③「忍者系友人」
ゲラゲラコンテスト2に参加させていただいています。
それを含めて毎日投稿を目指しています。
朝の教室はいつも通りザワついている。ちらりと見るとアイツも仲良さげに友達と話していて、少し安心した。
四月下旬。暖かくなったことに加え、珍しく朝食を取った俺が走って横っ腹を痛めていつもより汗をかいて登校するのは当然のことだ。
自分の席に腰掛け一息つくと、パッとしない普通の男子高校生が近づいてきた。
「おはよう、ギリギリ間に合ったようだね」
……こいつは、加藤。
「ジャムは美味しかったかい?」
ただの危険人物だ。
「おい、なんで知ってんだよ。誰かに頼まれてあいつのストーキングでもしてんの?」
自称「加藤段蔵の子孫」で、忍術を駆使して情報屋をしており、俺も友人でありながら何
回か顧客として情報のやり取りをしたこともある。
加藤は、依頼された情報を手に入れるためならストーキングや盗聴など、どんな手を使ってでも手に入れる。
そして同時に、情報通をしてのプライドを持っているため決して悪用はさせないし、決して情報を利用しない。
「惜しいよ」
「じゃあ、誰だよ――」
その時、加藤の人差し指が色んな方向を指差し……
俺を指したまま止まった。
「キモイわッ!」
何だよお前、俺のことストーキングしてたの!?
「僕だって……やりたくてやっている訳じゃない!」
逆ギレすな。
「……何だ? じゃあお前は誰かに頼まれたの? そんな物好きいるのかよ……」
「誰かは守秘義務があるから言えないな。……とにかく、きみを尾けていたから君の家に来た人も、その人が持っていたものも分かったというわけ」
……ということは、その依頼者にアイツが俺の家に来たことが伝わってしまうということかよ。
俺はともかく……アイツは勘違いされたくはないだろう。
「悪い、情報を伏せてくれないか? アイツが来たことだけでいいから」
「い、いや、別にそれは……とっくに知っているしなぁ……」
「もう情報伝えたのかよ……」
今朝の情報をすでに伝えてるとは……情報は鮮度が命とは聞いたことあるが、こんな情報に鮮度もクソもねぇだろ。
「いや、そういう意味じゃ……まぁいいや。じゃあ、ヒントを買うかい?」
……確かに、気になりはしている。
加藤に依頼してストーキングさせたヤツ……まったく心当たりがないからな、俺の情報を欲しがるヤツなんて。
「じゃあ、はい、これ」
情報屋に頼めば情報を買うことができる――が、等価交換として情報を売らなければいけない。
「ちょうど欲しがっている人いるんだよね~、ま、同一人物なんだけど」
何々……?
『何フェチ?』
……?
『胸は大きい方がいい? 小さい方がいい?』
え、何これ。知恵袋かよ。
「……説明しろ」
「いや……ほんの一部に需要があるっていうか、なんていうか……」
まあ、これを書けばヒントがもらえるのなら仕方がない。
だがヒントってなぁ……「実在する人物です」とかアバウトなのだったら容赦しねぇぞ……
あれ? ていうか、実在すんの?
とにかく、ヒントをもらうためにしぶしぶ書き、加藤に渡す。
情報を要求しているヤツと俺へのストーキングを依頼したヤツは同一人物らしいし、ヒントで何人かに絞って総当たりでもするか。
そうすれば、加藤に俺のことを調べさせたことを弱みとして俺の何やかんやを広めることはできないはずだ。
「あいよ……」
「はいはいっ……ふ~ん。……ほうほう」
殴りてぇ。
「分かった、じゃあきっと分かるだろうヒントを与えよう。…………つい最近、近づいてきた人だよ」
つい最近、近づいてきた人……まずは今日の記憶を振り返ってみようか。
「やめない。今日もあなたの眠りを妨げてあげる」
「そっ……そうなの! じゃっ! お、おやすみっ!」
「アンタがいつも食べてないって聞いて……朝ご飯作る約束して……」
「っ……! ぜっ……全部食べなさいよっ! それまで学校行っちゃダメだからね!」
「ちょうど欲しがっている人いるんだよね~、ま、同一人物なんだけど」
「はいはいっ……ふ~ん。……ほうほう」
………………そうか。
「……お前、だったのか…………」
加藤が依頼のふりをして俺のことを調べ上げていた。
依頼するやつなんて居るはずねぇし、そう考えれば全ての辻褄が合う。
つまり、コイツは俺が――
「本気で、怒るよ?」
…………マジのトーンだ。
「……ごめんなさい」
何故か分からないが……別の誰かに謝るべきな気がした。