第2話 脅威の存在4 写真撮影(キャラ名版)
訪れたのは駅前の写真館。数年前に規模を拡大した写真屋である。しかも数々の撮影用の衣服を保持しているため、擬似のイベントを模した写真撮影が大好評であった。
ここを運営している店長は、ナツミYUの教え子であるセアリム=オオツカ。彼女の父は写真家として有名なトーマス=オオツカである。
元シークレットサービスでも有名なトーマスO。トーマスCやライディル達の後輩に当たる存在でもあった。もちろんナツミYUの後輩でもある。
シークレットサービスや警察内という一般公開されない部分を、トーマスOは写真として世間に広めている。一時期は同僚に非難を浴びたのだが、その時の立役者はもちろん愛しの母親ヴァルシェヴラームであった。
彼女の存在は2つの機構を震撼させるほどの存在故に、トーマスOの行動は一瞬にして暗黙の了解で行われる事となったようだ。
まあ元祖シークレットサービスに孤児院の覇者と伝説を打ち立てるような存在だ。罷り通るのは過去においての実証から成り立っているのだから。
このタブーな行動があったからこそ、今の住民とのコミュニケーションが高く評価されたのである。トーマスOの行動は師匠たるヴァルシェヴラームの先見性がある行動と同じと言えるだろうな。
本当にヴァルシェヴラームは偉大である。彼女こそ真の風来坊と言えるだろう。その彼女の息子としていられる事を、俺は心から誇りに思う。
ミスターT「うぃ~っす。」
セアリム「あら、いらっしゃいませ。」
店舗を拡大するに当たって、エリシェとヴェアデュラに力を借りる事になったセアリム。先見性がある目線を大切にするのは当たり前で、この2人のアドバイスを最大限取り入れた。故に今の写真館が存在するのだから。
セアリム「シューム様もご一緒となると、もう一度という事でしょうか?」
ミスターT「ああ、簡単なのを頼むよ。」
セアリムも俺達の事を把握する人物の1人。まあナツミYUの直弟子とも言えるのだから、こちらの内情を把握するだろうな。
撮影スタジオの裏手にある控え室。ここは着替え室にもなっている。セアリムはカメラの設定などに取り掛かり、俺はシュームと共に衣服の着替えを行った。
シューム「・・・簡単に願いを叶えてくれる、嬉しい限りです・・・。」
ミスターT「いや、リヴュアスの労いでもあるんだがね。俺は2社との今後の流れを巡らせていたからさ。」
シューム「そうでしたか。」
ウェディングドレスを着用する場合は、補佐に2人ぐらい必要である。しかし一度覚えた事に対して、シュームは凄まじい順応を見せ付けている。俺が軽いサポートをするだけで、着用が難しいウェディングドレスを簡単に着こなすのだから。
ミスターT「・・・正直さ、お前の姿を見るのが辛い。」
シューム「貴方や娘達と違って、老化が現れているからね。」
ミスターT「・・・本当はこれが現実なんだけどね。俺や娘達が異常すぎるんだよ。」
シューム「でも・・・貴方は私達の要望を必ず叶えてくれる。本当に嬉しいです・・・。」
40代を過ぎた辺りから、徐々に肉体の老化が訪れてくる。今年シュームは55歳。5年後には還暦を向かえる事になる。老いていく12人の妻達、老いていかない俺や娘達。この差は非常に辛い・・・。
ミスターT「・・・お前達も肉体の老化が訪れない特異体質だったらな・・・。」
シューム「大丈夫よ。身体にシワが現れても、心にシワを作らなければいいだけだから。」
ミスターT「ごめんな・・・。」
ウェディングドレスを纏ったシュームを優しく抱きしめる。すると蓋を開けたように涙が流れてきた。50を過ぎた辺りから、涙腺の締めが緩くなっているわ・・・。
シューム「大丈夫、大丈夫だから。」
常々日々に強き給え、それを実践しているのが12人の妻達だ。最近は俺の方が弱く思える。些細な感情の上下があると、直ぐに涙が溢れてくるのだ。
