第14話 最終話・覆面の風来坊2 母親の膝枕(キャラ名版)
中央公園へと到着した俺とシューム。歩きながら色々と雑談もしたが、息抜きとしては十分だろうな。
シューム「あの・・・何故ここへ?」
ミスターT「今更で申し訳ないが、膝枕をしてくれないか。家だと何を言われるか分からない。ここなら恋人同士に見えるだろうから。」
シューム「あ・・はい、分かりました。」
着用していたコートを芝生に引き、その上にシュームが座る。俺は彼女の膝に頭を乗せた。突然の言動に彼女は意味が分からなそうな表情を浮かべている。
ミスターT「ああ・・・思い出すわ・・・。」
シューム「え?」
シュームの膝枕に厄介になり、暫く思い耽った。その心地良さに過去の思い出が甦りだしていく。徐に語った言葉に、シュームは小さく驚いてもいた。
ミスターT「記憶を失ってから働きに出るまでの1年間、孤児院で過ごしていた。孤児院の庭先でシェヴと一緒に遊んだ事も。こうして膝枕もしてくれた・・・。」
シューム「あ・・そうでしたか・・・。」
ようやく俺がしたい事を把握したシューム。言わばこの場合は彼女に甘えたいという現れだ。それを後から知った彼女は、徐に両手を俺の肩へと回してくる。
ミスターT「なあ・・・お前達が構わないなら、シェヴを家に呼びたいんだが。」
シューム「いいじゃないですか、呼びましょうよ。」
ミスターT「努力の塊のような存在だからなぁ・・・、本当の息抜きができればいいが。」
シューム「大丈夫ですよ。」
俺達全員の母親的存在のヴァルシェヴラーム。今度は俺達が彼女を労い尽くす番だ。今まで孤児院の長老として君臨していた彼女に、本当の師恩をするために・・・。
ミスターT「それと膝枕をしてくれと言った理由は他にもあるよ。」
シューム「それは何です?」
次の発言をしだした俺に、その答えを待つシューム。徐に右手を上げて彼女の頬を触り、肩に置かれている手に沿えた。
ミスターT「お前は俺の妻でもあるが、リュリアの母でもある。つまり俺の義母になる訳だよな。シュームが義母と分かった時、無性に甘えたくなってさ。シェヴもそうだが、お前も俺の母親だから。」
シューム「そうだったのですか・・・。」
俺の本心を知ると、肩に置かれている両手に力が篭る。母に甘えたいという部分を察知したシュームは、今まで見た事がないような慈愛溢れる表情を浮かべている。
ミスターT「・・・少し寝ていいかな?」
シューム「あ・・はい・・・。」
ミスターT「ありがとう、母さん。」
そう語ると急激に眠気に襲われる。そのまま瞳を閉じて夢の中へと旅立っていった。この時、頭に水滴が垂れたのに気付く。母と呼ばれて歓喜の涙を流す、シュームらしい。
夢の中は自由な世界。しかしそれらは全て幻であり非現実である。幾ら自由でも現実逃避でしかなく、夢から覚めれば現実という厳しい風当たりを受ける。
ここ最近はヴァルシェヴラームと遊んでいた頃の夢を見る。その殆どは彼女に叱られたり怒られた記憶が多いのだが・・・。まあそれも今となっては懐かしい思い出である。
しかし思い出されるのは15歳以降の事だけ。それ以前は夢にもでてこない。エシェラを守って院長室から落下した際に記憶喪失になったが、これは過去の記憶と夢も奪っていったのだろう。
過去にエシェラと一夜を共にした時、過去の苦節が夢となって出てきた。その時も6歳時のエシェラではなく、26歳時のエシェラがでてきたのだから。当時の状態を聞いて頭に憶え、そこに銃弾を受けた時の記憶と重ねたのだろう。人間の脳は実に不思議なものだ・・・。
だが決して後悔はしていない。あの時エシェラを守らねば、彼女が俺と同じ運命に辿っていたのだろうから。下手をしたら死んでいたかも知れない。銃弾からエシェラを守った瞬間もそうだ。あの瞬間の行動は、紛れもなく院長室の出来事と被っている。
それでも今こうして生きている。周りから助けられ、こちらも最大限助けた。これらが積み重なり今に至る。
俺の生き様は今後も続く。命を張って愛しい人や大切な人を守るのだ。それが覆面の風来坊の最後の旅路である。
ふと夢から覚める。徐に目を開けると、今も膝枕をしてくれているシュームがいた。しかし異常に賑やかな事に気が付く。周りを見ると、何と他の6人と15人の娘達がいたのだ。
それに噂をしていた偉大なる母、ヴァルシェヴラームもいる。これには流石に驚いた・・・。
シューム「起きた?」
ミスターT「何か凄い事になってるが・・・。」
メルデュラ「シュームさんを連れてお楽しみに行ったのかと思ったのですがね。」
ミスターT「フフッ、これも十分お楽しみに近いよ。」
皮肉を込めて語るとメルデュラが膨れ顔になる。しかし俺の笑顔を見たためか、彼女も何時になく爽やかな笑顔を見せている。
ヴァルシェヴラーム「貴方を育てて49年、長いようであっと言う間だったわね。」
ミスターT「そうですね。」
ヴァルシェヴラーム「こらっ、敬語は止めてって言ったのに。」
ミスターT「自然体だから仕方がないよ。」
ヴァルシェヴラーム「フフッ、それもそうね。」
何げない会話だけで意思の疎通ができてしまう。それだけヴァルシェヴラームとの相性は、間違いなく最高と言えるだろうな。
ヴェアデュラ「お父さん、お母さんもこちらに住まれるので?」
ミスターT「ああ、シェヴが構わないならと思っているんだが。」
先ほどシュームに語った内容を俺が寝ている間に全員に話していたようだ。それにこの上なく喜んでいるヴェアデュラ。彼女の実の母は分からないが、引き取った時の最初の母親はヴァルシェヴラームだからな。
ヴァルシェヴラーム「あら、私もいいの?」
ミスターT「シェヴが構わないのならだけどね。」
ヴァルシェヴラーム「私よりも彼女達よ。夜の営みを邪魔しちゃ悪いでしょ?」
冗談を踏まえた発言に、7人の妻達は赤面している。今もムードメーカーや小悪魔的存在は健在のヴァルシェヴラーム。流石としか言いようがない。
ヴァルシェヴラーム「冗談よ。ありがとう、嬉しいわ。」
ミスターT「今度は俺達がシェヴ・・・いや、母さんの面倒を見ます。俺達を陰から支えてくれていた貴方を、俺達全員で守らせて下さい。」
俺の発言に周りは頷いている。ヴァルシェヴラームの存在は、今の俺達の存在を確定させた偉大な存在である。その彼女を労わらねば、忘恩となる事は間違いない。
ヴァルシェヴラーム「ありがとう・・・本当にありがとう・・・。」
泣きだした彼女を優しく抱き締める。胸の中で泣く彼女は、とても偉大な母には見えない。リュアやリュオみたいな幼い子供に見えるだろう。
ただ泣き続けるヴァルシェヴラームを胸に抱きながら、余韻に浸る俺達。周りの子供達も静かに見守ってくれていた。
第14話・3へ続く。
家族構成がドエラい事になっている現状@@; しかし、家族の絆は凄まじいものでしょうね。何年も共に歩みを進めた先の幸せは、何ものにも代え難い代物に昇格しますし。
ともあれ、詳細描写が無く、更に思った事を綴った風来坊本編なのが何とも><; これを大改修すれば、更に良い作品にはなるとは思います><; 何とも(-∞-)