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異世界転生傍観記
プロローグだけの作品となります。
ある日、世界中に1つの朗報が発信された。
けれど、その朗報が地球を滅ぼすことになるとは、まだ誰も知らなかった。
『異世界転生は本当にあったんだ!』
人通りの多い繁華街の上空から、突如声が響き渡った。
道行く人が空を見上げるとそこには、スクリーンに写し出されたような巨大な映像が浮かび上がっている。
『記憶は引き継げるし、チート能力ももらえるし、こっちの世界は最高だぜ!』
ごく庶民的な服装を着た日本人男性が、空から地上に向けて話しかけてくる。この非科学的な現状が、転生チートの存在を証明していた。
『まだまだ人が欲しいっていうからさ、皆もこっちに来いよ! とりあえず死にさえすれば、後は自動的に異世界まで連れて行ってくれるぜ!』
その言葉を最後に、映像は霧散した。
衝撃的な事件をきっかけに、世界中では様々な議論が行われた。
不確かに過ぎる、誰かのイタズラだ、簡単に信じてはいけない、などの、多くの意見が飛び交う。
けれど最終的には、上空から映像と音声を飛ばすのは現代科学では不可能、と判断が下された。
その発信があった後日、世界は少しずつ動き始める。
現状の生活に不満を抱いている者が、次々と自殺を決行していった。死んで元々、あの報せが本物ならラッキー。その程度の心持ちで、人々は身を滅ぼしていく。
そして運命の日……。
『みんなー! 私もちゃんと異世界に来れたわよー! 見覚えのある人も一緒に来てるし、やっぱり異世界転生は本当だったのよ!』
多額の借金を背負って自殺したとあるアイドルが、先日の放送と同様に空から映像を発信してきた。
死んだはずと見知っている人からの放送により、その日を以て転生チートは証明された。
それにより、生活に不満を抱いている者のみならず夢を叶えたい者まで、実に多くの人が自殺へと踏み切った。数えることすら困難なほど、連日多くの死者が発見される。
けれど数日もしない内に、1つの問題が浮上してきた。
それは、労働者の不足、である。
つらい思いをしながら働いて生きるよりも、異世界に転生してチート能力で活躍するほうが良いと考える者はたくさんいた。
その結果、地球からは多くの労働者が消え去った。当然、生活に必要なあらゆるものが手に入らなくなる。
それにより地球での暮らしはますます厳しいものになり、人類のほとんどが自殺した。
今や、地球に残されている人類は数えることもできない。けれど両手で数えたとしても余裕で足りるだろう。
「……俺は、どうしてまだ自殺してないんだろうな」
文明の滅びた世界にポツンと立ち尽くす俺は、荒れ果てた町並みを俯瞰してポツリと呟いた。
ーーこれは終わった世界で何かを求めて生き続ける、1人の少年の物語ーー
本編は、後日創作意欲が湧いたら執筆します。