第12話 故郷の戦い3 果てしない思い(キャラ名版)
お客さんが全員帰ったため、本店レミセンを閉店し今日の営業を止める6人。俺は先に3階へと上がり、ベッドに横になる。久し振りのマスターの行動に疲労感が上がったようだ。
一切言葉を交わさない6人の心境は後で分かるだろう。身体から発せられるオーラの存在がそれを物語っていた。
ミスターT「お疲れ様。」
暫くすると6人が部屋に現れる。それにリュリアも一緒だ。13人の娘達は既に就寝しているようである。
徐に起き上がる俺に、真っ先に向かって来たのはリュリアだった。駆け付け様に抱き付き、そのままベッドに押し倒された。
リュリア「う~ん・・・お兄さんの胸、あったか~い・・・。」
先程の店内での抱擁は序の口だったようだ。これが彼女の本性だろう。この仕草に6人から凄まじいまでの殺気が放たれる。次の瞬間彼女達も飛び掛ってきた。
エシェラ「会いたかったよ・・・。」
シューム「あぁ・・・懐かしい・・・。」
エリシェ「全く変わられませんね・・・。」
メルデュラ「今の現状から、子供達の前では感情を出せませんでしたし・・・。」
ラフィナ「どれだけ我慢していたか・・・。」
シンシア「嬉しいなぁ・・・。」
身体全体での圧し掛かりは厳禁と踏んだのか、周りを取り囲むように顔だけを俺に向ける。リュリアだけが胸を独占しているが、まるでそれを黙認しているかのようであった。
ミスターT「エシェラはロングヘアーが目立つし・・・。」
エシェラ「こ・・これでも気に入っているのですけど・・・。」
エシェラはトレードマークのショートカットがロングヘアーになっている。幾分か老けたようだが、その優しい眼差しは全く変わらない。
ミスターT「ラフィナは色っぽくなり過ぎだよな・・・。」
ラフィナ「お・・煽てたって何もしませんよ・・・。」
ラフィナは一際美しくなった。まあ出産したのが昨年だ。母親になった事で、女性として磨きが掛かったのだろうな。
ミスターT「エリシェは遠くから見ればエシェラと見間違うよ・・・。」
エリシェ「間違わないようにして下さい・・・。」
初めて会った時からロングヘアーを貫いているエリシェ。そしてエシェラがロングヘアーになり、髪の色も殆ど同じ事から見間違うほどだ。姉妹と言われてもおかしくない。
ミスターT「あの小柄なシンシアが、今じゃ5人と変わらないぐらいの姿には驚いた・・・。」
シンシア「そ・・そりゃぁ・・・大きくなろうとしてますから・・・。」
6人の中で一際小柄だったシンシアだが、今では大差ないほどにまで成長している。母親になった事で、より一層磨きが掛かったとも言えるだろう。
ミスターT「シュームさ、お前さん老けたよな・・・。」
シューム「まぁ、女に対して失礼よっ!」
熟女になりつつあるシュームに老けの事を語ると、顔を赤くして反論してきた。それでも目は据わっており、5年前と全く変わらない。
ミスターT「メルデュラは相変わらず大きいよなぁ・・・。」
メルデュラ「もうっ、どこを見てるんですか・・・。」
母親になる事で、以前よりも増して落ち着いた雰囲気のメルデュラ。相変わらず反則的な胸に惹かれるのは野郎の性だろう。
リュリア「お兄さ~ん、私は~?」
ミスターT「リュリアも胸が大きくなったよな・・・。」
冗談半分で語ると6人からデコピンの一斉攻撃を喰らう。間違いなく嫉妬であろう。しかし否定はしていない筈だ。事実リュリアの胸は見違えるほどにまで大きくなっているのだから。何とも・・・。
ミスターT「・・・それでも、みんな変わりなくてよかった。」
エシェラ「貴方は全く変わりませんよね。」
メルデュラ「シェヴさんから伺いました。貴方も特異体質だったと。見た目が5年前から全く変わらないですから。」
30歳前後の容姿で外見の変化が止まる特異体質。ヴァルシェヴラームがそれであったが、俺も同じだと彼女から告げられた。
シューム「その体質は大歓迎よ。あっちの方も何度もできるから・・・。」
ミスターT「何だかなぁ・・・。」
