第4話 不意の逆襲1 未来を見据えた戦い(通常版)
新たな家族としてメアディルが加わった。というか12人の妻達とリュアとリュオに凄みのある雰囲気で迫れたら、承諾する以外に逃げ道はない・・・。
あの後、周りの計らいでメアディルと一夜を過ごす事に。それに彼女のアメリカ仕込みというのか、凄まじい攻めにバテバテである・・・。
それよりもメアディルの年齢は30歳。義理の娘のヴェアデュラより6歳年上なのだが、その彼女が新妻候補というのだから本当に狂っているとしか言いようがない・・・。
う~ん・・・色々な意味で課題が残りそうだ。それに彼女のご両親に何と言えばいいやら。勝手に物事を運んだ事に、エラい後悔もしている・・・。
そんな身内での出来事とは裏腹に、情勢は徐々に悪化していった。安堂不動産の臨時的な回収が尾を引いて、どういう訳か裁判沙汰まで発展していったのだ。これには遠くイギリスで静養中のナツミA達は大激怒していた。
だが今は彼女達には休息を最優先して貰い、こちらはこちらで何とかするしかない。あともう少しでナツミAの体調も軌道に乗りそうなのだから、ここで無理無茶しては全く意味がなくなってしまう。
ちなみに、シェヴィーナ財団の日本進出が財界に大激震を与えた。ある意味三島ジェネカンよりも知名度が大きいのだ。アメリカ・ロシア・ヨーロッパで最強の企業という事が頷ける。
また今は三島ジェネカンとの提携は行わず、独自に動いて貰う事にしている。表向きは全く関わりのないように見えても、内側と根底はお互いに信頼し切ってはいるが。
それに・・・俺自身がシェヴィーナ財団の社長令嬢と関係があるしな・・・。更に過去を振り返れば、三島ジェネカンの社長令嬢だったエリシェを娶っているのだから・・・。両者と両社が結び付くのは自然的な流れだろうか・・・。何とも・・・。
水面下では裏工作でフルプレとフルエンがボロを出す事をし向けている。これは躯屡聖堕チームの実働部隊というだろうか、殆ど特殊部隊と言える。悪く言えば暗殺部隊とも・・・。
この実働部隊のリーダーは、何とヴェアデュラが担っている。表向きのリーダーはアマギHとユリコYなため、彼らの顔に泥を塗るような事はできない。
それに隠密業とも言えるように、素顔を隠す言動がとても上手いヴェアデュラだ。これは目に見えない覆面を着けていると言っていい。
俺が薄々予測した通り、ヴェアデュラも第2の覆面の風来坊として活躍する事になるとは。女性だからやってのける事なのだろうな。流石としか言い様がないわ・・・。
「ふむ・・・。」
「裁判沙汰は回避できませんね・・・。」
本店レミセンの2階にあるコンピュータースペース。サーバースペースとも言える。そこでメルデュラと共にモニターと睨めっこ状態が続いていた。
今調べているのは、例の安堂不動産関連の裁判関係だ。もちろんこれらは2社のデマから発展していった妨害工作なのだが。
「そもそも公平なジャッジを下す裁判にデマを流し、それを鵜呑みにして動くという自体おかしいですよね。」
「まあ2社の連中にすれば、言葉巧みに丸め込むのは得意だろうし。」
皮肉にも話術ではフルプレとフルエンの方が優れていると言える。でなければ今のような災厄には至らなかっただろう。これがプラスの方へ働いていれば、2社は類を見ない大企業へと成長していただろうにな。
「政治は何をやっているのでしょうかね・・・。」
「正直な所、その国で一番力があるものは企業だからね。その企業同士の戦いとなれば、介入はし難いだろう。2社からすれば、政界も手を着ければ確実に力は増すと理解しているだろう。でもその分、民間からの大反発は免れない。」
「故に企業間抗争、という事になる訳ですか・・・。」
「どちらにせよ、馬鹿げた争いだよな・・・。」
正直な話、こういった争いが世界中のグローバル社会を崩しかねない。今はそれどころじゃないというのが実状なのに・・・。内紛ばかり繰り返しているのだから、民間から愛想を付かれるのは目に見えている。
「まあともあれ、俺達は俺達のやるべき事をするだけだ。目立たなくてもいいさ。裏方で周りを支えられる存在になれればね。」
「縁の下の力持ちも大変ですねぇ・・・。」
俺達の戦いは誰にも評価されないだろう。それに評価されるために行っている訳じゃない。ヴァルシェヴラームが悲願を抱く、世界中から孤児を無くす。これを少しでも実現するため、その通過点での争いなのだから。
「もっとも・・・よりよい社会にするためには、政治にも頑張って貰わないとね。」
「いっその事、貴方がなってみては?」
「国会が全員覆面の人物で溢れ返るぞ・・・。」
「フフッ、言えてます。」
お互いに冗談を言いつつも、行動は真剣そのものだった。今現在の情勢は圧倒的にこちらに不利である。それこそ三島ジェネカンの総力を挙げれば、2社など簡単に叩き潰せるのだが。それでは奴等と同じ存在になってしまうしな。
相手が悪と分かれば、こちらは善の心構えで挑むしかない。それがどの様な流れになろうとも、結果的に大願へ近付けるのなら行うべきだ。
それに今の目線では批難を受けようとも、それが数十年・数百年後には一変する。変人とも言われようが、未来を見据えた戦いが必要なのだ。
俺の存在が全てに役立てれれば幸いだ。俺の生き様を刻む戦いとは別に、周りを命を懸けて守り抜いたという実証が刻めるのだから。
まあでも日頃からの言動も必要なものだろう。その瞬間を戦うのではなく、自分自身という意思を持つ生命体が終焉を向かえるまでが戦いの場である。
不思議なものだ。25人の娘達の父親となってから、より一層周りを支えたいと思うようになっていった。彼女達を支えたいという事よりも、他の全ての人を支えたい。
それが俺が今も演じている覆面の風来坊という存在の、事実上最後の戦いであろうな。
第4話・2へ続く。
過激さを増していく世上と。何処か今のリアル世界に当てはまる感じですが・・・。劇中を描いたのは2009年頃なので、12年経過した今でも変わらないのですよね・・・。
人は、歴史とは、繰り返されるもの。敬愛する恩師の痛烈な言葉が、今ほど当てはまる時はありません。故に、個々人で頑張らねばならない時なのでしょうね。自分も奮起せねば。




