感電と伝線
指先が触れた刹那、脊髄反射よりも速く皮膚を駆け抜ける電流におののいた。その正体がわかったとき、毎度おなじみの罪悪感に苛まれる。子供の頃から静電気にはめっぽう弱いが、どうも電気をからだに吸い寄せやすい体質みたいだ。
こんな痺れる冬はもう何十年も過ごしているのに、未だに馴染めずにいる。
「やだ、また静電気。申し訳ない、電気ねずみとでも呼んでおくれ」
「気にすんな、冬の風物詩じゃん。というか電気ねずみって可愛いな、チュウって言ってみ、チュウ」
冗談半分な台詞もいちいち丁寧に拾い上げる彼は、チュウってなんやねん、と言いかけた私のすぼめかけた唇をぱくり呑み込んでしまう。
ねずみというより最早、つがいの鳥のような恰好でついばみを受けたまま、私は考える。
この、痛いほど私を苦しめる電流が、一度は諦めかけた届かぬ彼を結び寄せた。
想いのたけと同等にため込まれた電気が、彼に伝わるのならば、電気ねずみなこの体質も悪くは無いのではないか。
世界は限りなく優しい。