価され、何と国家勲章を拝受する事になったというのだ。
ミスターT「1つにのめり込んだら徹底的に挑むからなぁ・・・。彼女の長所と言えば長所だが、何だか可哀想な気もする。」
ミツキ「そこは桜梅桃李わぅよ。」
ミスターT「フフッ、そうだな。」
女性としての力をメキメキと着けていくナツミAとミツキ。幼少の頃からの付き合いであるウエスト達は驚嘆していた。戦乙女の如く活躍する姿に恐怖すらも感じると言っている程だ。
ナツミA「次は勉学の道に走らないとね。」
ミツキ「通信教育になるわぅが、基礎たる学力は持っていた方がいいわぅ。」
ミスターT「お前達なら不可能という文字は存在しないさ。」
調理師免許の次は、通信教育による大学合格だという。勉学に完全に疎い自分にはチンプンカンプンの世界だが、この2人なら不可能は一切ない。
ミスターT「これからが勝負さ。」
ミツキ「当たり前わぅ!」
ナツミA「寝込んでいた数十年分、一気に巻き返さないとね。」
う~む、娘達以上の覇気が輝かしい。力強く美しい才女とはこの事だろう。そんな2人と知り合えて、俺は本当に幸せである。
その後暫くは慌ただしい日々が続いた。ウインドとダークHは一連の騒動をほぼ無血で鎮圧させたとあり、ディルヴェズLKと同じように国家勲章を受けるに至った。
ほぼ無血というのはアビゲイルの負傷だろう。しかし死には至らないため、殆ど無傷に近い扱いのようである。それに相手は間違いなく極悪と言える。このぐらいの傷で済むのなら軽傷と言えるのだろうな。
ちなみに俺の事は一切告げるなと語った。恐縮気味にも今回の決定打は俺自身であるが、俺自体は裏方の人間でいい。表立って評価されるような事は一切していない。
ウインド達がほぼ苦肉の策で投じた“悪人心折”であり、本来はあるべき存在ではないのだから。
その分、身内の関係者にスポットを浴びせるように計らって貰った。その影響で大忙しの彼らである。特に先に語ったディルヴェズLKやリュリア、エリシェやラフィナ・アマギHやユリコYもしかりである。
またこの一件で触発されたのかどうか分からないが、娘達がとある行動に出始めた。それに薄々は感じていたが、母親達の方は我が子の成長に大喜びの様子である。
今正に娘達全員が俺の元に訪れ、緊張した面持ちで訳を語っていた。流石は俺の娘としか言い様がない内容である。
エリム「・・・どうでしょうか・・・。」
普段の気丈な姿は一切ない。目の前の娘達はまるで遊びに行くための許可を求めてくるかのような表情に近い。まあ当の本人達は真剣な心構えなので、遊びの許可という例えは娘達には失礼極まりないが。
ミスターT「俺が20歳から27歳まで、日本中を飛び回っていたというのは聞いているよね?」
エリア「あ、はい。お母様から何度も聞かされました。その礎があったからこそ、私達が生まれたとも仰っています。」
ミスターT「ならば断る理由なんか存在しないよ。今度はお前達が覆面の風来坊として台頭する番だと確信している。思いっ切り戦っておいで。」
エリム&エリア「ありがとうございますっ!」
感極まって抱き付いてくるエリムとエリア。他の娘達もそうしたかったのだろうが、羞恥心の部分からか押し留まっている。この双子がいかに純粋に生きているかがよく分かる。
第8話・6へ続く。
娘達の旅立ちは、こんな感じなのでしょうか><; まあこちらは覆面シリーズでも、言わば外伝風な感じなので、こんな流れでも良いのでしょうね。前までは風来坊が主軸(本線)でしたが、今は警護者や探索者に苦労人が主軸となりだしていますので。何ともまあな感じです(-∞-)
これでデカいイベントは終わりましたが、この後の展開が風来坊を描く切っ掛けとなった形に至っていく流れとなります。まだまだ続きますが、ご拝見下されれば幸いですm(_ _)m




