私、過疎を救う6
「ネットがキター!」
遂に村にネット用のアンテナができた。これで山深村でもスマホが使えるようになった。村の公共施設以外のエリアが圏外で無くなったのは、この瞬間が初めてである。
「やったー! これで山深村でも、ネットショッピングができるわ!」
私は村人の生活が向上すると信じていた。私は村人のために、良い事をしたのだと信じていた。
「まずは銀座のアンパンにアンパンを注文してみよう。ポチットな。」
私はネット注文をした。普通に注文ができた。
「これはどうするんだい!? 教えてけろ!?」
「押さないで!? 押さないで!? 村長!? 助けて下さい!?」
村役場には、インターネットなど触ったことの無いお年寄りが殺到して、役場の仕事を停滞させた。
「ここを押せばいいのかい? ポチット。」
「ダメ!? それはオレオレ詐欺にお金を送金しちゃう!?」
「マジか!? ここまでインターネットを使うことができないなんて!?」
私は日本人は全員インターネットくらいは使えるものだと思っていた。しかし、山深村では、おじいちゃんとおばあちゃんを中心に、人口の90パーセント以上がインターネットを使うのが初体験であった。
「あ、メールが来てる。」
私はメールを開いた。
「山深村は宅配エリア外なので、アンパンを配達することができません!? マジか!?」
日本、最後の秘境、山深村。今までネット注文もされたことが無い村が、そもそも宅配エリアになっているはずがなかった。
「ネットスーパーも!? ピザのデリバリーも!? どれも宅配エリア外!? ふざけるな!?」
インターネットがつながっても、宅配屋さんがやって来ないのであれば、インターネット接続に意味はない。
「祟りだ!? 山深村の祟りだ!?」
「マジか!?」
「悪霊退散! 清めたまえ! 払いたまえ!」
村では怪奇現象が起きていた。恐らくインターネットの電波の影響らしく、今までネットの電磁波を受けたことの無い人々の体調が悪化して寝込む人が現れた。
「やめた! インターネットの接続を諦めよう! インターネットの利用は、村役場の開いている、午前9時から17時までにしよう。これなら、早朝や深夜に騒ぎになることはあるまい。」
こうして山深村の整えたインターネット環境は、使用時間に制限が設けられた。
「田舎、超ヤバイー!」
「敵襲だ! アメリカ軍が攻めてきたぞー!」
「殺されるぞ! 女子供を逃がせ!」
「逃げろ! 山へ逃げるんじゃ!」
「あれはドクターヘリですよ!? 役場のおじいちゃんが倒れたので、都会の大きな病院まで運ぶんですよ!?」
この村は、戦時中かよ!?
「ひ、人さらいだ!?」
「そういえば、最近、地面にHの文字が書かれていた!? あれはミステリーサークルで宇宙人がいたんだ!?」
「宇宙船に乗せられて、改造されるんじゃ!?」
「助けろ! みんなで役場のおじいちゃんを助けるんだ!」
「おお! じいさんを連れて行くな!」
「ゲボゲボッ。」
「邪魔しないで!? 早くヘリコプターに乗せて病院に連れて行かないと、おじいちゃんが死んじゃうでしょ!?」
インターネットどころか、ヘリコプターも知らない純粋な山深村の人々であった。
つづく。