体力の衰えがないのは、彼女達にとって好都合だろう。つまりこれから取って喰われるのは目に見えているという事だ。実に怖ろしい・・・。
リュリア「でも・・・どんな姿になっても、お兄さんはお兄さんのままがいいです・・・。」
ミスターT「ありがとう。」
一同の胸中を代弁するかのようにリュリアが語った。それに頷いている6人。それに素直に感謝する俺。いや、素直に感謝できたのだろう。俺自身も歳を取った証拠かな・・・。
明日も平日とあり、2階へと戻っていく彼女達。唯一フリーなシュームが残り、バルコニーに出て一緒に一服していた。
エシェラは保育園の副園長を担っており、殆ど休みなく動き回っている。疲れを知らないのか、動く方が楽だとも語っていた。ヴァルシェヴラームに似てきているわ。
ラフィナはエリシェと共に福祉業を中心に活動している。専らエリシェの秘書的役割だが、二人三脚で大活躍していると言う。こちらも休みがないと語っていた。
エリシェはラフィナのサポートを受けて、福祉業の運営を担っている。三島ジェネカンの運営にも携わっており、実質上代表取締役に近いのか。
シンシアはターリュとミュックと共にマンガ家として動いていると言う。あのじゃじゃ馬双子がマンガ家とは、実に驚きである。締め切り日が近いとあり、明日から大変だそうだ。
メルデュラは全てのレミセンの総合オーナーとして活躍している。エイラ達の方が先輩なのだが、俺の妻という事で担がれたらしい。それを苦と思わず挑む彼女には脱帽である。
リュリアは前にも述べた通り、警察官になるため猛勉強中である。それに実戦訓練も行っており、後数年もすれば立派な警察官になるだろう。
ミスターT「なるほど、子育てを一気に引き受けているのか。」
シューム「朝と夜は妹達と一緒にしっかり時間を取って食事を取りますが、それ以外の面倒は私が見てますよ。」
孤児だったシュームが13人の娘達の世話を一気に引き受けている。セルディムカルダートに受けた師恩を返すためか、その努力する姿はヴァルシェヴラームにも似ている。
シューム「本当に・・・貴方は全く変わりませんね。」
ミスターT「褒められているのか貶されているのか分からんがね・・・。」
シューム「フフッ、そうですね。」
煙草を吸い終えると、そのまま俺の胸に顔を埋めてくる。俺も煙草を消すと、ソッと彼女を抱き締めてあげた。
シューム「あぁ・・・この温もり・・・全く変わらないです・・・。」
ミスターT「お前の方は少し背が伸びたね。」
以前はエシェラよりも少し背が高かったが、今では俺と握り拳1個分の差しかない。胸に顔を埋めては来たが、その頭は首に当たっているぐらいだ。
シューム「ラフィナちゃんの出産を終えた後、やっと悲願が叶ったと痛感しました。ヴェアちゃんも含めると13人の子供達ですが、これで本当の家庭が築けたと思っています。」
ミスターT「シュームには感謝の連続だよ。エシェラ・シンシア・メルデュラ・エリシェ・ラフィナの事を最大限サポートしてくれた。本来なら俺が傍にいるべきなのに・・・。」
シューム「いらっしゃったとしても、出産には立ち会えませんし。それに今はシュリムとシュリナがデリケートな年頃になりつつあります。そのうち貴方を遠ざけるようになるでしょう。」
ミスターT「そうだよな・・・。」
問題多き年頃の娘は、エラい反抗を見せてくる。母親には心を許す事が多いそうだが、逆に父親には心を許さない事が多いと言う。必ずしもこの限りではないが、子供が成長するための通過点でもあろう。
シューム「でもね・・・ヴェアちゃんは貴方を心から慕ってますよ。あれだけ安堵の寝顔を見た事がありませんから。」
ミスターT「背中を軽く叩いて頭を撫でたら、一瞬にして父親だと思い出したしなぁ・・・。」
先程の店内でのヴェアデュラの言動には驚かされ続けた。ヴァルシェヴラームから子育てを任された時から、まるで運命に導かれたかのような巡り逢いに近い。
シューム「エシェラちゃんと同じですね。彼女の場合は女性として接していますが、ヴェアちゃんの場合は娘として接していましたし。」
