第6話 反転攻勢4 親子の絆(通常版)
あれから世間は静かになりつつある。2社の回収行動は生活面にも大打撃を与えていた様子だった。それがまるで台風の通過した後のような穏やかさである。
ウインドとダークHの追跡調査は続いている。リュリアとディルヴェズLKが陣頭指揮を取り、日本中を駆け回っていた。
海外は三島ジェネカンとシェヴィーナ財団の合同で特殊部隊を編成するに至っている。特に海外では当たり前に懸賞金を掛けられるとあって、その追跡度は尋常じゃないほど強い。
俺の予測だが、奴等は国内に潜伏している筈だ。海外では直ぐさま問答無用で御用となるため、幾分か緩い日本内の方が生き延びる確率が高いだろうし。
まあでも、何れ捕まるだろう。国内の警察事情を舐めてはダメだ。俺の身内が3人も参加している事だしな・・・。
メアディルがマスター家業に奮闘しているため、俺の居場所が殆どない。生まれたばかりのメアティナとメアティヌはリュアとリュオが面倒を見ている。俺が今できる事とすれば、屋上の草花の面倒や地元の清掃であろう。
各レミセン周りは非番のマスター達が掃除するとあり、俺は中央公園の中の掃除を行っている。またここもゴミが多く、ポイ捨てが今だに行われているのだから。
「こんな所にいらしたのですか。」
公園内をカートを引いて歩きながらゴミ拾いをしていると、エリムとエリアが訪ねてきた。普段の正装の姿とは裏腹に、今はタンクトップにショートズボンと女の子の出で立ちである。
「居場所がなくてね。ただ腐っているより、地域に貢献できれば幸いだろう。」
「お父さんらしいです。」
彼女達もカートの用具入れから軍手を取りだし身に付ける。その後俺と一緒にゴミ拾いを開始しだした。今では企業連合の総括も任されているのに、こういった行動をする姿はある意味新鮮に見える。
「もう22だもんな・・・早いものだわ。」
「そうですね。」
「15・6から企業の運営に関わりだしていますので、大して気にはなりませんけど。」
2人の自立は高校生になってからと言える。実戦訓練としてエリシェとラフィナの元で修行を開始しだしたのだが、それが今では右腕や左腕にもなる存在に成長していた。
「全盛期のエリシェを思い出すよ。まだまだ遊びたい年頃だっただろうに、それすらも返上して人の為に戦っていたのだから。」
「お母様には敵いません。しかし追い付こうと日々努力しています。」
「お母様からは自分を超えていると仰られますが、私達はまだまだ未熟ですし。」
畏まる姿はエリシェにソックリなのだが、気の強さは俺に似ているのだろうか。というか娘達全員が気の強さが目立っている。先日生まれたばかりのメアティナとメアティヌも、リュアとリュオに匹敵する程の夜鳴き娘達として有名である。ここもその繋がりがあるのだろうな。
「初めてお父さんと寝た時を今でも憶えています。」
「5年振りに地元に戻った後の、妻達からのアプローチの最中か。」
ある程度のゴミ拾いを終えて、噴水がある近くで休憩をする。リュリアと初めて出会った場所の近くである。エリムとエリアは缶紅茶を啜り、俺は煙草を吸って休息した。
その中でエリムが初めて会ってから直ぐに打ち解け、添い寝の時の事を語りだした。それにうんうん頷くエリア。
「正直な所はうる憶えですが、暖かな胸に抱かれて眠った事だけは鮮明に憶えていますよ。」
「あの時からお父さんだと確信しだしたのでしょう。知らない他所の小父さんに、この様な包容力がある方はお会いした事がありませんので。」
「そうだったな・・・。ラフィカとラフィヌを除いた10人の娘達の中で、俺にいち早く懐いてくれたよね。」
当時の温もりは今でも鮮明に憶えている。今のリヴュミナとリヴュミヌと同じぐらいの年代の2人の温もりである。それが今では大企業の中枢を担うキーパーソンなのだから。不思議な話であろう。
