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魔法少女は笑わない  作者: 巫 夏希
第三話 魔法少女同盟結成!
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第三話16 『一つの結論』

 後日談。

 というよりも、ただのエピローグ。

 結局、あの『事件』については、大事にならなかったらしい。何故そうならなかったのか、ということについては幾つか疑問を解消しなければならない点もあるけれど、今のところ、僕が気にすることでもないようだ。クララ曰く、魔法使いの案件は魔法使いに任せておけ――なんて言うけれど。でも、首を突っ込んだからには、結末(オチ)が気になるのもあるんだよな。何とか教えてくれないものだろうか、なんて言ったら、


「それじゃあ、君が魔法使いになるしかないねえ?」


 と、不気味な笑みを浮かべながらそう答えたのだった。何処まで本気で考えているのか、分かったものじゃない。


「でもまあ、カズフミが魔法使いになるのも悪くないの! ……カズフミがやりたくないなら、それはそれで悲しいのだけれど」

「そんなこと言わないでくれよ。別に僕は魔法使いになりたくないなんて一言も……」

「そうなの?」


 目を輝かせながら僕に声をかけないでくれ、何か自分がみすぼらしくなる。


「そうだよ」


 だから、僕は否定する。

 否定したくなかったけれど。肯定したかったけれど。

 しかして、それが正しいことであるかなんて――誰にも分かりやしない。


「それで、君はこれからどうするつもりだい?」


 クララの問いに、僕は首を傾げてしまった。


「どうする、っていったい?」

「簡単なことだよ。これから恐らく魔法使い同士の争いは激しくなってくだろうよ。何せ私達は末端だろうが……あの組織の構成員を殺してしまった。組織に手を出すということは、その先に待ち構えてることは……紛れもなく抗争だよ。それが個人であろうが、団体であろうが、関係ない。彼らが行おうとすることは、ただ単純に『報復』。紛れもない復讐なのだから」

「復讐……ですか。はは、何というか、厄介なことになってしまったような……」

「元からだよ、それは」


 クララは断固として、僕のちゃらんぽらんな態度を否定する。


「魔法使い同士の抗争なんてものは、いつも簡単には出来てない。大体小難しい話になってるのさ。そして、それが起きると……それはお互いの持論のぶつかり合い。それをこなすことが出来る魔法使いが制し、出来ない魔法使いが淘汰される。そうして生まれた先にあるのは……究極的に存在する優劣の価値だ」

「優劣の価値、ねえ……」


 何度言われたところで、それが正しいことであるかなんて分からない。

 持論を持論と決めつけたところで、結論を導き出すことなんて出来ない。

 だが。


「これから魔法使い同士の抗争を続けていくというのなら……」


 今一度、確認しておきたい。


「……やはり、魔法使い以外の人間を仲間にしておくのが良いと思うけれど、どう思う?」


 それは、ある意味賭けに近い行動でもあった。



  ◇◇◇



「簡単にどうにかなるか、ってぐらい難しい話じゃないことは充分に理解出来てることだろう? 私達の『計画(プラン)』は、どういう具合で進んでるかなんて確認してないんじゃないかい? もしかしたら、確認してるだけして、それ以外は全くやってないとかそういう感じなのかもしれないけれど」

「そんなことは断じて有り得ません。我々は魔法使い第一主義として活動してるのですから。魔法使いが魔法使いであるように、魔法使いとして最大限活動出来るようにしてくためのプロセスを組んでく、それが我々の責務なのですから」

「分かってるなら、構いません。……ボスはどうお考えですか?」

「うーん、俺は未だ気になるところがあるかな。相手は数人の魔法使いが徒党を組んでた、ってことだよね? その魔法使いは種類もバラバラ……ああ、でも、姉妹が居たっけか。血縁なら必ず種類は同じ魔法を使うことになるだろうから……。魔法使いが何の目的もなく、徒党を組んでるって、それはそれで面白いことだと思うよ」

「……一応、彼女達は、父親を探す、という目的があったかと」

「父親? ……ああ、黒津空我博士のこと? 確かに彼は我々も探してる存在ではあったけれど……、まさか彼女達は、我々が匿ってると思ってるのかな?」

「或いは、その可能性があるかと」

「……ふむう。それについては、明確に否定した方が良いだろうね。無益な争いはやりたくない。それは、君達だって分かってることだろう?」

「それは確かにそうですが……」

「分かってることなら、もうそれ以上の議論はしない方が良い。お互いの価値観を歪めないためにもね」

「ならば、あの魔法使い同盟に関しては」

「保留、で良いだろうね。未だ我々にとって大きな脅威ではない。勿論、いつかは脅威になる時が来るだろう。その時に備えて、我々は彼女達を監視し続けなくてはならないだろう。まあ、そこまで気にすることでもないかもしれない」

「では、我々は何を?」

「引き続き、二つの目的を満たしてくれ。分かるね? 一つは、黒津空我博士を発見すること。そして、もう一つは――『アレイスターの遺産』を見つけること。それにより、我々は新たなステップへ進むことが出来る。では、宜しく頼むよ」



  ◇◇◇



 帰り道。

 というか、正確には僕の家まで二人が送ってくれているのだけれど。


「……あの、僕も一応男だから、別に送って貰わなくても良いような気がするのだけれど」

「それは駄目なの。だって、カズフミは――」

「『魔法使いの匂い』が染みついてる、からね?」


 二人にそう言われてしまっては、僕も反論することは出来ない。


「まあまあ、別に悪いことでもないだろう? 二人の女性に家まで送って貰える……それがどれだけ素晴らしいことか。私は知ってますよ。例えば、学校の友達に話してみたらどうですか? 今自分は二人の女性と一緒に家に帰ってる、と」


