第12話 故郷の戦い2 家族との再会(通常版)
「ただいま~。」
「あれ・・・誰もいない・・・。」
厨房で食器や調理器具の掃除などをしていると、店内に入ってくる人物があった。5年の月日により成長したリュリアと、今では普通に歩いているヴェアデュラだ。
リュリアは5年前と見違えるほどに成長している。特にシューム縁の胸の大きさは健在だ。それにヴェアデュラも6歳になったと思われるが、初めて会った時のリュリアを彷彿とさせる容姿に驚くばかりである。
「あ・・・姉ちゃん、台所に誰かいます・・・。」
「え・・・ええっ?!」
ヴェアデュラが俺に気が付く。その言葉にリュリアもこちらを向いてくる。俺を見ると驚愕した表情を浮かべだした。
「誰もいなかったから厨房担当してるよ。」
一旦作業を終えると、そのまま2人の元へと歩み寄る。今も驚愕し続けるリュリアを見て、ヴェアデュラは不思議そうな表情を浮かべている。
目の前まで行くと、リュリアが抱き付いてきた。6年前のエシェラ達のような泣き顔にはならないが、感情を表に出しての抱擁である。
「何時・・・帰られたのですか?」
「今さっきだよ。久し振りに帰ってみれば誰もいないし。お客さんに店を任せて彼女達は駅前の店舗に行ってるとも。」
「ごめんなさい・・・。」
「いや、お前のせいじゃないから安心してくれ。」
我が身のように反省しだすリュリア。この言動は5年前では考えられないほどである。5年間という月日は、お転婆娘をお淑やかな美女へと成長させるには十分だったようだ。
「姉ちゃん、この人誰?」
リュリアとの久し振りの再会を抱擁で味わっていると、徐にヴェアデュラが語り出した。その言葉に俺はショックを受ける。まあ覚えてないのも無理はない。最後に会ったのが1歳の時だからな・・・。
「フフッ、ヴェアちゃんのお父さんだよ。」
「え・・・ええっ?!」
何ともまあ・・・リュリアと同じ反応をするヴェアデュラ。おそらくこの数年間、リュリアと一緒に行動していたからだろうな。
俺はリュリアとの抱擁を終えると、ヴェアデュラと同じ目線にまで腰を下げる。5年前はまだ赤ん坊だった彼女が、今ではリュリアと変わらないお転婆娘か・・・。何とも・・・。
「大きくなったな、ヴェア。」
「・・・本当に・・お父さんなのですか?」
「5年前はまだ赤ちゃんだったからなぁ、覚えてないのも無理はないか。」
俺はソッと彼女を抱き締める。そのまま胸に抱いて持ち上げた。う~む・・・結構重いな。あのヴェアデュラがここまで大きくなるとは・・・。
言葉では表せないため、優しく背中を叩き頭を撫でてあげた。幼少の頃からずっと行ってきた癒しの行為だ。
「あ・・・お・・お父さんだ・・・お父さんだぁ・・・。」
俺の行動で思い出したのか、泣きながら呟くヴェアデュラ。生まれて間もない頃に抱き締めた事を、まるで鮮明に記憶しているかのような表現である。
泣き続ける彼女の背中を優しく叩き続け、そして頭を優しく撫で続けた。言葉は要らない、この行為に全てを込めて・・・。
「リュリアも料理できるのか。」
「はい。お兄さんがアメリカに行かれた後、私も母さんや姉さん達に習いました。」
泣き疲れて寝てしまったヴェアデュラ。その彼女を胸に抱き続ける。その俺の代わりに厨房にはエプロン姿のリュリアが立つ。一端に喫茶店のマスターが似合うほどに成長している。
「一応調理師免許は取得してますよ。2年間の実技訓練に、国家試験を受けましたから。」
「凄いな・・・。俺は確か・・・過去の数年間の実技訓練の経験が特例的に通り、国家試験だけで通ったっけ。」
「常日頃から努力なされている証拠ですよ。」
う~む、実に行動派なリュリアだ。元来から我武者羅に突き進む姿がウリなだけに、前向きな姿勢は何よりの強力な武器になるだろう。
「そう言えば警察官になるんだっけ?」
「ですよ。ライディルさんやナツミYUさんの計らいで、実戦も含めた訓練もしてます。」
「殆どシークレットサービスに近いんじゃないか・・・。」
「エヘヘッ、そうとも言います・・・。」
はにかみながら語るリュリア。今年19歳になる彼女は、まだ警察官になっていないのに。何だかライディル達に無理強いさせているみたいで悪い・・・。
それでも見違えるほどに成長したリュリアには、感動を覚えるしかなかった。彼女なら必ず夢を実現させる。何たってあのシュームの娘なのだから・・・。
「終わったぁ~・・・。」
それから数時間が経過、お客さんは全員帰られた。誰もいない店内で、俺とリュリアは雑談を繰り返していた。ヴェアデュラは相変わらず胸の中で寝ている。余程心地が良いのだろう。
そこにエシェラ達が帰ってくる。ラフィナ・エリシェ・シンシア・シューム・メルデュラも一緒で、傍らには幼い子供達も一緒である。間違いない、この子達は彼女達との間に生まれた子供だ。
「あ・・・。」
カウンターの近くでヴェアデュラを抱きながらいる俺に真っ先に気付いたシューム。それが伝染するかのように、他の5人にも伝わっていく。流石に泣き顔にはならないが、その表情から歓喜が滲み出てくるのが痛烈に分かる。
一気に駆け寄ろうとする6人だが、胸でヴェアデュラが寝ている事に気付き思い止まる。う~む、彼女がいなかったらどうなっていたやら・・・。
「初めまして。お母さん達の古い友人のミスターTと言います。」
6人とリュリア、そしてヴェアデュラは俺の素性を知っている。しかしエシェラの双子の娘も含める12人は、俺との素性を一切明かしていない。明かせない理由が今はあるが、何れ語る時は来るだろう。
「・・・シュリムです。」
「シュリナと言います・・・。」
唯一挨拶をしてくれたシュームの双子の娘、シュリムとシュリナ。他の子供達は黙ったままである。まあ初対面の知らない覆面オッサンに、心を許すのは滅多な事じゃない限り在り得ないだろう。単に幼いから表現力が備わっていないのも考えられるが、間違いなく前者が合っている。
しかし・・・12人の娘達か、何とも言えない光景だ。シュームがカンで語った双子の娘の出産話。それが6人ともなれば、合計12人になるのだから・・・。
ヴェアデュラも含めると13人、まるで13人の円卓の騎士みたいだ・・・。いや、13人の円卓の美女が相応しいか・・・。う~む・・・。
「ほらほら、もう遅いから寝なさいな。」
「はぁ~い。」
「おやすみなさ~い。」
そう言うと2階へと上がって行く12人。一番下の双子はシュリムとシュリナが補佐している。この連携は凄まじい。
「ヴェアちゃん、もう寝るよ。」
俺の胸の中で眠るヴェアデュラを、今度は自分の胸に移動させるリュリア。一瞬目を覚ましたのだが、再び眠りに入っていく。
その後俺の顔を見つめ、小さく頷くリュリア。そのまま彼女も2階へと上がって行った。
第12話・3へ続く。
5年の月日は、全てを変えていく、でしょうか@@; 家族の絆を題材とした同作なので、この調子が続く感じです@@; まあ、ハーレムに関しては、一種のネタですが><;
それでも、同作の根幹は、盟友達に捧げる絆の物語。昔も今も、そしてこれからも全く変わりません。今後も頑張っていかねばと思う今日この頃です(=∞=)