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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第3部・慈愛
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第4話 不意の逆襲4 激昂の一撃(キャラ名版)

 しかしこちらの反転攻勢を遮るかのように、突如俺も考えもしなかった出来事が起こった。それは5年前の企業間戦争時にワクチン攻防を行った際に、最前線で陣頭指揮を取っていたヴァルシェヴラームが不当にも逮捕されたのだ。


 目の前が真っ白になったのは言うまでもない。逮捕を行うは警察機構の役目、つまり彼女の弟子であるウインドとダークHが許可した事に繋がるのだ。


 とりあえずアマギH・ユリコY・ヴェアデュラに頼み、躯屡聖堕チームの情報網を駆使して情報収集を行って貰った。これがデマであると信じたい・・・。




アマギH(兄貴、マズい展開になりましたよ。昨日孤児院の方に特殊警察と名乗る人物達が現れ、シェヴ姉を逮捕し連行したとの事です。先刻の情報は事実でした。)

ミスターT「そうか・・・。」


 今は陰で動いているアマギH達から携帯で連絡を受けている。ポーカーフェイスが大いに役立つヴェアデュラの行動があってこそだと言っていた。流石としか言いようがない。


アマギH(卑怯すぎますよ。今更5年前の事変を掘り起こし、陣頭指揮を取っていたシェヴ姉を不当に逮捕に踏み切った。絶対馬鹿げてます・・・。)

ミスターT「今はまだ怒るな、その時じゃない。とりあえずシェヴが拘留された場所の特定と、内部からの支援を頼む。いくら身体が若々しくても、今年96になる彼女だ。過酷な環境下では大変な事になりかねない。」

アマギH(了解。いざとなったら俺達が命を張って恩師を救い出しますよ。)

ミスターT「ありがとう。でも無理無茶するなよ。」


 アマギHとの通話を終える。俺は話題が話題なだけに、本店レミセンの2階に待機している。店舗は他のレディ・マスターに任せ、俺達家族はそれぞれ独自に動いていた。



ミスターT「なあメルデュラ・・・。」

メルデュラ「何ですか?」


 今もネットワークによる情報収集などに明け暮れるメルデュラ。その彼女の傍らで未着火のタバコを銜えながら、呆然と天井を見つめている俺。目の前が真っ白と同時に、何時爆発を起こしてもおかしくない状態だった。


ミスターT「もし・・・こちらにまで被害が及んだ場合、俺とは関係が一切ないと言い切れよ。この関係も俺からの一方的な押し付けだと語ってくれ。」

メルデュラ「ですが・・・。」

ミスターT「最悪、命懸けでシェヴを助ける事になるかも知れない。その時お前達を犯罪者の妻達とは言わせたくないから。」


 アマギHが語っていた、命を張って助けるという言葉に同調した。ヴァルシェヴラームの命に危険が迫っているとあれば、例え彼女の弟子達である警察機構全体を敵に回してでも助ける覚悟だ。


メルデュラ「大丈夫だとは思いますが・・・。それに逮捕に踏み切るなら、一番厄介物の存在だった三島ジェネカンや躯屡聖堕チームに矛先を向ける筈です。その方が抗争相手の弱体化が図れて、結果的に2社の優勢が確定的になりますから。」

ミスターT「確かにそうだな・・・。」

メルデュラ「言わばシェヴ様の不当な逮捕は、間違いなくこちらへの揺さ振りです。目の前が見えなくなった相手を潰す事など容易いもの。私達の出方を見ているのですよ。」


 俺を安心させると同時に、今現在の状況分析と手っ取り早い手段を述べだすメルデュラ。よくよく考えればヴァルシェヴラーム本人を逮捕する意味はない。あるとすれば俺達への揺さ振りと捉えた方が正しいだろう。


メルデュラ「それにシェヴ様は絶対屈しませんよ。私達の厳しくも心優しい偉大な母なのですから。獅子は静かに牙や爪を研ぎ澄ませて待つ、私はそう確信してますので。」

ミスターT「ありがとな・・・。」


 本職とも言えるコンピューター関連に目覚めたメルデュラは、凄まじいほどの直感と洞察力を身に着けていた。シュームに匹敵する見定めた千里眼は、確実に物事を捉えているだろう。彼女の現実面の理論的解釈と労いにより、心が少し楽になっていった。




ウインド「マスター、大丈夫ですか?」


 それでも呆然とし続けるのは言うまでもない。メルデュラの情報提供に耳を傾けつつも、自分を抑えるのに必死であった。そこに警察機構トップのウインドとダークH、そして参謀のリュリアが訪れてきた。彼女達を見つめると、自分の中で抑えていたものが一気に爆発する。


 突発的だった。身体が無意識に動いていた。彼女達に一気に詰め寄り、ウインドとダークHの喉元を左右の手で掴み締め上げる。それに驚愕するメルデュラとリュリア。


ミスターT「どの面下げて現れたんだ・・・。お前達はシェヴを恩師と称える弟子だろうに・・・。それが何だこの一件は・・・、事前に流れは感じていたんじゃないのか・・・。」


