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覆面の風来坊 ~不二の盟友に捧げる者~  作者: バガボンド
第2部・純愛
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第13話 大家族3 父親として(キャラ名版)

ラフィヌ「いいよなぁ・・・ヴェア姉さんにはお父さんがいて・・・。」


 ヴェアデュラと和気藹々に食事を取る姿を、羨ましそうに見つめる10人の娘達。エシェラの娘達は公式に実の娘としているが、他の10人は孤児扱いとしている。


 だが実の所は10人とも俺の血が流れている。これを語る時はそう遠くないだろう・・・。


ヴェアデュラ「でも実際に血は繋がっていませんよ。」

エリム「いてくれているだけで幸せです~。」

ラフィカ「甘えられる人がいるのは羨ましいです。」

メルテュア「私達は孤児で引き取られたので、お父さんの温もりは知りませんし。」


 それぞれの娘達が父親を欲している事を痛烈にアピールする。その言葉を聞くだけで、俺は居た堪れなくなる。


シェナ「でもさ・・・お母さんはいるんだよ。それで孤児というのはおかしくない?」


 むむ・・・話の本質に触れだした。エシェラの娘を除く10人の娘達は、孤児として突き通している。しかし5人の母親が存在するのは事実、それで孤児と言う現実はおかしすぎる。


メルテュナ「何だか私達の雰囲気が・・・お父さんに似ているのは・・・。」

シェラ「もしかして・・・お母さんの相手って・・・。」


 薄々気付いてきたのだろう、俺が父親だという事に。それはエシェラの娘を除いた10人に凄まじい勢いで伝染していく。双子故に考えている事が伝わるのか、それとも父親が全員俺であるから伝わるのか・・・。


 ・・・これはもう・・逃げられないな・・・。




 食事を終えると、徐に頭の覆面を取り除く。それに驚愕した表情を浮かべる13人。彼女達には今まで素顔を見せた事がない。今回が初めてという事になる。


 それに・・・真実を話す時だけは、覆面の風来坊の俺ではない方がいい・・・。


ミスターT「・・・今まで騙して悪かった。エシェラとは夫婦という事を公にしているが、他の5人とも関係がある。ヴェアとエシェラの娘達もそうだが、10人の父親は俺だよ。」


 どんな結果になってもいい、語る時は来たのだから・・・。それを固唾を飲んで見守る6人の妻やリュリア。表情は何時になく堅く重苦しい。


 沈黙が辺りを支配する。10人の娘達には、あまりにも厳しすぎる現実だ。エシェラは公の夫婦仲だが、他の5人ともなれば常識を逸脱した事になる。


 これは間違いなく愛想を尽かれるだろう・・・。しかし・・・彼女達を心から愛しているのは間違いない・・・。




エリア「・・・やっぱり・・小父様がお父様だったのですねっ!」


 沈黙を破ったのはエリシェの娘の妹の発言だ。表情は今まで見た事がないような明るさ。それが伝染していくかのように、周りの娘達にも移っていく。


シェナ「やっぱそうだよ、思った通りだよっ!」

シュリナ「赤ちゃんの時に、小父さんの声を何度も聞いた憶えがありましたし。」

メルテュア「小父さんを見て他人とは思えませんでしたから。」

ラフィカ「嬉しい~っ、お父さぁ~んっ!」


 真実を知った10人の娘達は感極まって抱き付いてくる。1人や2人ならまだしも、10人同時に抱き付いてくる様は脅威そのもの。押し倒され圧し掛かられ、殺されると思うほどだ。


 それでも彼女達の心の内を知って涙が出てくる。俺の最終的な問題、娘達への真実を語るという最大の難問。それを見事に乗り越えた証拠だ。


 俺は人目を気にせず泣いた。泣きながらも娘達をあやすが、それでも涙は止まらない。今の瞬間は紛れもない、俺の人生で最高の瞬間だ・・・。



 涙をハンカチで拭く娘もいれば、抱き付き甘える娘もいる。一緒になって賑わい続ける娘もいれば、貰い泣きをしている娘もいた。


 彼女達には俺の血も流れている。それは紛れもない血を分けた家族という証。最終課題を乗り越えた俺にとって、次の課題は彼女達の絶対的な幸福の確保だ。まあ先程までの悩みに比べたら、まだまだ甘く耐えられるものだが。



 俺の命を懸けて誓う。この13人の娘は、もれなく幸せにさせる。危険が迫れば身を呈して守り通す。彼女達の幸せを築くのが、覆面の風来坊の最後の務めだ・・・。




 2階の部屋に戻っていった13人の娘達。あの後1人ずつ抱き締め、頭を撫でてあげた。この抱擁は父親としてのものだ。今までは顔見知りの小父さんという形だったから・・・。満面の笑みを浮かべて胸で甘える彼女達。その表情に心の底から癒された・・・。


