第6話 反転攻勢2 新たな娘達(通常版)
時は流れ、俺が拘置所に入ってから約1年が経過した。全ての始まりから1年半が経過している。長いようで短い一時であった。
周りから出るように催促され、拘置所を後にした。特に囚人達からの強い要望である。俺達はここには居てはいけない存在なのだと誰もが語っていた。もちろんヴァルシェヴラームとユリコYも一緒に出所している。
一応は囚人という事で、他の囚人達と一緒に活動もした。自分達だけ特別扱いは嫌だしな。雰囲気からして特別扱いだという事は見え見えだったが、それでも食事や就寝時間・諸々の作業などは全て同じである。もちろん喫煙などもっての外だ。
俺もそうだがヴァルシェヴラームとユリコYもかなり痩せたわ。拘置所での食生活や行動は自然的なものだったためか、普段の生活がいかに贅沢すぎるかという事も痛感した。
この1年間は色々な意味で経験を積ませて貰った。今後の俺達の生き様を刻むにおいて、十分すぎるほどのものであろう。
倒すべき相手のフルプレとフルエン、そしてジェリヴァとアビゲイル。しかし諸々の事を考えれば、彼らから与えられた試練という現実は大変貴重なものだっただろうな。
素直に感謝したい。俺があるのは彼らのお陰でもあるのだから・・・。
「う~ん・・・。」
約1年振りに本店レミセンに戻った俺達。環境は劇的に変化していた。特に顕著なのが、数ヶ月前に生まれたメアディルの娘達だろう。無論双子である。
今その双子を抱いているのだが、またもや出産に付き合えなかった事を後悔している。
「大丈夫、全て理解しています。それに貴方が名付けてくれたメアティナとメアティヌが丈夫で元気な姿で生まれてきてくれたのですから。そして切っ掛けを作ってくれた貴方には感謝に堪えません。」
母親となったメアディルは、他の妻達を超えるほどの肝っ玉の強さを手に入れていた。特にあのシュームも絶賛する力強さは、第2のシュームとも言える存在であろう。
「子育ては任せて下さい。」
「やり甲斐がありますので。」
リュアとリュオも13歳という年代になった。今年中学生になったというのに、その据わりは大人顔負けである。勉学もスポーツもできるとあって、2人は学園の人気者であった。
「メアディルちゃんにヴェアちゃん、そしてリュアちゃんにリュオちゃんか。後継者が多くて頼もしいわ。」
「孤児院の方はエシェラさんとダークさんが担ってくれていますし。後はあの2人が捕まれば、本当の意味で引退できますね。」
97歳のヴァルシェヴラームと92歳のセルディムカルダート。外見は30歳前後にしか見えない姉妹同士。この図は何とも言い難いものだわ・・・。
「あら、君も57歳じゃない。若く見えるのはお互い様よ。」
「また心中読みですか・・・。」
油断すればセルディムカルダートに心を読まれる、これには周りは冷や冷やしているという。しかしまだ幼くて言葉が喋れない子供達を支えるには、これほど優れた能力はないだろう。そして彼女達がいたからこそ、今の俺達がいるのだから。心から感謝せねばバチが当たるわ。
「うへぇ・・・こ・・濃すぎる・・・。」
久し振りにシューム達の手料理を楽しむ。しかし長い間素朴な味の食事を取ってきた影響からか、彼女達の食事が濃すぎて参っている。それはヴァルシェヴラームとユリコYも同じであった。
「どっちが本当か分からなくなってるわねぇ・・・。」
「暫くはこの調子が続くでしょう。」
あまりにも濃すぎる食事が多かったため、急遽朝の味噌汁を使ったおじやを作った。それに大喜びする2人。そして呆気に取られる周りの女性陣だった。
「う~ん、素朴な味でいいわぁ~・・・。」
「何杯でもいけますね。」
「当面はこれで慣らすか・・・。」
