⑦「妄想系後輩 その2」
大奥復刻中なので忙しいです……。(ゲームの話)
~少し前~
「失礼しま~す、二年の加藤で~す。……公、いる~?」
「え? ここ、文芸部の部室ですけど……」
「あぁ、ごめん。僕、二年の増田公を探してるんだ」
「あぁ、先輩ですか。先輩ならまだ来ていませんけど……」
「今日は活動日なの? 文芸部って確か、活動日が少ないんじゃなかったっけ」
「えぇ。でも……先輩はほとんど毎日来てくれるんです」
「そっか……じゃあ、伝言を頼まれてもらえないかな?」
「伝言……わかりました」
「あっ。あと、君だけが持っている情報とか無いかな? 情報の売買とかやっててね」
「えっ、じゃあ先輩の情報とかも……」
「うん、仕入れてあるよ――」
◇
「買ってないよな!?」
「え、えぇ。……まだ」
ずっと買わないでくれ、頼むから。
恐らく、あいつは俺が赤っ恥になるような情報までも仕入れているはずだ。友人だから距離も近いし、そういう情報は手に入りやすい環境にある。
……だからって、距離を置くとか、そういうのは違うと思う。
俺は自分の正しさに従う、それが俺の数少ないモットーだからな。
「じゃあ、情報は売った?」
一応、放課後には結構な頻度で一緒にいる。お互い無口な時もあれば、会話を楽しむ時もある。
その中で、少しはお互いの事を知っているはずだ。
「いや、売ってないですよ! ……他の女に知られたくないし」
なるほど、情報を温存しておくのか。情報を独占すれば先程のように、「情報を流す」と脅すことができるからな。
加えて、女子はウワサが好きだからな。
加藤は情報屋として信用できる人としか取引をしないはずだが、情報の流出を防ぐには言わない事が最善だしな。
とにかく、先輩としての威厳(無いようなものだが)を保つために、今度加藤に念押ししておくとしよう……
「あ、そうだ、伝言なんですけど……『今日は早く帰った方が良い』そうです」
「ふ~ん……じゃあ、帰るわ」
やっぱり、自分の正しさに従えば良いんだなぁ!
「待ってくださ~い! 私も一緒に帰ります!」
そう言って、わたわたと帰り支度を始める喜納さん。
「じゃあ、先出てるわ」
「ちょっ、先輩――」
「待ってるから、ゆっくりやれ」
そう言って、俺は廊下に出た。
「……いつか、本当の――」
なに? いつか本当に情報売るの?
「おい、加藤には――」
「行きますよ、先輩っ!」
そう言って背中を押すのは、俺の可愛い後輩。
「あぁ、一緒に帰るか、きなこ」
「……せ、先輩、ワンモア! 録音するので!」
「二度と言わない」
喜納海夜子。俺の、本当に可愛い後輩。
……アイツがいなきゃ、きっと惚れていただろうな。
ヤンデレの片鱗が見えますね。
ちなみに、彼女はハンドルネームに「seanightK」(海夜子)をよく使っています。