 そんなこと言ったら、場合によってはハブられる。


「でも、カズフミには私が居るの」


 そう言われましても。


「いやあ、やっぱり君は変わってるね。普通の人間なら、そんな態度はしないだろうよ。……案外、君って実は魔法使いの家系だったりしない?」

「魔法使いのマの字も知りませんでしたから、それはないと思いますけれど。というか、そうだとしたら僕は今頃魔法都市なんじゃないですか?」

「いやいや、それが案外そうでもないんだよねえ。ほら、あの子……エレナだっけ? 彼女もそうだったけれど、意外と魔法都市を出てる魔法使いって結構多いんだよね。年に決まった回数魔法都市に戻れば良いだけだし……。だから、魔法使い二世とか結構居るものだよ。それに、魔法使いの血は、決して薄まることはないしね」

「薄まる? それっていったい?」

「魔法使いと人間が子をなしても、その子には魔法使いに覚醒する可能性が非常に高い、ということなの。希に、全く関係ない状態なのに魔法使いに覚醒する特異性魔法使いが居ることもあるのだけれど……でも、九十九パーセントの魔法使いは、自分の父母が魔法使いであることが、魔法都市の研究で明らかになってるの」

「やっぱり、優秀な血筋って居るのか?」

「そりゃあ居るでしょうけれど……、でも、魔法は無作為に手に入れることが出来る。運も実力のうち、なんて言葉もあるけれど、魔法使いが魔法を手に入れる課程というのは、かなり大変なことであるのは間違いない。そして、さっきも言った特異性魔法使いというのは、結構な特徴があって……」

「何だ?」

「……必ず決まって、変革者になる魔法使いが多いのよ」

「……変革者?」

「つまり、既存の仕組みを壊して、新しい仕組みを作ろうとする、ってこと。まあ、大抵は自己中心的な価値観によって仕組みが作られることが多いし、その変革も途中で他の魔法使いが何とかするから、そこまでの大事にはなってないのだけれど……」

「……つまり、そいつには要注意ってことだな。おっ、もう家に着いたからここでお別れで良いよ」


 気づくと、もうマンションの前の交差点までやって来ていた。


「うん。それじゃあ、また明日なの」

「ああ、また明日」

「私もしばらく名古屋に居るから、何処かで会いましょう」

「何処かで……って、そりゃ適当な」


 まあ、そんなことはどうでも良いか――僕はそう心の中で呟きながら、二人と別れるのだった。



  ◇◇◇



 さて。

 ここで一つ、何か忘れちゃいないだろうか?

 エレベーターに乗って自宅のあるフロアに到着すると、エレベーターホールに誰かが立っていた。普通、このフロアに住居を構える人ならば、何度か面識はあるはずなので、大体誰かは理解しているはずだ。しかし、彼女はそうではなかった。少なくとも、このマンションの住人ではなかった。そして、僕は――彼女が誰だか知っていた。


「御園……芽衣子」

「久しぶりだな、かーくん」


 ニヒルな笑みを浮かべて。

 殺人鬼、御園芽衣子が僕の目の前に立っていた。


「……そんな構えるなよー。今回は、かーくんにお礼を言いに来たんだからさ」

「……お礼?」

「簡単なことだよ。俺の濡れ衣を晴らしてくれたろ?」


 晴らすも何も、お前も一件殺しに加担していたような?


「それについては、今はどうだって良い。問題は、『俺がやってもいない殺人を、勝手に俺の殺人だと位置づけられたこと』だ。これが一番ムカついたし、これが一番気にくわなかった。けれど、その感じからして……もうかーくんは事件を解決したんだろう? まあ、俺にはあまり良く分からない分野の内容だったことは間違いねーけれど」

「……話の内容を聞くかい?」

「あー、良いよ。俺、過去には興味ないから」


 それ、矛盾していないか。


「俺の模倣犯が気に要らなかっただけ。……結局は模倣犯でも何でもなさそうだった訳だが」

「……良くご存知で。いったい何処でそれを?」

「殺人鬼というのは、別に人を殺すだけに特化した生き物でもないんだぜ?」

「さいですか……。で? 今日やってきたのは、ほんとうにお礼を言いに来ただけ?」


 だとしたら、とても律儀な気がするけれど。


「ああ、それだけだよ。それと、かーくんにお別れを言っておこうと思ったものでね」

「お別れ?」

「俺は日本各地を飛び回る殺人鬼、って訳。あるときは江ノ島に、あるときは北海道に、そして今は名古屋。……名古屋で仕事をしていくつもりだったけれど、今回の模倣犯騒動でやる気が削がれちまったからな。だから、名古屋での殺人はこれにてお終い。明日からは別の場所に向かうのさ。本日最終ののぞみ号でね」


 新幹線で行くのかよ。

 顔とか割れていないのか?


「という訳で、しばしのお別れを言いに来たって訳。……何だか懐かしい感じがして楽しかったぜ? 名残惜しいのは確かだけれど、久々に夜音に会いに行こうとも思っていたところだったしな……。だから、俺はこれで終わり。後はかーくんのターンだ」

「?」


 すると彼女は僕に一歩近づいて、呟くようにこう言った。


「……少しは、味方のことを気にした方が良いと思うぜ?」

「……え?」


 それから。

 彼女は不敵な笑みを浮かべたまま、僕が乗ってきたエレベーターに乗っていった。

 呆然としている中、そのまま彼女は下に降りていった。

 しばし、彼女の投げた言葉の意味が分からず、ただ立ち尽くしていた。



≪Killer Magician≫ is Happy End.


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