ミスターT「血が繋がっていないのも要因か・・・。」
シューム「あと数年もしたら、貴方の虜になるでしょうね・・・。」
未来を巡らしているシューム。俺もその現状を思い浮かべると、何と彼女から殺気が放たれ出した。便乗して先の事を思っただけなのに・・・。今から嫉妬心剥き出しでいられては思い遣られる・・・。
そんな彼女の顔を優しく持ち上げ、目と目を見つめ合った。部屋は電気が消えており、街灯の明かりしかないこの場。それでもお互いを感じる目線は暗闇をも凌駕している。
ミスターT「これからもみんなに平等の愛情を注いでいくよ。周りに嫉妬を抱かれても、その場限りでは目の前の愛しい人が大切な人だから。」
シューム「うん・・・そう言ってくれると嬉しいです・・・。」
瞳を見つめ合うと、静かに唇を重ねた。それにどこまでも応じてくる彼女。背中を軽く叩き、頭を優しく撫でながら。それに情熱の口づけを以て返してくるシュームだった。
シューム「フフッ、5年分の勇気を貰っちゃいました・・・。」
長い情熱の口づけを終えて、満足そうに胸に顔を埋める。本来ならシドロモドロになる俺であろうが、彼女達からのアプローチで鍛え上げられていたようだ。
ミスターT「ホンッと可愛いよな・・・。」
シューム「も・・もうっ・・・、煽てたって何もしませんから・・・。」
ミスターT「心からの本音を言ってるんだよ。あのリュリアもお前に瓜二つになりつつある。肝っ玉が据わって、どこまでも純然と前へと進んでいる。お前がいたから彼女が生まれたのだから。」
少し力強く抱き締めると、色っぽい声を挙げる。無論表に出ている事から、大きな声ではないのだが。
ミスターT「生まれてきてくれてありがとう。愛してるよ、シューム。」
シューム「あぁ・・・あり・・がとう・・・。」
心の篭った労いに声を押し殺して泣き出す彼女。その我慢させる思いを、もう一度口づけをして発散させた。それに心の篭った口づけを返してくる。
今の瞬間は目の前のシュームが心から愛しいと思える大切な人なのだから・・・。
身体が冷えだしてきたので、室内へと戻った俺達。俺が窓を閉め切ったのを確認すると、突然彼女の方からベッドに押し倒してきた。そのまま先程以上の口づけを繰り出してくる。そこには5年間の思いが全て込められているようだ。俺も心から応じねば失礼極まりない。
その後は何度も彼女に求められた。下の階では他の女性陣が寝ているため、大声を挙げないようにさせるのには苦労したが・・・。それでも彼女の応じに素直に応えられる俺に、自分自身が一番驚いていた。
今夜はシュームの為すがままにさせてあげよう。5年間もの間、俺の名代として活躍してくれていたのだ。その彼女に最大限の感謝と労いを込めて・・・。
翌日からは他の5人からのアプローチを順に受ける事になった。順序は決めたくはないが、裏で彼女達が決めたようだった。これには素直に従うしかない。
エシェラ・ラフィナ・エリシェ・シンシア・メルデュラの5人も、シュームに匹敵するかのような求め方だった。それだけ5年間我慢していたのだろう。
シュームとエシェラを除く4人は子作りの夜があったが、それでも我慢し切れない感情は切々と伝わってくる。
シュームにも語り心中に決意した、分け隔てない平等な愛情を注ぐ事。それを心の底から行ってあげた。
俺の体調の事など今は関係ない。彼女達の心の隙間を埋められるのは、俺以外に存在しないのだから・・・。それが俺の最後の戦いであり、これからも続く永遠の戦いである・・・。
第2部・第13話へと続く。
故郷に帰還後も、引っぱりだこの様相(-∞-) ハーレムは続きます(何@@; ただ、彼らの幸せは、着実に近付いていますね。
小説ならではの展開ですが、その本質は他者を敬い・労い・慈しむ事。今の世上に必要不可欠な概念ではないでしょうか。あの時、盟友達は命懸けでそれを顕現していましたからね。
今後も頑張らねばと、当時の作品を見て思う今日この頃です(=∞=)