 自分でも信じられないぐらいの強い殺気と闘気を放出し、ウインドとダークHを凝視する。それに一瞬にして青褪めて恐怖に慄く2人。傍らにいるリュリアが静止しようとしても、俺の殺気と闘気が極限に近いため手出しができない。


ミスターT「所詮は官僚主義か・・・。テメェらだけ無事なら周りはどうでもいい・・・。それが数え切れない師恩を与えてくれたシェヴでさえ裏切るのだからな・・・。返答次第では命がないと思え・・・。」


 俺の強烈極まりないドギツイ殺気と闘気に、涙を流しながら震え上がるウインドとダークH。あまりにもの恐怖に2人とも失禁してしまい、身体をガクガク震え上がらせていた。それでも俺の怒りは収まりそうにない・・・。



シューム「馬鹿な事は止めなさいっ!!!」


 突然拳が俺の頬を直撃する。その勢いで吹き飛ばされ、一緒にウインドとダークHも飛ばされた。床に倒れ込む俺に覆い被さるかのように倒れる2人。その2人を自然的に抱き締め受け止める動作をしている自分がいた。身体の方は普段の俺であり、心だけが暗黒面に陥っている状態と言える。


シューム「何を考えているのよ、2人がそんな事する訳ないじゃない。リュリアから聞いているわ、無力さを噛み締めて我慢し続けていたと。そんな2人を貴方は責めるの?!」


 身体は胸の中でただ恐怖で泣き続けるウインドとダークHを抱き締めつつ、心の方は呆然とシュームの言葉を聞き入っていた。ラフィナの時のように、目の前に火花が飛び散っている。


シューム「シェヴ様の不当な逮捕は私達を揺さ振らせようとするもの。その下らない一件で貴方が原点を見失ったら、私達はどうするのよ・・・。それこそシェヴ様に誓った約束を破る事になるのよ・・・。」


 泣きながらその場に座り、俺の頭を優しく膝に乗せるシューム。今さっき殴り付けた頬を痛々しそうに撫でてくる。しかし俺の頭は呆然としており、ただ話を聞き入るしかなかった。


シューム「心こそ大切なれ。そして誰彼がどうこうではなく、テメェ自身がどうあるべきか。貴方は何度も口癖のように言っていた・・・。それを崩そうとするのが奴等なのよ。奴等の策略に振り回されちゃダメ・・・、自分自身の誓願に耳を傾けて・・・。」


 シュームの渾身の説得に、ようやく目が覚めだす。それを窺った彼女が、優しく頭を撫でてくれていた。


 間隔空けずにシュームの手を優しく払い、俺は渾身の一撃を自分に放つ。右手握り拳を自分の顔面に思いっ切り叩き付けた。それにシュームは元より、胸にいるウインドとダークHが一番驚いている。


ミスターT「・・・ごめんな、ウインド・ダークH。お前達を見た瞬間、目の前が真っ白になった。気付いたら首を締め上げてもいた。それに怒りに身を任せ続け、思いたくもなかった事を口にした・・・。この顔面への一撃を以て、詫びに代えさせてくれ・・・。」


 相当強い一撃だったのか、鼻がムズムズしだした。右手を遣ると鼻から血が垂れていた。しかも両鼻からである。それだけ今のは強烈な一撃だったようだ。その在り得ない現状に、ウインドとダークHは再び怯えだしている。


ミスターT「この傷は気にするな。怒りに身を任せ、無関係だったウインドとダークHを心から怖がらせ悲しませたのだから。このぐらいの傷では代えにも至らないと思う・・・。」

シューム「馬鹿ね、全て知っているわよ。シェヴ様が心から愛して育てた愛娘達なのよ。それこそ忘恩と言えるわ。2人は身を呈して貴方の怒りを静めたのよ。感謝しなさいね。」


 シュームの言葉にウインドとダークHが大泣きしだした。その厳しくも労いがある言葉は、紛れもないヴァルシェヴラームの言葉そのものだ。今となっては第2の偉大なる母となった彼女の言葉は、愛弟子達には痛烈に響くのだろうな・・・。


 今も泣き続けるウインドとダークHを優しく抱き締め、頭を撫で続けてあげた。無関係の2人を悲しませてしまったのは、俺の紛れもない罪なのだから・・・。


    第4話・5へ続く。

 理不尽・不条理の概念に対しては、相手が誰であろうが激昂して一撃を入れる。風来坊の劇中のミスターT君も、他の探索者や苦労人と同じ感じですね。まあ、リアルの自分の一念も混ざっている部分もありますが・・・。


 人もとい個々人は、何らかの揺ぎ無い信念と執念を持ち合わせている。それは個々人で変わってきますが、自分は劇中の彼と同じ“理不尽・不条理の概念”への痛烈な怒りと憎しみを持っているとも。ここは今後も曲げずに貫きたいものですわ。

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