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魔法少女は笑わない  作者: 巫 夏希
第三話 魔法少女同盟結成!
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第三話4  『事件調査、序章』

 御器所という地名って名古屋人以外には相当な難読地名だよな――普通なら『ごきしょ』って読んでしまいそうだし。御器所駅の直上には昭和区役所が存在しており、しかも区役所の営業時間中ならば外に出ることなく、区役所に入ることが出来るようになっている。流石と言えば流石なのだけれど、問題は一部の入口が本当にここで合っているのか? って感じになってしまうんだよな。途中で飲食店があったり、区役所の庁舎内に入口があったり。


「それにしても、この駅はすごい駅だね……。二つの路線が交差してるだけじゃなく、乗換の場所にコンビニまで用意されてるなんて。流石、大都市といったところなのかな?」

「そんなに珍しいことかな……。ああ、でも、魔法都市って鉄道が走っていないのか?」

「流石に馬鹿にし過ぎなの。路面電車ぐらいなら走ってるの。魔法使い全員が全員、省略出来るような魔法を使えるとは限らないの」

「いや、別にそこまで言っていないけれど……。ってか、路面電車はあるのかよ。逆に珍しいな」


 路面電車って、車社会が発達しつつある場所じゃなくなりつつあるって聞いたことがあるけれど。昔は名古屋にも市電ってものがあったらしいけれど、元々名古屋って車社会めいたところがあるから、それで市電の需要がなくなってしまったのか、なくなってしまったらしいんだよな。だから、名古屋近郊で路面電車を乗るとしたら――豊橋まで向かわないといけないんだっけ?


「路面電車みたいな電車ではないらしいの、お姉ちゃん。何でも、さっきも通ったけれど、改札口を通る必要があるの。切符も購入しておかないといけないの」


 あ、そうか。路面電車って支払いは電車内でやるんだもんな。何せ、停留所に改札機も券売機も設置出来ない。まあ、やろうと思えばICカード読み取り機ぐらいは設置出来るんだろうけれど。


「ところで、乗る電車は何でも良いの? あそこのボードには、赤池と豊田市という文字が見えるようだけれど」

「あ……うん。それについてだけれど、平針はどれに乗っても行くことが出来るから、全然問題ないよ。どんな電車がやって来るかな……」


 と、話し込んでいたらアナウンスが聞こえてきた。どうやら赤池行きが先発としてやって来るらしい。目的地には早く行って然るべきだと思うので、取り敢えずそれに乗ることにした。


「うわあ、真っ赤な電車!」


 やって来たのは、真っ赤なカラーリングの電車だった。御器所駅を経由して上小田井駅と赤池駅を結ぶ鶴舞線のカラーリングは青色であるが、その理由はこの路線の両端からそれぞれ名鉄犬山線と名鉄豊田線に相互直通運転をしていて、名鉄電車といえば赤いカラーリングだからそれと区別するためのものらしかった。

 要するに、今やって来た電車は、その乗り入れ先の名鉄の電車って訳。古臭い感じは否めないけれど、たまにはこういうのに乗るのも良いよね。

 電車に乗り込むと、すぐにドアが閉まった。そして自動放送が入り、次の駅へのアナウンスが始まる。取り敢えず座席も空いているようなので、そのまま座席に並んで座ることにした。

 ものの十分ぐらいで目的地の平針駅に到着。いや、正確には中継地というニュアンスが正しいのか? それについてはあまり語るべくして語る話題ではないような気がするのだけれど、しかして、それはそれとして問題ないようなそんな感じがしてならない訳だ。別に目的地の一つでもある訳だし。

 階段を登り外に出ると、そこはもうバスターミナルになっていた。バスターミナル、とはいっても、バス停が二つと屋根がついているだけに過ぎなくて、何か施設がある訳でもない。強いて言うならば、自動販売機と保険屋さんがあるぐらいか。でもまあ、横断歩道を渡ればコンビニもスーパーもあるし、暇潰しには困らないと思う。僕はそれを有効活用するかどうかは別だけれど。


「……しまった。バスは出発したばかりか」


 バス停備え付けの時刻表を見ると、現在時刻から二十分後に出発するらしい。確かに待っている人は誰も居ない。因みにもう一つのバス停は、運転免許試験場に向かうバスが発着する。利用者も多いためか、バスが頻繁にやって来るし、乗り込む人もめちゃくちゃ多そうだ。しかし、二十分か。それぐらいの時間だと潰すのもなかなか難しいし、はてさてどうすれば良いものか――。


「じゃあ、あそこでドーナツでも食べない?」


 クララが指さしたのは、駅前にあるドーナツ店だった。それ程混んでいるようにも見受けられない。確かに二十分もあればドーナツ数個とジュースでも飲んでいれば時間を潰せるかもしれない。けれど、クララさんよ、それで良いのか。あなたさっき最上さんの喫茶店でモーニング食べてきたばかりですよね?


「ドーナツはスイーツだから別腹なのだよ、少年。それぐらい分かってるようなものだと思ったけれどね? それにしても、あのドーナツ美味しそうだとは思わないかね。魔法都市にはチェーン店もあまりないから、全てが珍しく見えてくる。流石大都市といったところかもしれないけれど、それはそれでありかもしれないね。大都市のメリットというところかもしれない。特に大都市って自分で交通手段を持ってなくても全然問題ないんでしょう? だからこそ、こんなにバスも電車も色々張り巡らされてる訳だし。魔法都市もこれぐらい交通網が発達してたら……、あ、でも、そうしたら、魔法使いが魔法を使わなくなっちゃって、それはそれで困っちゃうかも。魔法使いが魔法を使わなくなるって、それはそれで大問題な訳だし。でも、それって、人間が人間らしい行動をしなくなるのと同義なのかな? でもまあ、やっぱり必要なことはなくなっていく訳がないはずだし、それについてあまり気にするポイントでもないのかも」


 クララはそこまで言ったところで踵を返し、さらに話す。どれだけ話したいんだ。


「ところで、おすすめのドーナツはあるかい?」

「……取り敢えず、ドーナツはお店に入ってから決めましょうよ。長々と話し込んでも何も決まりませんよ。寧ろ、ドーナツを食べる時間がなくなってしまう。そうしたら、僕たちはただ自動販売機でジュースを購入することしか出来なくなる。それは嫌でしょう?」

「それもそうね。やっぱり事件の確認に挑む前に少し休憩したいところもある訳だし……。何しろ、私も慣れない交通手段を使ったからか、少し疲れちゃった。ねえねえ、シロノワールはあのドーナツ店で食べられる?」

「……シロノワールはコメダでしか食べられないですよ。事件の調査が終わったら、食べに行きますか」


 少しだけ目を輝かせて、それは嬉しいわね、とだけ言って、クララはドーナツ店へと向かっていった。……それにしても、どれだけ食べれば気が済むんだろうか。結構細身な身体に見えるのだけれど、人は見かけによらないって言うしな。


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