キング・オブ・スポーツ8
「ゲッ!? 駄馬かよ!?」
近代五種の馬は貸し出されるので、自分で好きな馬を選べるわけではない。敢えて言おう、良い馬が当たるか当たらないかは運次第である。実力だけではない、運も良くなければ、近代五種で優勝することは難しい。
「まあ、いいや。馬術でダメでも、水泳で1位だった分で帳消しにできるだろう。よろしくね、お馬さん。」
「ヒヒーン!」
「よし、おまえの名前は、馬だけど、カバ男くんだ。頑張ろうな、カバ男くん。」
「ヒヒーン!」
馬に好かれる方法は、馬と友達になることだ。ということで、お馬さんに名前をつけて仲良くなろうとする。どんなにペガサスやユニコーンのような良馬でも、選手と折り合いがつかなければ、能力を発揮することができない。
「私の順番は一番最後か。ニンジンでも食べて待っててね。」
これが本当のニンジン作戦。食べ物につられたカバ男くんは、完全に私に服従する。おばあちゃんが言っていた。胃袋を制する者は、結婚できると。おばあちゃんの言葉は正しかった。
「続いての選手は、無知萌々さんです。」
「いくぞ! カバ男くん!」
「ヒヒーン!」
私は馬だけど、カバ男くんの頭を撫でてあげる。正直な話、馬に一度乗ったことがあるだけで、乗馬教室を出禁になった私に、ダブルやトリプルのある障害物を飛び超えることができるだろうか。
「私に飛ぶことができるのだろうか!?」
「ヒヒーン!」
「なになに? 俺が全部飛んでやるから、カワイイ萌々は背中に乗っているだけでいいよ。」
「ブブーン!」
「なになに? カワイイは言ってない。もう、カバ男くん。細かすぎると女性にモテないぞ。」
私の緊張はカバ男くんに伝わっていたようだ。それを見かねたカバ男くんが私に優しい言葉をかけてくれる。これも私のニンジン作戦のおかげである。
「いざ出陣! いくぞ! カバ男くん!」
「ヒヒーン!」
私の乗馬が始まった。本当に私はカバ男くんの背中に乗っているだけだった。
「ヒヒーン! ヒヒーン!」
カバ男くんがきれいにジャンプして、次々と障害物を飛び超えてくれる。
「気持ちいい! まるで遊園地のアトラクションみたい!」
馬の背中に乗っていると、まるで空を飛んでいるかのような気持ちになる。いつもの視界と違う景色は壮観であった。
「ゴール! ありがとう。カバ男くん。」
「ヒヒーン!」
そして私の乗馬の順位は、1位。
「やったよ! カバ男くん! 1位だ!」
「ヒヒーン!」
「もしかしたら、もしかするけど、私は優勝するんじゃないだろうか!?」
私の初めての近代五種は順調すぎるほど順調だった。
つづく。




