第8話 決着と決意と2 戒厳令の中で(通常版)
「暴動や略奪が起きてもおかしくないのにな・・・。」
「そこは躯屡聖堕チームのドスが利いていると思います。実際に治安維持に大きな役割を担っていますし。この東京近郊は躯屡聖堕チームが殆ど警戒に当たっている位です。」
う~む、そこまで躯屡聖堕チームが信用されている証拠だろう。数々の災害などで身命を賭して人道支援に当たっていたのだから。それに元暴走族という事もあり、彼らが略奪などをするとは思えない部分もあるようだ。つまり彼らに地元を任せると言った雰囲気である。
「表は以前拳銃を奪って逃走した人物がいた時以上にゴーストタウンですよ。」
「規模が規模なだけにね、下手をしたら日本の中心に大穴が空くかも知れないし。」
一番下の娘達は疎開させている。エシェツ&カシス夫婦に全員を預けている。しかし陣頭指揮を共に取っているヴェアデュラやエリム・エリアなど、まだこの地元に残っている娘達もいるのは事実だ。
今現在俺達は本店レミセンにいる。表は誰もいない状況であり、よく残れたと思っている。そこはウインドとダークHによる根回しがあったようで、言わば躯屡聖堕チームの扱いとして居させているようだ。偶に躯屡聖堕チームのメンバーが休憩に訪れる事もある。
そんな中、本店レミセンの一角でマンガの原稿を作成しているシンシア。傍らにはシェラとシェナが付きっ切りでサポートしていた。
「この情況下でもマンガへの意欲を殺がないお前達は流石だよ。」
「事が大きければ大きいほど、岩のように静かであれ。何らかの作品で窺った名言でも。今は正にその時です。ジタバタしても仕方がありませんし。」
「お父さんの生き様は、据わった一念そのものとも言えます。このような一件でも一切微動だにもしない、その生き様に肖りたいのです。」
「お父さんの娘でよかったです。母さんと一緒に今を戦える、これほどの喜びは他にないと確信できます。」
「ありがとう。」
今年22歳になったシェラとシェナ。かつて母親のシンシアと初めて会った時と同じ年代である。月日が過ぎるのは早いものだ・・・。
「私達は私達の生き様を貫き通すだけです。以前貴方が仰っていましたよね。男女問わず、一度定めた生き様は絶対に曲げてはならないと。」
「ああ、そうだね。」
「今度は娘達の年代が主役となります。私達の理はそこに存在し続けますので。」
厨房から紅茶を手渡してくるエシェラ。それを受け取ると静かに啜った。あの幼子であったエシェラが今ではシュームに勝るとも劣らない肝っ玉母さんに成長しているのだから驚きである。俺も歳を取る訳だな・・・。
雑談に明け暮れていると、ナツミAとミツキが来店してくる。手には色々な資料を持っていた。確か調理師免許取得まで時間がないと言っていたな。
「あいつらぁ・・・、試験を台無しにしやがったわぅ・・・。」
「この戒厳令だと当面は国としての機能はないだろうな。」
「ジェリヴァとアビゲイルを蹴飛ばしてやるわぅ!」
怒らせた時の恐さは家族内で最強と言わしめるミツキ。その彼女がエラい激怒している。これは早く一件を片付けないと大変な事になりそうだ・・・。
「まあ国そのものがなくなっては意味がないし。今は我慢するしかないよ。」
「う~・・・。」
本当に不思議な図である。炎のように活発なミツキに、氷のように冷静なナツミA。双子とは思えないほどの真逆度だ。エリムやエリアのように、お互いが殆ど同じ属性ではない。
「大丈夫よ。勝負は一瞬、次の日には普通の生活に戻れるわ。」
「日本としての問題もあるでしょう。非核三原則に則っているにも関わらず、一般企業が核弾頭を入手できた現実は避けられないものですから。」
「まあそこも何とかなるでしょう。相手が相手なだけに、押し通せる部分があるかとも思いますし。」
「それは確かに・・・。」
この核弾頭事変が終わっても、その後の問題は山積みだろう。でも乗り越えられない壁など存在しない。この一件も今後の平和な世の中の構築に一役買えれば幸いである。
「俺的にはアマギHとユリコYの結婚式や、その後の事でも一杯なんだが・・・。」
「格闘術大会わぅね。ウエストちゃん達も大張り切りわぅよ。」
「二次会を格闘術大会とは・・・私では考えられません。」
「でも正直な所は暴れたい部分もあるだろう?」
「それはそうですけど・・・。」
日に日に強くなっていくナツミA。ミツキは既に柔道・合気道・カンフーに手を出しており、その類稀なる技術力で自分のものとしていっている。そんな妹が羨ましいようで、自分も早く身体を強くしたいと思っているようだ。
「それこそ桜梅桃李だよ。ミツキはミツキの良さが、ナツミAはナツミAの良さがある。誰彼がどうこうじゃない、テメェ自身がどうあるべきか。それが重要なのだから。」
「姉ちゃんが強くなったら、わたなんか絶対に敵わないわぅ。だから今のうちに強くなっておかないとダメわぅよ。」
「・・・そのうち追い抜いてやるから・・・。」
うわ・・・怖すぎる・・・。ミツキの炎のような激怒とは異なり、ナツミAは氷のような凍て付く寒さの激怒である。背筋に悪寒が走るのは言うまでもない。
まあでも努力する存在は心から応援してあげたい。今を生きる大切な存在、その人物に俺は命を懸けて支え抜く。それが俺の生涯の生き様である。
関東全域に戒厳令が引かれてから数日が経過した。大々的に発表した事により、日本の国家としての機能は完全に停止している。
これだけでも工業・商業・経済などは大打撃なのだが、日本各地にある三島ジェネカンの支社を通して辛うじて機能しているようだ。
やはり国家として成り立たない場合、新たに台頭するのは一番力を持つ企業の力をおいて他にはないだろう。エリシェ達の生き様がここにきて大いに役立っていると言える。
ちなみに都心ではウインド・ダークHが陣頭指揮を取り、自衛隊の精鋭中の精鋭と共に相手の動向を監視していた。
メディアに核を持っていると公表してから数週間が経過したが彼らだが、思っていたよりも大混乱が起こらない事に苛立ちを募らせているだろう。
問題は彼らが最後の一手に踏み切る事だ。それを阻止してこそ、本当の騒乱終焉と言える。まだまだ課題は山積みである。
第8話・3へ続く。
この時のナツミA嬢とミツキ嬢は双子の設定だったんですね(何@@; 警護者や探索者などでは、2人は普通の姉妹の属性になっていますし@@; まあリアルのお2人は年齢差が9歳もあったので、姉妹と言う名の姉妹だったのかと。無論、実際の姉妹ではありませんが、“時を超えた姉妹”と断言しておきます。
しかし、本当に定期更新ができるのは安心します><; ただ、ストックの消費が激しくなるため、次のカキカキを準備しないといけませんが@@; それでも、風来坊は既に完結しているので、後はラストまで突き進むのみです(>∞<)