 3階の部屋には6人の妻とリュリアがいる。7人とも酒を飲み、先程の余韻に浸っている。俺は相変わらず酒は飲めず、黙々と紅茶を啜った。



リュリア「兄さぁ~ん、よかったですねぇ~。」

ミスターT「ああ・・・。」


 リュリアもかなりの酒好きで、他の6人に負けじと酒豪のように酒を飲みまくっている。この7人には先が思い遣られるよ・・・。


シューム「だぁ~からぁ~・・・だいじょぉ~ぶといったでしょぉ~。」

エリシェ「そうですよぉ~。」

エシェラ「あの子達は・・しっかり弁えています・・・。」


 心の内を語る飲んべえ6人。支離滅裂な言葉を語ったり、途絶え途絶えの語りをする。しかし発言内容はどれも明確だ。


メルデュラ「これでぇ~・・・本当に家族としてぇ~・・・過ごせますよぉ~。」

ミスターT「そうだな・・・。」


 周りがどうこうじゃない、今の幸せを素直に幸せと取る。それが俺のすべき事だ。俺を父親として認めてくれた娘達だが、今後必ず壁としてぶち当たる事だろう。その時は命を懸けてでも彼女達を守る。



リュリア「私もぉ~兄さんの子供ぉ~欲しいなぁ~・・・。」

シューム「おうおうっ、いいねぇ~。あんたぁ~、リュリアも身篭らせなぁ~!」

ミスターT「何言い出すんだ・・この酔っ払い・・・。」


 とんでもない事を語り出したリュリア。それに便乗するシュームや周りの妻達。まるで俺を生け贄のような目で見つめている。このままだと遅かれ早かれ、無理矢理にリュリアと一晩共にしろと言いかねない・・・。


ミスターT「エシェラも何とか言ってくれ・・・。」

エシェラ「・・・許しますから、・・・家族増やしましょう。」


 うわ・・・目が据わってる・・・。普通なら冗談じゃないと突っ込むだろうに、それをしない所は彼女らしいと言うか何と言うか・・・。


ミスターT「流石に母娘を娶る事はできない・・・。」

シューム「結ばれたいとぉ~シュームがぁいうのだからぁ~、応じなさぁ~い!」

エシェラ「母さん・・・そこリュリアと言って・・・。」

ミスターT「ハハッ・・・。」


 ダメだ・・・支離滅裂と化したシューム。また他の6人もどんどん酔いが回り、支離滅裂になっていく。これ以上の会話は止めた方がよさそうだ・・・。



 俺に抱き寄ってくるリュリア。何時になく胸が当たり、野郎心をくすぐられる。それを感じ取っている6人も、態とくっ付けようと躍起だ。


 これで俺も酒が飲めていたら、考えただけでゾッとする・・・。周りからのアプローチに任され、リュリアと一晩共に過ごして無理矢理1つになるのだろう。というか6人も一緒にしたいとか言い出すに違いない。


 しかし大家族としてお互い認め合い、子供達からも認められたのだ。もはや無粋な考えなど持ち合わせる必要などないだろう。だからといって押し通す訳にもいかないが・・・。




 その後も飲み会は続く。更に飲み続ける7人は、ベロベロになるまで酔いまくった。その姿は野郎そのもの。女性とは思えないほどの乱れっぷりだ・・・。


 だが7人の心中はよく分かる。俺が娘達に父親だと告白する事が不安で仕方がなかったのだから。しかし告白が無事成功し、父親として認められたのだ。この瞬間だけは彼女の好きにさせてあげよう。


 リュリアとの子作りは拒否したいが、彼女達が許してくれるかどうか・・・。




 様子を見にきた娘達が、部屋の入り口で7人を見つめている。泥酔い状態の母親達を見つめ呆れ顔である。かく言う俺も娘達に苦笑いをするしかない。


 その後は13人の娘達も参加して、大賑わいしだす。酒は娘達全員飲めないが、ジュースや紅茶を片手に騒ぎ続ける女性陣。これはもう・・・間違いなく山賊だ・・・。




ミスターT「今この瞬間を大切に、か・・・。」


 ふと自然に呟いた。形はどうあれ、幸せな家庭を築けたのは確かだ。いや、これからも難関は迫ってくる。でも・・・必ず全員幸せにしてみせる・・・。


 徐に覆面を頭に装着し、今も飲み続ける7人と便乗して騒ぐ13人の娘を優しく見守った。


 俺の生き様をここに・・・、原点回帰をここに刻みながら・・・。




 ちなみに結局6人から押し通され、リュリアと身体を重ねる事になった。彼女も俺の子供を作りたいと躍起になっている。


 それから約1年後、リュリアに子供が生まれたのは言うまでもない。しかも恐ろしい事に双子の女の子だった。これで俺の娘達は15人へと膨れ上がった事になる。何とも・・・。



 全員女の子という事実から、何れは彼氏を連れて俺に結婚の申し出をしてくるのだろうな。その時どういった対応をすればいいのやら・・・。う~む・・・何とも・・・。


    第2部・第14話へと続く。

 実の父親である事を打ち明ける、と。まあ、現状が現状なだけに大変ですが(-∞-) それでも、最後に幸せに行き着くなら一種の布石かも知れません(小説内限定@@;)。


 次の話で第2部は終わりです。続いて最終部の第3部へ。この第3部が実質的に“原点回帰”となります。覆面の風来坊を描く切っ掛けとなった、今は亡き盟友達へ捧げる絆の話。


 拙い作品ですが、今後とも、お付き合い下さいませm(_ _)m

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