第11話 それぞれの愛1 シュームと双子の帰還(キャラ名版)
シュームの出産を無事終えた俺達。その夜は計画通りにエシェラと子作りに挑んだ。彼女の心からの希望とあって、できる限り身体を重ね合う。
シュームとの時よりは過激ではなかったが、静止を取り除いた彼女は貪欲までに求めてきてくれた。まあ男女間の最終課題でもある子作りなのだから、貪欲に動かなければ授かる事はできない。
結局彼女とは数十回に及ぶ求め合いを繰り返した。何振り構わず動くというのは、案外爽快なものだ・・・。実に皮肉な事だな・・・、何とも・・・。
それから2週間後の5月半ば、シュームが双子と共に退院してきた。本来なら1週間前後で退院できるそうだが、子供の事を考えて長めに過ごしたようである。
本店レミセンに戻ってきたシュームと双子。付き添いのメルデュラが荷物を持ち、シュームは双子を抱えていた。
ミスターT「おかえり。」
シューム「ただいま。」
端的な言葉のやり取りなのに、以前よりも増して心が篭り合う。女性の大事業を終えた彼女に無意識に労いの一念を抱く。それを直ぐに感じ取っているかのようだ。
シューム「ほら、この子達が貴方との子よ。」
徐に双子を俺に託してくるシューム。俺は細心の注意を払いながら、生まれて間もない双子の赤ちゃんを胸に抱いた。この2人の重さが命の重さだ。俺の命を懸けてでも、守り通さなければならない。
ミスターT「可愛いよなぁ・・・。」
胸の中で抱く双子を見つめる。スヤスヤと眠っている2人が、過去にヴェアデュラを抱いた時とダブった。そして無意識に涙が溢れ頬を伝う。2人を見ると俺の生き様がそこにあると思わざろう得ない。
その後は子供を抱きたいと語るエシェラ達。メルデュラとエリシェは付き添いでいたため、何度か抱いた事があるようだ。しかし心から抱きたいという意味合いは全員同じだった。
ミスターT「よく頑張ったよ。お疲れ様、シューム。」
遠巻きに幸せそうな表情で見つめるシューム。その彼女に近付き心から労った。彼女を優しく抱き寄せ、静かに唇を重ねる。それに心から応じてきた彼女。
親という存在になる事がどれだけの成長をもたらすのか、俺はようやく知る事ができた。
ミスターT「愛してるよ・・・。」
シューム「私もです・・・。」
人目を気にせず抱き締め合う。目の前の女性が何処までも愛おしい。彼女を通して俺も成長できた。この抱擁に心からの感謝を込めて・・・。
早速厨房に立つシューム。動けなかった分のストレス発散と言わんばかりに、厨房の担当を全面で引き受けている。ウェイター役は俺が担当し、ヴェアデュラや双子はエシェラ達に任す事にした。
シューム「ヴェアちゃんは今年で1歳になるんだよね。」
ミスターT「そう言えばそうだな・・・。」
シュームがヴェアデュラの事を述べてくる。早いもので彼女を引き取ってから1年が経過していた。満1歳になったヴェアデュラは、毎日が新鮮だと動き回っている。
シューム「しっかり育てないとダメですよ。」
ミスターT「俺の方も資金を稼がないとな・・・。」
今は子供が3人になった。徐々に丈夫になるヴェアデュラはまだしも、生まれたばかりの双子は油断が許されない。それに今後の事を考えると、相当数の資金を稼がないといけない。
エリシェ「ああ、大丈夫ですよ。資金面での援助はお任せを。前貸しという事なら問題ないと思いますから。」
ミスターT「すまない。」
エリシェ「その代わり・・・しっかりと宿らせて下さいね。」
不気味に微笑むエリシェ。それに便乗するはラフィナ・シンシア・メルデュラだ。その表情は実に怖ろしい・・・。
シューム「そうそう、エシェラちゃんはどうなったの?」
エシェラ「しっかり妊娠しましたよ。」
そう、つい先日判明した事だった。エシェラもしっかりと妊娠する事ができたようだ。野郎の俺には理解し難い事柄だが、妊娠が分かった直後の彼女の大人びいた姿は忘れられない。
シューム「貴方も大変ですね。」
ミスターT「今更それを言うかね・・・。」
シューム「ごめん・・・。」
俺をからかいつつも激励するシューム。それに皮肉を込めた言葉を語ると、素直に謝る彼女。より一層女らしくなったと言うか、素体に戻ったと言うか・・・。
ミスターT「フフッ、相変わらず可愛いよな。」
シューム「もうっ・・・。」
彼女を労うと頬を染めて視線を逃がす。3児の母親となった彼女だが、まだまだ恋する乙女心は失われていない。
シューム「あ、そうそう。名前はできれば貴方が決めてね。」
ミスターT「ふむ・・・一応は考えてあるが、シュリムとシュリナはどうだい?」
シューム「おおっ、いいじゃないですか。シュリムとシュリナで決まりですね。」
生まれたばかりの双子の名前を一言返事で決めるシューム。というか彼女も色々と考えていたのだろうが、それを表には一切出していなかった。
また殆ど見分けが付かないシュームの双子の娘。しかし目元にホクロがある。片方の赤ん坊には左目尻、もう片方の赤ん坊には右目尻に。これなら見分けが付くかも知れない。
ミスターT「お前が考えた名前もあるだろうに。」
シューム「全然考えてなかったわよ。貴方は私達の関係上、出産時に立ち合えないじゃない。ならばせめて命名だけは貴方に委ねたいの。そうしないと貴方の立場がなくなるでしょ?」
ミスターT「フフッ、仰る通りにします。」