病人みたいな食事に周りは驚くばかりだ。しかし俺達が食べてきた食事は殆ど同じであり、シューム達が作ってくれた手料理がキツ過ぎるだけの事。何れこの感覚も直っていくだろう。
「俺達は超が付くほど幸せすぎるよな。これでは困っている人達の心情を理解する事は無理に近い。」
「でもそれらはその人の境涯でもあり宿命でもあります。私達が普通の暮らしができる事、それは色々な意味で幸せを築くために戦ってきたご褒美とも言えますから。」
「今回の拘置所生活を不動の原点回帰にすれば済む事よ。そして根底は1対1の対話こそ大切なのだと分かったからね。」
「う~む・・・。」
前にも言ったが、今後の課題が山積みである。いかに平和な世の中に進めていけるか、それが今後の課題なのだから。
ヴァルシェヴラームやセルディムカルダートの悲願である、世界から孤児を無くそうという心構え。これは即ち世界の平和に繋がっていくのだから。
「13人の妻達ねぇ・・・。」
メアティナとメアティヌを胸に抱き、食後の余韻に浸るヴァルシェヴラーム。この2人とヴェアデュラを含めると、合計27人の娘達がいる事になる。
「一夫多妻よね。しかも呆れ返るほどの。」
「それでも、娘達を含めて社会に貢献していってこそです。周りの偏見なんか捻じ伏せてやりますよ。」
「流石私の旦那様です。」
ベッタリと俺に抱き付いてくるメアディル。その彼女を優しく抱きしめ返す。今回も出産の前後を支えられなかったため、今も罪悪感が大きく残っている。
「ヴェアちゃんより年上でリュリアより若い年代の奥様、か。何だかなぁ・・・。」
「妬かない妬かない。家族が多くなっていいじゃん。」
「そうだねぇ~。」
「んだんだ~。」
この4人の図式を改めて窺うと驚くしかない。祖母に当たるシューム、その娘のリュリア。そしてリュリアの娘達のリュアとリュオ。明らかに狂ってるとしか言いようがないわ。
「狂ってるとか言わないの。リュアちゃんとリュオちゃんがどれだけ陰の戦いを担ってくれたか。私達以上に頑張る女傑なのよ。」
「そうですね、失言・・・もとい邪念でした。」
俺の心中を見透かされ、セルディムカルダートに戒められる。特にその現状を狂っていると例えた事に対して、エラい過剰反応を示している。
「分かればいいのよ。貴方も言っていたじゃない、目の前の人を大切に。この一念を常に抱いているのなら、愚痴でも思っちゃダメよ。」
「以後気を付けます。」
ヴァルシェヴラームなら冗談と受け止めるであろう部分を、セルディムカルダートは本気に捉えてしまう。それに苦笑いを浮かべる姉だが、妹の意固地の強さは身に染みているようだ。
「叔母ちゃん、大丈夫ですよ。お父さんが言っている事は正しいので。」
「でも自分達が生まれてきた使命も考えないとね。万物全てには意味があるのですから。」
「う~む・・・一段と才女になってまぁ・・・。」
「恐ろしいものねぇ・・・。」
リュアとリュオの知識と肝っ玉は尋常じゃないぐらい強くなっている。もはや彼女達に敵う身内は存在しないだろう。
第6話・3へ続く。
何時もありがとうございます><; 相変わらずの執筆辛さで、1週間後の警護者、その翌週の探索者は未完成のままです><; 最低でも警護者の分は作成せねば・・・(>∞<)
やはり詳細描写がない同作は、キャラ会話が中心となっていて核心(と言うべき?)が欠落しているのが痛い所です><; 逆に苦労人はその真逆を進んでいますが、執筆開始当時の意欲が殺がれている現状、進み具合は物凄く遅くなっていますし@@;
ともあれ、広げた風呂敷は最後はしっかり閉じたいものです><; 今後も頑張らねば・・・(-∞-)
漸く暖かくなってきたこの頃ですが、今もコロウイ事変は猛威を振るい続けている現状でも。お身体には十分お気を付けて下さい><;