私、過疎を救う8
「歩いて6時間!?」
「大丈夫ですよ。路面バスは片道1時間で村までたどり着けますから。」
「そうなんですか。それは良かった。ふう~。」
今日はネットショッピングの商品を山深村に届けてもらうための実証実験が行われる。協力は、白猫大和の宅配屋さんである。私と白猫大和の部長さんは麓の電車の駅前のバスターミナルにいる。
「うわわわわー!?」
案の定、山深村までの道のりが初めての宅配のドライバーさんたちは、ガタガタの山道に右往左往していた。
「誰だ!? バスは1時間で運転しているなんて言った奴は!?」
「じ、地獄だ!? 地獄に続く道だ!? きっと車は侵入してはいけない未知の世界に迷い込んでしまったんだ!?」
道だけに、未知の世界。それが日本最後の秘境、山深村である。
「ぱ、パンクしてる!?」
「おいおい!? ここはパリダカか!?」
「宅配ドライバーを30年やっているが、こんな山道は初めてだ!?」
恐るべし、山深村へ続く道。都会人と自動車という文明の侵入を妨げる。ドライバーさんたちは、車から降りて途方に暮れる。
「ガサガサ。」
「なんだ!? 何かいるのか?」
「ギャアアアー! 殺される!? 逃げろー!」
草村から何かが飛び出してきた。怖くなった宅配ドライバーたちは車を捨てて、山を下山することにした。
「さ、さ、山賊だ!? 山賊が出たんだ!?」
「木の棒とかを持って、俺たちに襲い掛かって来たんだ!?」
「バカバカしい。いくらなんでも山賊などいるものか。少し山深村をバカにしすぎじゃないですか?」
「申し訳ありません。村長さん。」
流石の私も愛する山深村のことをバカにされて、気分を悪くしない訳はない。私ですら山賊など見たことが無いのに。
「本当だー!? 俺たちは見たんだ!? あの山には山賊がいるんだ!?」
「嘘じゃねえ!? 本当に殺されるところだったんだ!? 信じて下さい!?」
「どうしましょう? 村にはホテルが無いので、今日のところは私は17時のバスで村に帰りますので、明日、駅から村行きのバスで1度、村までのコースを確認しに来てください。そして、お昼から宅配ドライバーさんたちに、もう一度、挑戦してもらいましょう。」
「分かりました。直ぐにJAFを呼んで、トラックの回収だ!」
「は、はい。」
ということで、本日の宅配実験は終わった。
「バカバカしい。山賊など私でも出会ったことが無いのに。」
私は山深村行きの帰りのバスに乗った。
「この山には狸や狐たち動物しかいないのに・・・んん!? まさか!? あいつらがトラックを!? いや、あいつらがそんな酷いことをする訳がない。」
そう村長の私の読みは正しかった。昼間、見慣れないトラックを襲ったのは、山の動物たちだった。
「やはり、山深村に宅配トラックは無理だな。美しい山並みを守らなければ。先住民の動物たちを追い出す訳にもいかない。明日、宅配屋さんに言おう。」
村長と山の動物たちは秘密の温泉仲間で大の仲良しだった。
「ドローンで宅配してください。幸い、我が山深村には、国が整備したヘリポートもありますから。」
「わ、わ、分かりました。うちもドローン空輸の宣伝になりますからね。」
白猫大和の宅配屋さんは、路面バスの激しい山道のオフロードコースに、酔って気持ち悪くなっていたので、簡単にドローンによる空輸を了承してくれた。
「う~ん。最先端!」
新しい村長が、少しづつ超限界集落の歴史から消えようとしていた村を変えていく。
つづく。




