第13話 大家族2 家族団欒(通常版)
「ただいま~。」
暫くするとリュリアが戻ってくる。今年で24歳になる彼女、警察官という夢はしっかりと掴み取ってる。格闘術がウインド達よりも凄まじく、簡単に打ち負かせてしまったぐらいだ。
「あのじゃじゃ馬娘が大きくなったよなぁ・・・。」
「まだまだ未熟者ですよ。お母さんを超えるような存在になるまでは気が抜けません。」
母親に負けじと巨乳を誇るリュリア。おそらく家族内で1・2位を争うぐらいデカいんじゃないかね・・・。野郎として嬉しい限りだが、その視線を感じ取った6人からエラい殺気が放たれもする。
「またリュリアの胸ばかり見てる・・・。」
「セクハラよセクハラ。」
「そんなに巨乳が好きなのですか・・・。」
「・・・野郎の性の息抜きぐらいさせろよ・・・。」
胸を見るのが息抜きかは微妙だが、野郎の性からは逆らえない。それに彼女の胸は事実デカいのだから。何とも・・・。
「でも嬉しいです、女として見て頂けるのは。18歳前半まで女の子としてしか見て頂けていませんでしたから。」
彼女の発言は事実だった。急激な成長は18を過ぎた辺りからだった。遅い成長とも言うべきか。一気に目覚ましい体躯へと成長していき、それが今の彼女を構成している。格闘術もそこから強くなっている。
「まあそれでも、ここはどこまでも純粋無垢を願っているよ。」
「ありがとうございます。」
リュリアの左右の胸の間へ右手握り拳を突く。無論人差し指の部分を軽く叩く程度だ。本当に叩きもしたら手痛い竹箆返しが来るだろう。これは心こそ大切なれ、そう言う意味合いだ。
昔も今も労いは忘れない。相手を思い遣っての行動は俺の原点回帰だ。それで相手が少しでも救われるのなら、俺の生き様は間違ってはいない。
「フフッ、相変わらずですね。」
「今も全く変わりません。」
俺の無意識の労いに、周りは嬉しそうな表情を浮かべている。あれから10年経過した今も変わらずの俺が嬉しいようだ。
「でもいい加減に挙式した方がいいですよ。」
「籍も入れなければ結婚もしない。もう踏ん切りを着けてもよろしいかと。」
41になった今でもエシェラと一緒になっていない。愛の結晶はエシェラや他の5人とも存在しているが、表向きの入籍や結婚は一切していなかった。それを行ったら今現在が崩れるとも分かっている。
「家庭は外見の形だけじゃないよ。中身がしっかりしていればいい。」
「それはそうですが・・・。」
「心に決めた人はエシェラだが、5人も俺の大切な人だ。6人とも平等にするなら、俺が1人に的を絞らなければいいだけの事。」
既にモラルもクソもない状態なのだが、現に幸せな家庭は築けている。6人とも家族そのものだ。その娘達も姉妹当然の間柄。これ以上の幸せを持っても意味は全くない。
「貴方らしい。だからこそ今も私の心を掴んで離さないのです。」
「シューム様が仰っていた、心から愛していれば夫婦になれる。表向きには他人同士でも、心はお互いに繋がり合っていますよ。」
「そうだな。」
もう悩むまい。今後彼女達全員を幸せにするのが、風来坊としての俺の最後の戦いだ。これを完遂してこそ、俺の生き様が全て刻めるのだから。
「実の所、エリシェとラフィナはこっちの道に進んでよかったのか?」
今日の厨房担当は俺だ。カウンターに7人が座り、昼食を取っている。俺自身も今では結構な腕前を持つに至り、周りからは人気が高い手料理を振舞った。
「何を今更と言ったご質問ですね。」
「意志はエシュリオスさんとエフィーシュさんに継いで貰っています。今の私達はいかに人に尽くせるか、そこが大きな目標です。」
プロの歌手だったラフィナ、バイオリニストの卵だったエリシェ。その栄光ある道を捨ててまで、人に尽くす仕事に就いた。そこに至るまでの経緯は俺も一役買っている。
「今が一番充実しています。心にあった不安を見事に解消させて貰いましたし。」
「お2人とも、何度か相談して来られました。というか私達で相談を受け合ったりも。」
「ごめんな、そこまで気が回らなかった。」
俺の発言に回りは黙り込む。まあ当時は罪悪感で胸が一杯だったのが実情だった。周りへの細心の気配りまでは回らなかった事を悔やむ。
