キング・オブ・スポーツ9
「水泳と乗馬を終えて、総合1位か。悪くない。」
私は調子に乗り始めていた。それは仕方がないことだった。水泳1位。乗馬1位。この時点で最後のラン&ガンで2位の選手と5分以上の差が着いているとしよう。余裕過ぎて笑いを抑えるのが必死だった。
「一般大衆が私のフンフンフンフン、フェンシングを見たら腰を抜かすぞ。ワッハッハー!」
16才の小娘が自信過剰に調子に乗る。若さ故の過ちである。しかし、私は愚かではない。きっと2、3社ぐらいしか来ていない新聞社やテレビ局のマスコミに、二種目で一位を獲得した私はマークされているはず。言動と行動は気をつけなければいきない。一つのミスが私の近代五種人生を左右することを私は知っている。
「あの、すいません。近代五種新聞の者ですが、取材させてもらってもいいですか?」
「はい。どうぞ。」
キターーーーーー! 私の予想は的中する。近代五種の業界新聞から取材がきた。近代五種の新聞だけに、私はきっと大きく取り上げられるはずだ。
「まずお名前をお伺いしてもいいですか?」
「無知萌々です。」
「近代五種は、いつから始めたんですか?」
「3日前です。」
「3日前!?」
「はい。3日前です。」
「3日前で2種目制覇ですか!? スゴイですね。」
「みなさまの応援のおかげです。」
決まった。これで私の好感度はグーンっと上がり、新聞の一面を飾ることは間違いない。本当は自分の天性のセンスと、努力のおかげである。それと馬だけど、カバ男くんのおかげである。
「次の競技、フェンシングは自信がありますか?」
「やってみないと分かりませんが、精一杯、女子高生らしくがんばります。応援をよろしくお願いします。」
「なんて可憐な乙女だ! 無知萌々、きっと人気が出ますよ。がんばってください。」
「はい。ありがとうございます。」
これが100点満点、いや、120点満点の受け答えである。私はフェンシングのスーツを着て、仮面を被る。そして1試合1分の30人総当たり戦を行う。
「フンフンフンフン!」
ざっと私の勝率は、フェンシング選手並みの100パーセント。怖い。自分が怖い。雨あられのような、私のフンフン突きが対戦相手を圧倒する。心の中で思った。私に敵う者はいないじゃないかと。
「フェンシング。種目一位は、無知萌々さんです。」
「ありがとうございます。」
私は周りの応援に丁寧にお礼を言いながら頭を下げる。これで次のラン&ガンは1位スタートの2位と約10分の差があるとしよう。もう私の勝利は決まったようなものである。
「サインの練習しなくっちゃ。」
私の人生に輝かしい道が見えてきた。
つづく。




