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魔法少女は笑わない  作者: 巫 夏希
第三話 魔法少女同盟結成!
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第三話10 『事件調査、見解②』

「……あー、良いよ。別に動こうとしないで。私がそっちに運ぶから」

「そうなの。最上さんの仕事を奪っちゃいけないの。最上さんは、そういう仕事をして生活してるの」


 それはクレアが言うところではないような気がするけれど――まあ、良いか。


「……で、事件の調査はどうなったんでしたか?」

「ああ、それだけれど、非常に簡単に言ってしまうと……未だ結論は出せないということなのよ」

「……は?」


 いやいや、その結論を出してもらうために、時間をかけて調査してもらったんじゃないのか? もしそうじゃないとしたら、この時間は――本当に名古屋めしを食べに行っただけだっていうのか。


「……ああ。そんな目で私を見ないでくれ、和史くん。私だって、こんなことを言うのは誤りだって分かってるよ。けれど、けれどね。私も頑張ったんだ。それについては、少しは労いの言葉をかけてくれても良いんじゃないかな、って思うんだけれどね? それとも、和史くん、君は結果主義だと言いたいのか?」

「別にそんなこと言っている訳じゃないですけれど……、でも、やっぱり、何かあるじゃないですか。魔法使いには魔法使いなりの持論というか、結論というか、知識というか。最後は微妙に違うような気がしますけれど、ただ、一言言いたいのは、魔法使いだろうが人間だろうが、そんなことは関係ないってことですよね」

「長々と話した割には全く話の内容が入ってこないのだが……。まあ、良いや。今はそれをあれやこれやと言ってる場合じゃない。そうだろう? 私達が知りたいのは、何よりも知りたいことは、今回の事件の顛末だったはずだ」


 確かにそうだ。その事件を解決しないと、何かもやもやするんだよな。魔法使いが関わっているなら、どうにかして解決しないといけないだろうし。


「……やはり、錬金術師か魔法使いが関わってるのは確実だと思うよ。何故なら、手際が良すぎる。こういう事件の一番のネックって、目だろう? しかし、この事件では目撃者が殆ど居ない。監視カメラにも殆ど映ってないみたいな話じゃないか。はっきり言って、それは普通の人間には不可能だよ」

「でも、あの殺人鬼みたいな存在が居たら?」

「あの殺人鬼も警察の目を掻い潜るのは大変みたいな話をしてなかったか?」


 そうだったっけ。


「……後は何だったっけ。ああ、そうか。あれだ。クレアを追いかける組織……ええと、何だっけ? 『魔女狩りの教皇』? それが狙ってそうな何かを見つけてきたって話」

「え? 事件の話はそれでお終い?」

「だってそれ以上に話しようがないし」


 それもそうかも……しれないけれど。


「実は、この名古屋には魔法に関わるある宝が眠ってるっていう情報があるんだ」

「魔法に関わる宝?」


 魔法都市にあるならまだしも、どうしてこんな場所に?


「……アレイスター・クロウリーを聞いたことはあるかい?」


 聞いたことがあるようなないような?


「アレイスター・クロウリーは西洋魔術の祖とも言われてるの。様々な魔術団体が作られてるのも、アレイスターが頑張ったからとか言われてるの。彼が天使から天啓を受けて書いたと言われてる、『法の書』なんてものもあるの。……でも、そのアレイスターがどうかしたの?」

「……この日本には、『アレイスターの遺産』なるものがあるらしいのよ」


 アレイスターの遺産、と。そんなに凄い人なら、遺した物も相当な物なんだろうな?


「それが何なのか全く分からないのよ。……分かったら苦労しない、とでも言い換えれば良いかな?」

「何だって?」

「だから、『アレイスターの遺産』は何なのかはっきりと分かってないの。というか、分かってたらどの魔法使いが狙ってるか一発で分かる物なんだけれどね。もしかしたら、その中身を分からずして狙ってる魔法使いが大半なのかもしれないね?」

「いや、それって良いのかよ?」

「良い、って? 良いはずがないでしょう。魔法使いにとっては、絶対に手に入れたいだろう代物。それがこの日本にあるという。それを手に入れれば、絶対的な権力が手に入るとも、最強の魔法が手に入るとも、それともその両方が手に入るとも、或いは世界が滅亡する可能性があるとも言われてるんだから。それが成し遂げられるなら……きっと沢山の魔法使いがその身を窶して何とかするでしょうね」

「……そんなに凄い代物なのか?」

「分かってないからこその代物と言えば良いでしょうね。噂が一人歩きしてる、と言えば良いのかもしれない。手に入れることが出来れば、それを証明することが出来るのでしょうけれど……、はっきり言ってそれが『出来ない』という証明は出来ない。悪魔の証明、って聞いたことがある?」

「実在しない証拠を提示することはほぼ不可能、って話だったか? でも、それが成立するのはあくまでも現実の代物で、それみたいな空想の代物には……」

「空想じゃないのよ、それが。もしそうなら、躍起になって魔法使いがそれを探したりしない」

「それが何であるかははっきりしていないんだろう?」

「一つだけ言えることがあるよ。……それを手に入れれば、今までの魔法の歴史が大きく覆ることになるだろうね。何せ、アレイスターが日本に来た記録は残ってるんだから」

「……だったら、その記録から導き出すことは出来ないのか? 何処にあるか、とか」

「あのねえ……。何度も言うかもしれないけれど、君が考えてるようなことは、もう他の魔法使いが何度も何度も何度も何度も思案して思考して試行してる訳。だから言わせてもらうけれど……私達が手に入れられるような代物ではないことは確か。その組織に何処まで追いつけるかは別として、もし追いつくことが出来るのなら、もしかしたらその一欠片だけでも見られることが出来るかもしれないね」

「もし見られるとしたら?」

「そりゃあ、机上の空論だね。見られる訳がない。見られるはずがない。でも、可能性があるとするならば……少しは足掻いてみたいかな」

「足掻いたところで何か起きるの?」

「……クレアって、冷酷なことを平気で言えるよね……」

「?」


 当の本人は全く気づいていないようだけれど。


「まあ、良いや。取り敢えずこれからのことについて簡単に話そうか。……どうやって事件に関わってこうかという話なんだけれど、次の現場にはある程度目星がついてるんだよ」

「目星? いったいどうやって……」

「魔方陣って知ってるかい?」


 最上さんメモ帳とペンを貸してください、と言うクララ。そしてものの数秒でメモ帳とボールペンを差し出す最上さん。予測でもしていたのか?


「先ず、今回の事件は全て名城線と言われる路線の駅で起きてる。そうだね?」


 メモ帳に円を描いて、それから三つの点を追加していく。それはそれぞれ事件の起きた駅なのだろう。


「で、この三つの点って、線を結ぶことが出来るんだよ。ほら、こんな感じに。……そこで一つ、話しておこうか。魔方陣においては、円というのは重要な要素だ。何故なら、力の循環を示すファクターだからね。そして、そこから何が導き出されるか……」


 そうして、さらに線を追加していくクララ。やがて、そこに一つの図形が描き上がった。


「これは……五芒星?」

「どんな魔法や錬金術を使うか分からないけれど、これはどう考えてもどちらかの術式の魔方陣であることは間違いない。……だから、次に狙われるのはこの二つのいずれか。そこにあるのは――」


 そこにあったのは――本山駅と神宮西駅の二つだった。



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