「気にしないで。元はと言えば私達がでしゃばった真似をしたのが原因なのですから。」
「マスターには責任はないよ。」
「だかなぁ・・・。」
重苦しい雰囲気に駆られる俺の姿を見ると、何とエシェラがカウンター越しに乗り上げてキスをしてくる。一歩間違えばそのまま厨房に突っ込んでしまうような勢いだ。
「魔法のキスです、罪悪感が薄らぐように・・・。」
恥じらいながらも目線はしっかりと据わっている。今まで彼女達の重荷を半分持つつもりで行ってきた癒しの厚意の1つでもある。今や彼女達に定着したと言っていいだろう。
「ずる~い、私も~!」
全員30代という美丈夫なのに、まるで子供のような言動をする。俺を厨房から通路を伝って引っ張りだすと、我先にと唇を奪いだす。まるで唇争奪戦だ・・・。
ちなみに便乗してリュリアも唇を奪ってくる。昔ながらの勢いも相まって、シュームが2人いるような感じだわ・・・。
偶々昼休みでお客さんがいなかったからいいものの、誰かいたら大変な事になる・・・。この7人のパワーには恐れ入るな・・・。
今日は早めに本店レミセンを切り上げ、家族全員で食卓を囲もうという事になった。部屋は3階の俺とヴェアデュラの部屋だ。リビングは建物の中で一番広い。
夜6時頃に遊園地から帰ってきたヴェアデュラ達。お土産片手に大賑わいだ。保護者同伴としてのエシェツは、その後カシスとのデートだという。恋多き年頃は若々しくて羨ましい。
今夜の食事は鍋物となり、すき焼きとなる。人数からして鍋を4つ用意する状態に・・・。これが毎日続くのだ、食費やら何やらは尋常じゃないほどだった・・・。
見かけによらず食欲が尋常じゃない娘達。あれよあれよと鍋の中身を平らげていった。副食としてサンドイッチや野菜サラダ、果てはスパゲティなども用意してある。だがそれら全て彼女達の血肉と化していった・・・。
「・・・俺の食う分が・・・。」
常時食事を運んだりを繰り返しているうちに、全ての料理は彼女達の胃袋の中に消えてなくなった。これでは完全に山賊だ。食い逃げされたも当然と言えるだろう・・・。
「お父さん、一応取っておきました。」
「あ・・ああ・・・すまない。」
大食いと見せ掛けて、サンドイッチとスパゲティを確保してくれたヴェアデュラ。こういった部分はしっかりしているんだよなぁ・・・、嬉しい限りだ・・・。
「遊園地は楽しめたかい?」
「はい。皆さん大はしゃぎで喜んでいました。」
サンドイッチを頬張りながら、昼間の事を聞きだした。彼女が語るには充分楽しめたようである。しかしまだ11歳という若さなのに、姉的役割を押し付けてしまった事には罪悪感が残ってしまう。彼女も遊びたい年頃だっただろうに・・・。
「ごめんな、お前だけに保護者を任せてしまって。エシェツに監視役を任せたが、殆どお前に纏め役を頼んでしまったね。」
「気にしないで下さい。お父さんが常日頃から話しているではありませんか。心こそ強くあれと。その部分を踏まえれば、恐れるものなど何もありません。」
流石は俺の娘だ、全て分かっている。遊びも大切だが、妹達の面倒も大切だと。殆ど面倒を見る機会が少なかったが、周りがしっかりとした人材へと成長させてくれていた。これにより育ての親の6人を凌駕するような肝っ玉が据わった女性へと変化したのである。
「お前は誰に対しても誇れる自慢の娘だよ。ありがとう、ヴェアデュラ。」
「お父さん・・・。」
彼女の頭を優しく撫でると満面の笑顔で応えるヴェアデュラ。地元ではショートカットが印象深い女の子として有名である。何よりも覆面の風来坊が育てたという女性として、大変有名でもある。そのうち自分も覆面を着けるとか言い出すんじゃないかね・・・。それはそれで困りものなのだが・・・。
第13話・3へ続く。
女山賊による食事の食い漁り(=∞=) さぞパワフルなのでしょうね><; まあ、この様相で終わる事はありませんが・・・(ニヤリ
そう言えば、風来坊側は外伝風の話が結構ありますが、こちらは本編が完結したらアップできればと思っています。が・・・多分厳しいかも知れません。最大の理由は、“アッチの描写”があるためで@@; 大問題ですよね><; それ以外のなら大丈夫そうですが、何ともまあです(-∞-)