左目尻にホクロがあるのがシュリム、右目尻にホクロがあるのがシュリナ。命名は俺が行ったのだが、名付け親というか見分け親はシュームに任せた。ここは母親が一番役得だろう。
再び日常生活に戻った。数ヵ月後にはエシェラのお腹も膨れてくる事だろうから、その時からが大変になる。それまでは彼女の健康に気を使いながら過ごせるというものだ。
既に2回も出産経験があるシュームに、他の5人は色々なアドバイスを貰っている。女性の最大かつ最高とも言える出産に関しての、ありとあらゆる事を伺っていた。
俺はというと、次に控えるシンシアと念入りな計画をした。妊娠から出産に掛けての順序などを、事細やかに認めていく。
というか相手となる女性の順番はあまり考えたくはないのだが、彼女達からの希望とあらば応じるしかない。実際に出産をするのは俺ではないのだから。
マンガ家への軌道は順調だった。先駆者たるシンシアの助けもあり、短時間で一端のマンガ家へと成長した。まあ人物像などを書くのは得意だったし、その部分が大きな長所だろう。俺も何らかの長編作品を考えるかな・・・。
それから数ヵ月後、エシェラのお腹もかなり膨れてきた。そして実に驚く事がある。それは彼女も双子の女児を妊娠したのだ。これには周りは驚くしかない。
今日は全員して休息を取っている。本店レミセンの3階で雑談に明け暮れていた。ちなみに1階の喫茶店だが、他のマスターが来訪して営業している。
ローテーションを組んでいるため、休日という概念が一切ない。休むときは休む、動ける時は動くがモットーであった。
シューム「私のカンなのですけど、もしかしたら全員双子の女の子を出産する気がします。」
シュームの母親としての長年の経験から語られる言葉、それに青褪める俺。男児だったらまだしも、女児の双子となれば大変な事になる。
エシェラ「そうするとヴェアちゃんも含めて、13人の娘達になりますね。」
ミスターT「やめてくれ・・・。」
西瓜を丸ごとお腹に入れたような雰囲気のエシェラ。今現在の状況自体が未経験で、周りにサポートして貰っての状態だった。しかし表情の方は日に日に女の子から女性へ、そして母へ覚醒していくのが分かる。
エシェラ「そう言えば名前は考えたのですか?」
ミスターT「複数考えたが、仮に双子ばかり生まれるとなると全部使う事になるな・・・。」
スケッチブックの最後に認めた名前の数々。代表的なのを選び、それをリストとして纏めてある。それを徐に語りだした。
ミスターT「エシェラの子がエシェア・エシェナ、ラフィナの子がラフィカ・ラフィヌ。エリシェの子がエリム・エリア、シンシアの子がシェラ・シェナ。生まれたばかりのシュームの子はシュリム・シュリナで決まっていて、メルデュラの子がメルテュア・メルテュナとなるよ。」
多くても2人までだろうと思っていた命名だが、それが双子となるなら全て使われる筈だ。彼女達が指摘した通り、双子ばかり生まれるのならだが・・・。
エシェラ「いいですね。この子達はエシェアとエシェナにします。」
ミスターT「お前が決めなくていいのか?」
エシェラ「だからぁ・・・私達の関係上、出産時に立ち合えないじゃないのよ。だからこそ命名は全て貴方に委ねたいの、分かった?」
ミスターT「わ・・分かったよ・・・。」
エシェラの凄みのある発言に恐縮してしまう。この命名に関しては一貫して俺に決めさせたいようだ。それにこの決め事は身内全員で考えたもののようである。これには素直に従った方がよさそうである・・・。
しかし・・・妊娠したエシェラはシュームみたいな肝っ玉母さんになっているわ・・・。
そんな中、シュリムとシュリナを抱きながら俺に寄り掛かってくるシューム。倒れたのかと勘違いした俺は、慌てて支えようとしてしまった。
ミスターT「お・・驚かすなよ・・・倒れたのかと思った・・・。」
シューム「ご・・ごめんなさい・・・。」
謝る彼女を今度はしっかりと抱き締める。既に床に座っている自分がシュームを抱き寄せ、優しく胸の中へと収める。それに至福の一時と言えるような表情で浸る彼女。今のシュームは人生で一番幸せなのだろうな・・・。
エシェラ「本当に幸せそう・・・。」
ラフィナ「そうですね・・・。」
俺がシュームを抱きかかえて余韻に浸る姿を、他の5人は羨ましそうな視線で見つめる。他の彼女達も何れはこうなるのだろうが、やはり今その瞬間を味わいたいのが実情だろう。
ミスターT「今だけだよ。シュームには今後も頑張って貰わないとね。出産未経験の5人を最大限エスコートする役目があるのだから。」
シューム「任せて下さいな。私にできる事は何でもしますので。」
甘えていたシュームが本気の姿に戻った。2度目の出産を向かえた彼女は、怖ろしいほどに肝っ玉が据わった人物へと成長を成し遂げた。それに期待を寄せる彼女達。ここはシュームに頼らないと、安心して進めないだろう。
第11話・2へ続く。
シューム嬢に愛娘達が誕生。リュリア嬢も含めれば3人の娘ですね(=∞=) とにかく、風来坊は家族愛を主軸にしているので、この流れが続きます@@; 何とも。
ただ、本当の回帰先は、第3部からとなりますが。風来坊を執筆するに当たっての、原点回帰がそこにありますので。とにもかくにも、覆面シリーズの根幹となる概念ですわ。




