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妄想中  作者: 渋谷奏
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キング・オブ・スポーツ10

「スタート!」

 私は3種目の1位の総合1位として、1番にスタートした。まずはレーザーピストルで的を射抜く。

「ばん、ばん、ばん、ばん、ばん。」

 私は得意の射撃であっという間に的を5回ヒットさせた。

「はあ、はあ、はあ。」

 次は800メートルの短距離走。私は全速力で走り抜ける。楽勝とは思っていても、近代五種の大会に初めて出場した私は、完全優勝のプレッシャーに押しつぶされそうになる。

「ばん、ばん、ばん、ばん、ばん。」

 2度目のガンを無事に終える。今の私を支えているのは、若さだけである。若いから何も深く考えずに前に進むことができている。

「はあ、はあ、はあ。」

 これが私の青春だ。自ら選んだ近代五種という、マイナー・スポーツ。友達もなく、仲間で助け合うこと、絆や友情を深めていくことも無い。それでも青春なんだ。

「ばん、ばん、ばん、ばん、ばん。」

 ラン&ガン3週目。本当に孤独だ。そして過酷。体がギシギシと疲れている。なによりもプレッシャーで的を狙う手が震える。

「はあ、はあ、はあ。」

 それでも私には夢がある。近代五種の日本代表になって、2020年東京オリンピックに出場するのだ。例え誰にも分かってもらえなかったとしても、私は前に進むしかないのだ。

「ばん、ばん、ばん、ばん、ばん。」

 4回目のガンを終えた。私は20回の射撃を終えた。見事に全弾命中である。あとはこれで、ゴールまで走り切るだけ。

「はあ、はあ、はあ。」

 4回目の800メートルの短距離走を走る。見えた。目の前にゴールがある。後ろを振り返っても、追ってはいない。私の独走である。ここで初めて私は優勝を確信した。

「ゴール! 無知萌々選手! 近代五種を完全制覇です!」

「おお!」

 アナウンスに会場のお客さんが歓声をあげる。

「やったー! 優勝だ!」

 私は初めて出場した近代五種の大会で優勝した。この優勝は、私の夢への一歩である。そして優勝インタビューをうける。

「無知萌々、この優勝を誰に伝えたいですか?」

「生んで育ててくれたお父さんとお母さんに伝えたいです。」

「無知選手、2020東京オリンピックに出る気はあるのですか?」

「はい。そのために近代五種を始めました。長く孤独な一人旅ですが、東京オリンピックで金メダルを取ります。」

「おお! 特ダネだ! 近代五種の東京オリンピックの金メダル候補の誕生だ!」

「大袈裟ですよ。あっはっはっは。」

 褒められ過ぎて、照れ笑いで誤魔化す私。

「青春に友達なんか要らない!」

 私はテレビ出演や雑誌の取材がたくさんやってきた。練習費、遠征費用、ユニフォームなどのスポンサーがたくさんついた。日本近代五種協会からも、日本代表の強化選手に選ばれ、金銭的援助を受けれることになった。

「近代五種は貧乏人でも、やっていけるのよ。」

 私の青春は、始まったばかりだ。頑張らなくっちゃ。

 おわり。

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