そんな俺を慰めてくれるのも12人の妻達である。彼女達にどれだけ心を支えて貰った事か。
その後、完全にウェディングドレスを身に纏ったシューム。俺も黒いタキシードを脱ぎ、白いタキシードを着用する。そして控え室を出て、写真撮影に望んだ。
ここの写真館は2つの方法で写真撮影ができる。本来なら写真写りを良くするために化粧をするのだが、ここでは化粧をせずに撮影する事もできた。
シュームもその1人であり、化粧をして望む事をしない。というか50を過ぎた辺りから、化粧をする事を一切止めたのだ。
セアリム「化粧をしないで美貌を維持できるのは凄い事ですよね。」
ミスターT「シュームの成せる業物だろうな。」
50代になったシュームが化粧をしないで美しさを維持している。それにセアリムは驚きを隠せない。かく言う俺の方も同じである。
シューム「最近は妹達も化粧をする事を極力控えていますよ。ありのままの姿でいる事がどれだけ素晴らしいかを知ったようです。」
ミスターT「素顔を隠している俺とは大違いだよな・・・。」
化粧は言わば覆面に近い。本来の自分を化粧で隠し、美しく見せようとするのだから。俺も覆面の風来坊と呼ばれる故に、本当の姿は何処にあるのかと思う事もある。
シューム「貴方はいいの、今のままでも十分魅力的だから。男性は化粧をしなくても高齢になるまで美貌を維持できるからね。その最もたる存在が貴方よ。」
ミスターT「美貌、本来の姿か・・・。」
シュームの言葉が痛烈に胸中に響く。自分のあるべき姿は何処にあるのか。これは今までの人生の中で一番強く響く事であろう。
今では覆面の風来坊の異名と容姿は完全に定着し切っている。三島ジェネカン・躯屡聖堕チームのメンバーでは、俺の姿を知らない人物は一切いない。
地元だけになるが、俺の姿を知らない人物もいない。覆面を着けた人物の生き様が、根強く広がっているとも言える。
しかし・・・過去に12人の妻達に言われた事がある。2人きりの時は素顔でいてくれと。この写真撮影もそうではないのかね・・・。
シュームに改めて大切な事を教えられた。その時の俺のあるべき姿に戻れと。既に人生の半分が過ぎ去ったのだ。そしてその半分は覆面の風来坊としているのだから。
俺は後頭部に手をやり、覆面の金具を外す。そして頭にある覆面をゆっくり取り外した。それにシュームは勿論の事、初めて素顔を見るセアリムは驚愕している。
ミスターT「この時は俺も化粧を外そう。ありのままの姿で望むのが、本当の姿を言えるから。」
シューム「・・・ありがとう。」
2人の時の約束、素顔のままで。それを実践したため、感無量と言わんばかりのシュームであった。
セアリム「・・・こんなに男前だったとは・・・。」
ミスターT「お嬢さん、俺に惚れると火傷するぜ。」
顔を真っ赤にしているセアリムに口説き文句を語る。すると間隔空けずに傍らにいるシュームにどつかれた。
シューム「もう・・・焦がすなら私だけにしなさい。」
ミスターT「フフッ、そうだね。」
女性に対しての口説き文句をも素直に受け止めるシューム。それだけ今のこの瞬間が心に焼き付いている証拠であろう。俺の方も嬉しくなるわ。
その後写真撮影を開始。本当の結婚式の一部分としての撮影、その意味合いを込めて。俺達の関係上、結婚はできないのだから。
何れエシェラ達とももう一度撮影する事になるだろう。今度も素顔の自分で挑みたいわ。それこそが本当の行動であろう。
第2話・5へ続く。
本当の結婚式は無理という事から、写真撮影で済ます流れと。端から見ればコスプレに見えなくはないですが・・・。それでも、一時の願望を達成できたのでしょうね。
そして、次話からが本線に回帰する形です。他の覆面シリーズでは、冒頭から登場している彼らが漸く登場する感じですね。それに、流浪人でも挙げていますが苦痛の描写もあります。リアルで本当にあった出来事を、回復する結末に仕立て上げた流れと。
まだまだ頑張らねばと思う今日この頃です。