「妻達もそうだが、お前達も含めた娘達全員を心から誇りに思う。それぞれの生き様を刻み、そして人の為に尽くしている。テメェの生き様を刻む事こそが、周りへの激励に繋がるのだから。」
約1年間の拘置所生活は、俺の生き様と信念と執念に多大な影響を与えてくれた。今では大切な経験だと胸を張って言い切れる。そして家族達も奮起しだした。俺も立ち上がらねば意味がない。
「改めて心から思う。生まれてきてくれてありがとう、エリム・エリア。お前達と今世に巡り逢えた事、そして共に戦える事。心の底から感謝しているよ。」
目の前の大切な愛娘達に心から感謝を述べた。彼女達がいるからこそ俺も頑張れるのだから。俺の言葉に涙ぐむエリムとエリア。この言葉は彼女達の生き様を褒め称えた事にも繋がる。
膝は折れないわ、絶対にな・・・。
「眠いわぁ・・・。」
今し方帰宅すると、カウンターで伏せているエシェラ。ここ最近彼女を含め、ラフィナ・エリシェ・シンシアが凄まじい活躍を見せている。更にダーク・ウィレナ・トモミもそうであった。総合的に教育関係に繋がっているため、1日が死闘の連続のようである。
「過労でぶっ倒れるなよ。」
「大丈夫ですよ。しっかり弁えて動いていますから。」
あの少女だったエシェラも、今年で47歳と中年層に差し掛かっている。今が一番燃え上がる年代だろうが、それでも老化による外見の衰えは痛々しい。
「エシェアとエシェナがね、私の仕事を継ぐと言ってくれたのよ。辛い日々だったけど、戦ってきてよかったって思った。」
「エシェラ伯母様の生き様に感銘されたのですね。何よりも伯母様の大切な娘様方ですよ。貴方の存在全てを心から誇りに思っていらっしゃいます。」
「私達も負けてられません。お母様や皆様を支えられる存在として頑張らねば。それにヴェアお姉様と同じく、私達も透明な覆面を着けた風来坊なのですから。」
「お前達なら何だってできるさ。」
エリムとエリアの頭を優しく撫でる。背丈はかなり大きくなったため、若干無理があるものであるが。それでも俺の労いに笑顔で見つめ返してくる2人であった。
「30年前と同じだよね。分け隔てない愛情を注ぐ姿は昔も今も変わらない。それに外見が当時のままだもの。」
「エシェアとエシェナも、もう少しで全盛期のお前の姿のままで戦い続けるよ。」
「その若さの秘訣、分けて欲しいものだわぁ。」
エシェラもシュームと同じく、自身の老化に悩まされだしている。それを思う原因は、俺や娘達全員が老化が訪れない外見を有しているからだろう。特に母であるヴァルシェヴラームやセルディムカルダートが顕著にある。
「エシェラさん、それこそ心にはシワを作らないですよ。」
「そうねぇ~。」
「メアディル流に言えば、ザ・ブレイブハートだな。」
「お父さん、それはちょっと反れているかと・・・。」
「何時もの事ですよ。」
何げない言葉でも、それが違っていればフォローするエリムとエリア。この直ぐさま突っ込みを入れてくれる姿は、流石のヴェアデュラやリュア・リュオにはできないものだ。それだけ2人の知識の高さと敬う心が強い表れだろうな。
う~む・・・何か親馬鹿になってるようだわ・・・。何とも・・・。
第6話・4へ続く。
何時もありがとうございますm(_ _)m 1ヶ月振りの更新です><; 今回は会話中心の流れでしたね@@; まあ風来坊は詳細描写がほぼないため、キャラ会話がメインとなっていますが@@;
警護者と探索者は終盤から詳細描写を投入しだし、苦労人は最初から詳細描写を投入した流れとなっています。今現在執筆中の覆面の大艦長も同様と。最後まで進めれば良いのですが・・・(>∞<)
拙い作品ですが、今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m