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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第3部・慈愛
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第5話 共にある5 恩師の元へ(通常版)

「・・・結局はここに至るか・・・。」


 それから数週間後、事態は更に急変した。不当の逮捕で拘留されているヴァルシェヴラームが一方的な事で死刑という事になったのだ。そこまで全てに対して根回しをしていた2社に怒りを通り越して呆れ返ってしまう。


「人を殺す事など何とも思っていない連中です。5年前のウイルス事変でも、ある意味大規模殺戮に等しいですから。」

「・・・なら俺にできる事はこれが最後かな。」


 モニターを見つめ終えると、普段の衣服に着替える。覆面の風来坊として定着がある、黒いコート・ベスト・ロングシャツ・ロングズボン。このスタイルは地元に帰ってきた時と全く変わらない。


「暫く留守にするが、大丈夫だよね?」

「大丈夫ですよ。それに悪は必ず滅します、それが世の常ですから。」


 作業をしながら語るメルデュラ。その彼女の頭を優しく撫でた。すると娘達と同じような満面の笑みを浮かべて俺を見つめてくる。


「メアディルや子供達の事を頼む。」

「お任せを、身命を賭して守り抜きます。もちろん死なない程度ですが。」

「ハハッ、そうだな。」


 ヴァルシェヴラームが不当に逮捕された時の苛立ちは既にない。もはや当たり前となりつつある妨害工作には慣れていったし、相手が間違った事をしているのも充分理解している。後は反転攻勢の時まで、師匠を守り抜く事が俺の務めだ。



 1階に下りると、シュームが出迎えてくれた。雰囲気から俺が行う事を理解してくれている様子で、静かに頷くだけにしてくれた。


 俺はヴェアデュラと兼用のミニクーパーに乗り、そのまま本庁へと向かう。ここは一芝居を打って、奴等に一泡吹かせてやろうかね。




「威嚇なら空砲2発で十分か。」

「本当に大丈夫ですかね・・・。」

「そこはお前達の演技次第だよ。」


 運転はダークHが担い、助手席にウインドが座る。俺は後部座席に座り、2人の所持している拳銃を扱っている。それぞれの拳銃の初弾に空砲をセットし、実弾は取り外し弾ホルダーに収めて2人に返した。


「警察庁長官2人を人質に潜入か、俺もヤキが回ったものだな。」

「でも全ては師匠を支える為のもの。周りが批難しようが、私達は絶対に批難しません。」

「ありがとね。」


 2社の事だ、間違いなく遂行するだろう。多少無理無茶をする事になるが、実際に実行されるのならこちらも実力行使で阻止するしか手段がない。



「着きましたよ。」

「ありがとう。」


 東京拘置所の近くにミニクーパーを停車する。徐に車外に出て深呼吸をした。下手をすれば俺も死刑になるかも知れない。しかし妻達は全てを理解した上で俺を送ってくれた。


「お前達は無理矢理付き合わされたと言い切れよ。俺自身はシェヴの元に着いて一緒にいられれば第一段階が終わる。」

「ええ。次は先輩とユリコYさんを救出し、そこから反転攻勢をしていく第二段階。」

「第三段階は2社の壊滅、そう至りたいですけどね。」

「大丈夫さ、お前達ならやれる。シェヴの愛娘達だぞ。何を恐れる必要があるね。」


 改めて自分達が誰の元で育ったのかを回帰する。2人や俺はヴァルシェヴラームという偉大な母に育てて貰ったのだ。その彼女を身命を賭して守り抜く事こそが師恩に繋がるのだから。


「さて・・・いきますかね。」


 俺の言葉にウインドとダークHが小さく頷く。俺に近付く2人を後ろ向きにし、その背後から両手にそれぞれ持つ拳銃を態とらしく突き付けた。




「た・・大変です!」

「どうしたんだ?」


 警備員の1人が慌てて所長室に駆け込んでくる。その背後を堂々と進む俺達。銃を向けている人物に青褪める所長だが、それ以前にこの事態に仰天していた。


「直ぐに銃を下ろして2人を解放するんだ!」

「それはこちらの台詞だ。2人の命が惜しければ、ヴァルシェヴラームとユリコYの独房へと案内して貰いたい。」


 ウインドとダークHは役割的に人質を演じているが、それを知らない周りは驚愕している。特に人質に取られているのが警察庁長官の2人だけあり、迂闊な言動はできないだろう。


「・・・何の得があってこんな事をするんだ?」

「貴方達にも師匠と言える存在がいるだろうに。その師匠が死刑に遭うのなら、俺も共にと思ってね。」


 改めてこちらの内情を知ったウインドとダークHは驚愕する。俺が死ぬ覚悟でこの場に挑んでいる事に対してだろう。しかし俺もヴァルシェヴラームも死ぬつもりは毛頭ないが。


 行動を躊躇している所長達を見て、俺は右手に持つ拳銃を壁に向けて発砲した。それに驚愕する周りの面々。無論発砲したのは空砲であり、驚かす以外全くの無害ではあるが。


「あんたらが案内してくれないのなら、虱潰しに探してみるよ。」


 そう語りながら所長室を後にする。表では数多くの警察官がおり、こちらと間合いを取って様子を見ていた。



 しかし広い拘置所だ。ウインドとダークHはここの監視員を行っていた経験がある。彼女達の小声による耳打ちで、その場所まで案内して貰った。


 人質に恐喝、この後の俺の処分は痛いものだろう。しかし2社による不当な逮捕に至ったヴァルシェヴラームの事を思えば、このような苦痛など痛くも痒くもない。


 1つだけ悔いが残るのなら、13人の妻達に犯罪者の夫がいるというレッテルを与えたという事実だけだ。しかしそれをしてでもヴァルシェヴラームは助けたい。俺が心から敬愛する恩師なのだから。


    第5話・6へ続く。

 これ、劇中の潜入は何らかの元ネタがあったのですが、原本が数年前とあってド忘れしてます><; 何とも(-∞-) まあでも、共にあるという意味合いはここにあるかと。


 しかし、警護者・探索者・苦労人の本人とは雲泥の差ですよね。やはり、警護者であるかどうかで行動自体が変わってくるのかと。うーむ、風来坊が元祖となるのですが、今となっては警護者側が元祖となりそうです><; 何ともまあ(>∞<)

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